
「やりたい仕事が見つからない」「好きなことを仕事にしたいけど、好きなことがわからない」。そんな悩める就活生に向けて、自分の「好き」を見つける“スキサガシ”を応援するインタビュー企画!今回登場するのは、コンテンツクリエイター・文筆家の藤原麻里菜さんです。「オンライン飲み会緊急脱出マシーン」や「インスタ映えを台無しにするマシーン」など、頭の中に浮かんだ“役に立たないけれど面白いもの”を実際に作り、「無駄づくり」としてYouTubeやSNSを中心に発表している藤原さん。唯一無二の表現を生み出し続ける藤原さん流、「好き」の見つけ方に迫ります。
藤原麻里菜の履歴書

上手じゃなくても「やりたい」を続けてきた

――藤原さんは、2013年にYouTubeチャンネル「無駄づくり」を開設されて以降、現在までに200点以上の作品を制作されてきました。ここまで「無駄づくり」を続けられたのはなぜでしょうか?
藤原:始めた頃は、「かっこいいと思われたい」「面白いと思われたい」という気持ちがありました。今振り返ると、かなり外発的な動機だったと思います。でも、10年以上続けてこられたのは、やっぱり作ること自体が好きだったからだと思います。単純に、作っている時間そのものが楽しかったんですよね。
——学生の頃から、ものづくりがお好きでしたか?
藤原:小学生の頃からものづくりが好きで、高校も美術の授業をたくさん取れる単位制の学校を選びました。もともとは、美術修復家になりたかったんですよ。中学生の時に『冷静と情熱のあいだ』という映画を観て、「絵画を修復する仕事っていいな」と思って。ただ、高校でデッサンの授業を受けたら、全然向いていなくて……。結局、その夢は諦めました。
——単位制の高校とのことで、好きなことを学びやすい環境だったのでは?
藤原:そうはいっても、勉強は苦手でした。その代わり、本や音楽など、趣味にはどっぷり浸かっていましたね。部活はジャズ部に所属していたんですが、その部が本当にゆるくて。「うまくなりたい」とか「大会に出たい」という向上心もなくて、毎日なんとなく集まって、「じゃあ今日はこの曲やりますか」みたいな感じで音を出す。本当に聴いていられないくらい下手だったんですけど、でも、その時間がすごく楽しかったんです。

——評価されない自由さのようなものに、心地よさを感じていたのでしょうか。
藤原:そうですね。昔からSAKEROCK(サケロック)というバンド(2015年に解散)が好きなんですが、高校生の時に読んだ雑誌のインタビューで、メンバーの星野源さんが「俺たちは下手だから」って話していたのが印象に残っているんです。私は音楽の巧拙については、正直よくわかりません。でも、ライブに行くとすごく楽しかったし、思春期で心が荒んでいる時に、SAKEROCKの曲を聴いてかなり救われていました。
自分もギターが下手だし、ちゃんと練習しているわけでもない。「私なんかが“やりたい”って言っちゃダメなのかな」っていう感覚が、ずっとありました。でも、SAKEROCKは「俺たちは下手だから」って言いながらステージに立って、アルバムを出して、人を夢中にさせる曲を作っていた。その姿を見て、「別に完璧じゃなくてもやっていいんだ」って思えたんですよね。
——当時は、どのような将来像を思い描いていましたか?
藤原:鮮明に覚えている出来事があって。高校1年生の時に「将来の夢を語りましょう」という授業があったんです。班に分かれて、それぞれ将来について話すワークショップでした。その時、いちばん仲が良かった友だちに「麻里菜は将来、絶対かっこいい仕事に就いてるよね」って言われたんですよ。「え、かっこいい仕事って何?」って聞いたら、「わからないけど、なんかかっこいい仕事してそう!」って。
その言葉を聞いた時に「私は将来、かっこいい仕事に就くんだな」って、なぜか自信が湧いてきたんです。ちなみに今、その友だちはアーティストになって、すごくかっこいい仕事をしています(笑)。
「自分らしさ」は、無理に作らなくていい

——美術や音楽に親しみながら、アーティストやミュージシャンではなく、芸人を目指したのはなぜだったのでしょうか?
藤原:高校時代、周りの友だちは保育士など福祉系を目指している子が多かったんです。高1の頃から専門的な授業を取って、資格の勉強をして、福祉系の大学や専門学校への進学を見据えて動いていた。そのことを、私は高3になって初めて知って、焦ったんですよ。いつも一緒にカフェでおしゃべりしていたのに、みんな私の知らないところでちゃんと将来のことを考えていたんだ、って。
ちょうど同じ時期に、母から「卒業後はどうするの?」って聞かれて。どうしようかなと思って、その場のノリで「お笑いが好きだし、よしもとに行くわ」って言ったんです。そうしたら母が「うちの家族から芸能人が出る!」って、すごく盛り上がっちゃって(笑)。
しかも、その話を近所のおばさんたちにもしたみたいで、「麻里菜ちゃん昔から面白かったもんね」って、みんなからも背中を押されてしまったんです。そうなると、もう「やっぱりやめる」とは言いにくい。大学に行ったり、就職をしたりするのもピンとこなかったので、とりあえずNSC(吉本総合芸能学院)に行くことを決めました。当時のNSCの入学金は、1年間で約40万円。たい焼き屋でアルバイトをして、お金を貯めて、18歳の時に入学しました。
——2013年に東京NSCを卒業後、ピン芸人として、よしもとクリエイティブ・エージェンシー(現・吉本興業株式会社)に所属されました。「無駄づくり」はどのように始まったのでしょうか?
藤原:よしもとに所属後、しばらくして、YouTubeチャンネルを開設するためのオーディションが開催されたんです。当初、私は「ピタゴラスイッチを作ります」と宣言したんですが、うまく作れなくて。その失敗作を「無駄づくり」という企画に変えて動画を送ったら、「これでいいですよ。面白い」って言ってもらえたんです。
——そこから、「無駄づくり」発明家として注目されていったのですね。制作する際、「自分らしさ」を意識している部分はありますか?
藤原:「自分らしさ」を意識したことはないですね。むしろ「らしさ」や「こうすべき」に縛られるのは苦手です。そういうものに捉われたくないから、「無駄づくり」をしているんだと思います。
私は、自分が思いついたものを、自分の手で作ること自体に価値があると思っています。だから「これは作らない」とか、「こういうものを作るべき」とか、あまり考えないようにしています。
作れなくなった時に、初めて気づいたこと

——失敗や挫折することがあった時、それをどのように乗り越えてきましたか?
藤原:7月に出版予定の『つくるリハビリ』という本を書く中で、ずっと考えていたことがあります。「無駄づくり」を始めた当初は、仕事にしようとは微塵も思っていなくて。「何かにつながればいいな」くらいの気持ちでした。
それが次第に仕事になり、お金になっていったんですが、28歳の時にパニック障害にかかってしまって……。仕事のプレッシャーや多忙さが重なり、抑うつ状態で病院に通わなくてはならなくなりました。何よりつらかったのは、ものづくりが一切できなくなったことです。頭が働かず、面白いことも思いつかない。でも、当時は「作ること」こそが自分のアイデンティティだと思い込んでいたので、作れない自分には価値がない気がして、必死にもがいていました。
その時に、「好きなことを仕事にする」ことについて考え直したんです。本来、「好き」という感情は自分の内側にだけある、いわば「内在的な価値」ですよね。でもそれを仕事として外に出すと、お金や評価といった「外在的な価値」と結びついていきます。そのサイクルの中で、いつの間にか私の「好き」の主導権が、外側に移ってしまっていたんですね。
「無駄づくり」をしないと誰にも評価してもらえない気がして、「だから作らなきゃ」って。そうなっていくと、やっぱりすごく苦しくなるんですよ。たとえ好きなことを仕事にするとしても、外在的な価値と「好き」の間に、“自分自身”がちゃんといなきゃいけないんだと思いました。

——他者の評価に自分を明け渡さないための、境界線ですね。そこからどう立て直していったのでしょうか。
藤原:「気持ちいいな」「これ面白いな」っていう、自分の感覚をとにかく信じてみることにしました。例えば、はんだ付けをする瞬間の「じわっと溶ける感じが気持ちいい」とか。そうやって、作業そのものを楽しむことに意識を戻していったんです。
お金とか評価って、その先にあるものなんですよね。手に入るかもしれないし、入らないかもしれない。それよりも、まずは自分の中にある心地よさを満たしていくことのほうが大事なんだ、って。そういうふうに少しずつ考え方を変えていったら、以前より楽に生きられるようになりました。
自分の“好き”を見失わないために

——読者である就活生の中には、「好きなことがない」「好きなものが仕事につながるイメージが持てない」と悩んでいる人も多いと思います。自分の「好き」を見つけるために、必要なことは何だと思いますか?
藤原:まずは、自分の内側にあるものを素直に言語化することだと思います。「この企業に入りたい」という目標が先にあると、どうしても相手に合わせて自分を歪めてしまいますよね。でも、それをやりすぎると、自分が本当は何を考えているのかが見えなくなってしまう。だからこそ、まずは自分がどう感じているのか、嘘のない言葉で書き出してみることが大事なんだと思います。
もちろん、自分の本音を言葉にするのは難しいし、苦手な人も多いはず。だからこそ「言葉」というツールと向き合う価値があると思っています。まずは、自分の「好き」や「得意」を自分なりに整理してみる。その次に「どう伝えたら、相手に面白く届くんだろう?」と変換していく。この「変換」の部分は、後天的に磨けるスキルだと思うんです。
文章術の本を1冊読むだけでも、「こうつなげると伝わりやすい」といった基礎が学べます。そうした型を知った上で、「自分のことを、どうしたらもっと面白く話せるだろう?」と実験を繰り返していくと、自然と伝える力も育っていく気がします。
——最後に、頑張っている就活生に対してエールをお願いします!
藤原:就活は、これまでの歩みや自分自身をジャッジされる場でもあるので、つらくなるのは当然だと思います。でも、そこで下された評価が、自分のすべてではないんですよね。自分にしかわからない感覚は、完全には言語化できないものですし、誰にも侵されない聖域のようなものです。そこだけは、自分自身で守って、大事にしてほしいなと思います。
とはいえ、1日中就活のことで頭がいっぱいになって、疲れきってしまうこともあると思います。そんな時は、1日のうち10分でも15分でもいいので、「自分の中だけで完結する心地よさ」や「純粋に面白いと思えること」を確かめる時間を作ってみてください。そうした自分だけの感覚を“お守り”のように持ちながら、「自分はどんな仕事がしたいんだろう」って、向き合っていくのがいいのではないでしょうか。
今回、読者プレゼントとして「ポエムキーボード」を作りました。このキーボードには「あなたは機械じゃないけど、ショートカットを持っている。あなたを傷つけた言葉を Ctrl+A と Delete で消して、あなたが学んだことを Ctrl+C でコピーしましょう」というポエムが刻まれています。もし就活で心が折れそうになったら、ちょっと遊ぶ感覚でこれを使って、自分を労わってあげてください。


「無駄づくり」という独自の表現を10年以上続け、唯一無二のキャリアを切り拓いてきた藤原さん。その歩みを支えていたのは、自分の内側にある「好き」や「心地よさ」を信じ抜く、しなやかな強さでした。就活中は、周囲と比べて焦ったり、「自分には何もない」と感じてしまったりすることもあると思います。そんな時こそ、評価や正解探しから少し距離を置いて、「心地いい」と思える時間に目を向けてみてはいかがでしょうか。自分の物差しを取り戻すことが、きっと、納得のいく道を選ぶための助けになるはずです。
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(企画:株式会社十三夜 / 編集:剛家朋子 / 取材・執筆:東谷好依 / 写真撮影:池ノ谷侑花)
