就職活動を始めるにあたって、「就活の軸」という言葉を耳にしたことはありませんか? 就活の軸は、就職活動に臨むうえの基準となるものです。
その一方、「就活の軸を決めるのに悩んだ」という声も多く聞かれます。就活生やOB・OGたちは、就活の軸の必要性についてどのように考え、そして決めていったのでしょうか? アンケート調査の結果から、リアルな例文などをもとに紹介していきます。。
就活の軸とは、企業や仕事を選ぶうえでの物差しとして機能する「自分の基準」のことです。
世の中には無数の業種や規模の企業があり、企業理念や社風、給与水準なども異なり、職種も多岐にわたります。就職活動でエントリーする企業や志望する業界を選ぶ際に、自分が絶対に譲れない条件の指針になるものが、就活の軸となります。
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就活を始めるにあたって、自身の中での基準となるものがなければ、数多くの企業や仕事から就職先を選ぶことは難しくなり、効率的ではありません。
就活の軸が必要となる具体的な理由として、次の3点が挙げられます。
- 自己分析や志望動機作成の指針となる
- 仕事や企業選択におけるミスマッチを防止できる
- 面接対策になる
就活の軸が決まっていれば、自己分析や志望動機の作成における指針となるものが確立され、スムーズに進められるようになります。また、エントリーシートや履歴書などの志望動機にも一貫性を持たせやすくなります。
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- どんな仕事に就きたいのか
- どんな企業で働きたいのか
このような企業や仕事を選ぶうえでの基準が明確になっていると、エントリーする企業を選びやすく、入社後のミスマッチも防げます。
たとえば「海外で活躍したい」「語学力を活かしたい」といった就活の軸を持っている人は、海外拠点を設けている企業、もしくは海外との取引が活発な企業などが譲れない条件となるでしょう。
就活の軸、あるいは企業を選ぶ軸は、面接でも聞かれることがたびたびあります。企業側にとって、就活の軸は自社への志望度を推し量る材料のひとつになるためです。
たとえば、海外に支店などがなく、海外出張の頻度も高くない企業の場合は、「海外で活躍できる企業」を軸としている就活生では、自社への志望度は低いと捉えられかねません。反対に就活の軸と実際に志望する企業がマッチしていると、志望度の高さをアピールしやすくなります。
では、実際に就職の軸はどのように決めていけばよいのでしょうか? 就職の軸の考え方や、面接での答え方について考察していきます。
就職の軸を決めるときには、次の3つの観点に着目すると、方向性をまとめやすくなります。
- 自分が興味や関心を抱いている分野は?
- 自分の能力を発揮できるような業種や業界は?
- 自分が仕事に求めたいモチベーションは?
まず1つ目は、興味や関心を強く持っている分野であることです。まったく興味のない分野の仕事に対して、高いモチベーションを維持することは簡単ではありません。早期の離職にもつながりかねないでしょう。
2つ目は能力を発揮できるような業種・業界であること。これは上述の1つ目とも関連しますが、自分の能力を活かせる仕事の方が意欲的に取り組めます。
3つ目の仕事に求めたいモチベーションとは、仕事に対する価値観とも相関するものです。
こうした3つの軸をもとに、下記のような仕事に対する軸を考えていきましょう。
- 金融業界で大きなお金を動かしたい
- モノづくりの達成感を感じたい
- 新製品を世に送り出したい
- 語学力を活かしたい
- 機械工学の知識を役立てたい
- 個人の頑張りが収入に反映される仕事がしたい
- お客様に喜ばれる仕事がしたい
- 社会に役立っていることを実感したい
面接での就活の軸の答え方は、「企業がそれをなぜ知りたいのか」を考えてみればわかります。
就活の軸は、業界や企業を選んだ志望動機と密接に関連するものです。なぜその企業を選び、どんなことを実現したいのか、志望動機と一貫性のある内容としましょう。
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実際に就活生は「就活の軸」をどのように考えているのでしょうか? 就活生、新卒3年目までの元就活生を対象に実施したアンケート調査から、リアルな声をまとめました。
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2022年10月に就活生と新卒3年目までの元就活生150名を対象に、就活の軸に関するアンケート調査を実施しました。
- 調査対象:就活生、新卒3年目までの元就活生
- 調査人数:150人
- 調査期間:2022年10月
- ある:40.0%
- すぐに決められた:47.3%
- 就活の軸について考えなかった:12.7%
就活の軸がなかなか決まらずに悩んだ経験が「ある」と回答したのは、全体の40%にのぼります。半数には満たないものの、相当な割合の就活生が就活の軸に対する悩みを抱えていることが浮き彫りになりました。「就職の軸をすぐに決められた」という回答は47.3%であり、その結果はほぼ拮抗しているといえる水準でしょう。
また、「そもそも就活の軸について考えなかった」と回答した人も12.7%と、少なからず存在します。
就活の軸をなかなか決められなかった就活生の意見で圧倒的に多かったものは、「自分が何をしたいのかわからない」という悩みでした。
しかし、自己分析や日常生活での気づき、家族や大学のスタッフへの相談などを通じて、多くの人が就職の軸を見出しています。
就活もさまざまな業種の説明会に行ったり、面接を受けたりと、一貫性はありませんでした。
説明会や面接に行った帰りにはこの会社で良いのだろうかと悩んだものです。
ある日の夕食中に、いつものように美味しく食事を楽しんでいる時にある事に気がつきました。
自分は食事をしている時は悩みも忘れてストレスがないなと。
そんなささいな気づきでしたが、その日から就活サイトで食品業界ばかり調べるように気が付いたらなっていました。(メーカー/男性)
また、就職活動を行っていくなかで、自分の就活の軸に自信が持てなくなり、ぶれてしまいそうになって悩んだという声も目立ちました。
最終的には、自分が本当に後悔しないように軸を決めていきました。(メーカー/男性)
実際にどのように就職の軸を決めたのか、就職の軸について悩んだことが「ある」派や「すぐに決められた」派の意見をもとにみていきます。
まず、やりたいことが明確に決まっている人は、就活の軸も迷うことなくすんなりと決まったようです。
続いて、会社や仕事に対して求める条件から考えたという声も目立ちました。
>>「安定した仕事」業種・業界ランキング6選|令和の就活における「安定」の新基準とは?
自己分析を深堀りし、向いている仕事を考えたという声も多く寄せられています。
このほかには、大学のキャリアアドバイザーなどの専門家に相談したという声もありました。
「そもそも就活の軸について考えなかった」と回答した人からは、「稼げればいい」「大手に入れればいい」「就職できればいい」といった、やや大雑把ながらも、ある種では合理的とも捉えられる考え方がうかがえました。
自分の強みが活かせる仕事につきたいと思っていた。(製造業/男性)
今回実施したアンケート調査では、志望していた業界・業種とともに「あなたが決めた就活軸を教えてください」の項目も設けています。就活の軸の例文を、業界・業種ごとにまとめました。
- メーカー・製造業の就活の軸の例文一覧
- 商社の就活の軸の例文一覧
- 営業・コンサルの就活の軸の例文一覧
- IT業界の就活の軸の例文一覧
- 金融業界の就活の軸の例文一覧
- 医療介護・福祉の就活の軸の例文一覧
メーカー・製造業では、「モノづくりへの想い」が就活の軸になっている就活生が多く、大学や大学院などで学んだ専門性を活かしたいという傾向も強く見られました。
●お菓子を作れる企業に就職することです(お菓子メーカー/女性)
●ものづくりができる・・将来性がある・技術者主体の会社であること(メーカー/男性)
●1.自分の専門分野を活かせる企業であること 2.最先端の技術開発を行なっていること(メーカー/男性)
●自分の専門知識を活かし、人々を救うことができる仕事(製薬メーカー/女性)
●光学関係の仕事で、コンシューマ向け製品(メーカー/男性)
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総合商社と専門商社、取り扱う商品による違いがあるものの、商社は海外との取引が多い業界であることから、ワールドワイドな活躍の場を就活の軸と設定する傾向が見られました。
また、スケールの大きな仕事に挑戦できることもあるせいか、実力主義の風土による成長を重視する声も目立ちました。
●自分のキャリアアップが出来るかどうか(商社/女性)
●お金よりも何がしたいか、何をすることで成長できるかを重視しました(商社/男性)
●固執した考えに囚われず自由闊達な育成をしてくれる企業(商社/女性)
●真剣に仕事に取り組むためにオフの日がはっきりしている完全週休二日制で、実力主義であること(商社/女性)
●ある程度の年収がある上で30歳前に好きなことやりたいことをやってそこで稼げるようになること(商社/男性)
営業・コンサルの就活の軸は、コミュニケーション能力を活かすという方向性と、インセンティブの支給などによる収入面の2つが多い傾向です。また、お客様の困りごとを解決する仕事でもあり、社会貢献による価値を軸とする声も聞かれました。
●とにかく人と会話することの重要性(金融業界営業/男性)
●不動産業界で働くこと インセンティブがあるもの(不動産営業/男性)
●給料がいい。プライベートが充実できる(コンサル/女性)
●いわゆる年功序列ではなく、自分次第という環境があるのかどうか(営業/男性)
●自分の価値を高めていけるか、ということです(営業/男性)
●地方創生、キャリアアップ、常に新しいことに挑戦できる、困っている人に真に寄り添える(ITコンサル/女性)
IT業界は、企業によってエンジニアが参画できるプロジェクトに大きな違いがあり、それは習得できるスキルの幅や深さのレベル感にも反映されていきます。そんなIT業界では、スキルアップできる環境やワークライフバランスを重視する傾向が就活の軸として選ばれています。
●お金がもらえること、スキルを獲得しても腐らない業界(IT/男性)
●海外赴任可能、給与面でそれなりの待遇、みなし労働みなし残業は無いか、やりがいだけの社員を取ってないか(ITエンジニア/男性)
●人間関係が良好であること。福利厚生の充実性。将来性があり自分のスキルアップに繋げられること(IT/女性)
●面接で言ってもいい軸:スキルアップ、職種、会社の雰囲気、業務内容、業務形態(客先常駐ではない)、自社開発、面接で言わない軸:福利厚生、給与、残業時間、ワークライフバランス(IT/男性)
●ワークライフバランスを重視したかったので、土日休みの企業を軸に進めました(IT/女性)
就職先やポジションによっては大きな仕事にも関われる金融業界は、地域や他者への貢献を就活の軸にする傾向が強く、地元で働けることや労働環境を重視する声も目立ちます。
●「人の生活を根底から支え、挑戦を応援できる仕事がしたい」という軸にしました(金融/女性)
●人のためになること、実家から通える圏内で働けること、転勤がないこと(金融/女性)
●地元で就職できること お客様と直接関わることができる業務ができること(金融/女性)
●地域貢献かつ会社へ貢献できるか、福利厚生が整っている(金融/女性)
●地元に貢献出来る仕事であり、人と関われる仕事(金融/女性)
医療・介護・福祉分野では理想とするキャリアの実現や社会貢献を就活の軸とするほか、働く環境を重視する傾向もうかがえました。
●自分の知識をいかせて、スキルアップできる職場で働くことです。人と関わりながら成長し続けたいです(医療福祉/女性)
●立地が良い事、施設が希望通りであること(病院勤務、クリニック勤務など)(医療/女性)
●土日祝日休み・残業少なめ・勤務地が移動しやすい(医療系事務/女性)
●社会に貢献する。誰かの役に立つ(介護/女性)
●障害者支援に携われる仕事がしたい 社会福祉士の資格が生かせる分野で働きたい 一人一人の利用者と細やかに関われる場所で仕事がしたい(福祉/女性)
「就活の軸」を決めて就職活動に臨むことで、エントリーする企業をスムーズに選びやすくなるほか、志望動機などにも一貫性が生まれます。
はっきりとやりたいことが決まっていない就活生は、就活の軸に悩むかもしれません。しかし、自分に合った企業・仕事に出会うために、自己分析を徹底する、第三者に相談して意見を聞くなどのアプローチを講じ、就活の軸を明確にしていくとよいでしょう。