鉄拳のプロeスポーツ選手・チクリンと鉄拳コスプレイヤー・ユリコタイガーが語る”夢の叶え方”

2025/10/28

昨年行われた鉄拳7の世界大会「TEKKEN World Tour 2019」で見事優勝したチクリンさん。実はプロになるかならないかの頃に、日研トータルソーシングで働いた経験をお持ちでした。 今回は聞き役に鉄拳公式コスプレイヤーを務めた経験のあるユリコタイガーさんをお招きして、”好き”を”仕事”にする夢の叶え方について語っていただきました。

チクリンvsユリコタイガー!

ユリコタイガー:……。

ユリコタイガー:本当にこんなところに私より鉄拳が強い人がいるのかしら……。

ユリコタイガー:この部屋ね。でも……。

ユリコタイガー:誰もいないじゃない……。

ユリコタイガー:なんだかPS4がポツンと置いてあるし……。

ユリコタイガー:それにこの怪しいノートPC……。え?

ユリコタイガー:キャッ!

チクリン:ようこそ、ユリコタイガーさん。

ユリコタイガー:あ、あなたは……。鉄拳7の世界王者・チクリン!

チクリン:ユリコタイガーさんが鉄拳の強い人を求めていると聞いて呼び出しました。

ユリコタイガー:…。呼び出しておいてリモートってイマドキの嫌がらせ方ね。。

チクリン:ちょっとやむにやまれぬ事情がありまして、長崎からリモートで参加しています……。それにしても、リリ(鉄拳の登場キャラクター)のコスプレをしてくるなんて、えらい気合の入れようじゃないですか。

ユリコタイガー:ちがいます!コスプレは私の趣味であり、仕事であり、人生なんです!

チクリン:なんだかよく分かりませんが気合十分ということですね!

チクリン:それでは早速、かかってきなさい。

ユリコタイガー:世界王者が相手なら申し分なし! 全力でいかせてもらいます。

チクリンVSユリコタイガー  緊迫の第1回戦の動画はこちら↑

ユリコタイガー:私はもちろんリリで!

チクリン:私は得意のギース・ハワードで。

ユリコタイガー:よろしくお願いしまーす!

チクリン:よろしくお願いします。

ユリコタイガー:(真顔でガチャガチャとコントローラーを操作)……あっ!!

チクリン:はい。勝ちました。

ユリコタイガー:キーッ! 負けて当然だけどやっぱり悔しい〜! もう一回戦!

チクリン:いいですよ。

チクリンVSユリコタイガー  逆襲の第2回戦の動画はこちら↑

ユリコタイガー:(さらに白熱して集中する)……ここだ!

チクリン:ああっ!

ユリコタイガー:やった、勝った!

チクリン:やられました〜。

ユリコタイガー:ふふふ。全国のファンには内緒にしてあげる。

チクリン:この内容、ネットで公開されてるので……。

ユリコタイガー:ウソウソ、勝たせてくれるなんてお優しいのね。楽しくなってきたのでもう一戦やりましょ♪

チクリン:もちろんです!

チクリンVSユリコタイガー キャラチェンの第3回戦動画はこちら↑

ユリコタイガー:それじゃあ、今度はニーナで!

チクリン:ではもう1人の得意キャラ、リロイでいきます。

ユリコタイガー:私、鉄拳7ではリリがメインでしたけど、6まではニーナばかり操作していたんです。

チクリン:へー、ニーナが好きだったんですか?

ユリコタイガー:ええ。だって、私のお母さんにそっくりだから!

チクリン:ニーナにそっくりって、お母さんも相当な美人なんですね。

ユリコタイガー:あ、喋っている間に!

チクリン:(ドヤ!)

ユリコタイガー:悔しいですけど、やっぱりかないませんね。(あたりまえ)

チクリン:いえいえ、アーケードコントローラーならではの技を駆使してきて、ユリコタイガーさんもかなり強かったですよ。

鉄拳チャンピオン・チクリンの強さの秘密

ユリコタイガー:あらためて、今回は対戦していただいてありがとうございました!

チクリン:こちらこそありがとうございました!まだちゃんと自己紹介していなかったので、下に経歴を載せておきますね。

  • 人物紹介:チクリン

    プロのeスポーツ選手。長崎県諫早市出身。ひぐちグループ「Team ひぐち遊ING」所属。
    自他共に認める鉄拳好きで、大会のない時は連日YouTube等で平均5時間以上配信を行う。そのひたむきな姿から「努力のラストサムライ」の異名を持つ。
    2018年10月には10人目の鉄拳7プロライセンス保持者となった。
    2019年12月にTEKKEN World Tour 2019 Finalsを優勝し、中学生の頃から憧れ続けていた世界制覇の夢を果たした。

ユリコタイガー:私も♪

  • 人物紹介:ユリコタイガー

    イタリア出身。コスプレイヤー、タレント、モデル、声優、女優など、マルチジャンルで活躍。本名はエレオノーラ・アウレリアーナ・グリエルミ(Eleonora Aureliana Guglielmi)。幼い頃から大好きな日本のアニメ、マンガを見て育ち、2013年6月より日本に移り住んで、イベント、TV、CM、モデル等の活動をしている。コスプレが大好きで、 鉄拳7、 ハーレイクイン、フリクリ(FLCL)、ソウルキャリバー6、攻殻機動隊など、多数の作品の公式レイヤーを務める。TWIN PLANET ENTERTAINMENT所属。

ユリコタイガー:本日は色々お話しさせていただきたいのですけど、まずはチクリンさんがプロライセンスを持っている鉄拳について、チクリンさんの経歴とともに紹介をお願いします。

チクリン:鉄拳は、1994年にアーケード用に開発された3Dの対戦型格闘ゲームです。私も子どもの頃からプレイしていますが、リアルなキャラやコンボを重視した独特の操作感、何より対戦相手との心理戦が面白くて、他の格闘ゲームよりのめり込んでプレイしていました。

ユリコタイガー:わかります! 私も、コンボの爽快感や綺麗なキャラクターが好きで、どハマりした一人です(笑)

チクリン:多くのファンに支えられてシリーズを重ね、最新の鉄拳7ではeスポーツゲームとしての要素にも力を入れています。昨年は、大規模な世界大会「TEKKEN World Tour 2019 」が開催され、その決勝Finalsで、念願の優勝を果たすことができました!

ユリコタイガー:めちゃめちゃ凄いです! 世界王者となったチクリンさんの原動力とはいったい何だったんですか?

チクリン:とにかく、鉄拳が好き!単純だけどコレにつきます。自分には鉄拳しかちゃんとやってきたことがなかったので、”これだけは誰にも負けたくない”という気持ちが人一倍強かったんだと思います。

ユリコタイガー:なるほど、鉄拳に対する愛着と執念がチクリンさんを世界王者へと導いたわけですね。

日研トータルソーシングで働いていた下積み時代

ユリコタイガー:eスポーツのプロ選手になるまで、ただ鉄拳の練習だけしていたわけじゃないと思うんですけど、仕事はしていたんですか?

チクリン:もちろんしていましたよ。いろんなアルバイトを経験しました。郵便局とかでも働いていました。でも長かったのはゲーセンですね。仕事が終わったらすぐに鉄拳の練習ができるので(笑)

ユリコタイガー:あっ、私もゲーセンで働いたことあります(笑)

チクリン:そうなんですね!あとは、日研トータルソーシングで働いたこともあります。

ユリコタイガー:日研トータルソーシング? とはどんな会社なんでしょう?

チクリン:特に製造業の分野で強い、アウトソーシング会社ですね。社員を派遣したり、仕事を請け負って業務を遂行したり。私は某大手製造メーカーに勤務していました。

ユリコタイガー:おお、派遣会社なんですね!

チクリン:そうです、そうです。派遣だけでなく、様々な人材ソリューションサービスを行っている会社で、総合的な人材活用の会社と言えばいいでしょうか。

ユリコタイガー:なるほど! そこで、チクリンさんはどんな仕事をしていたんですか?

チクリン:半導体の製造に携わっていました。

ユリコタイガー:半導体?

チクリン:PCとかスマホに組み込まれる電子部品です。私が担当していたのは一番最初のほうの工程となる、シリコンウェハーの材料であるインゴットを作る作業でした。

ユリコタイガー:大変でしたか?

チクリン:製造って大変なイメージがありましたが、働いてみたらそうでもなかったです。唯一、クリーンスーツっていう肌を露出しない密閉した作業着を着ている時はすごく暑くかったですが(笑)

ユリコタイガー:へ~、そうなんですね。

チクリン:時給がよくて、しばらく、1年以上かな、続けていたんです。それにやってみたら意外と自分に向いていて。

ユリコタイガー:働いて初めて向いていると分かったんですね。でも、どうして製造業で働いたんですか?

チクリン:きっかけは知り合いの紹介です。プロライセンスを取ったばかりの頃、今まで以上に練習時間が欲しくて。でも安定した収入も欲しい。そんな、わがままな要望を満たしてくれたのが日研トータルソーシングで、派遣先の半導体工場は私が求めていた条件にぴったりでした。

ユリコタイガー:自分の理想の職場で、練習に専念できたと。

チクリン:半導体工場って24時間動いていて3交代のシフト制で勤務するんですけど、自分の場合は朝勤4日やったら休みが4日あって、次は夜勤4日やるみたいなシフトでした。家に帰ったら仮眠をとって必ず3〜5時間は鉄拳をプレイして、休みの日は8時間以上練習しました。
収入はいいし、同僚の理解もあって、大会があるときは忙しい時期でもシフトを変わってくれて、充実した鉄拳プレイができる職場でしたね。

ユリコタイガー:それはいいですね!

チクリン:そうなんですよ。日研を退職した後も、大会で優勝したりすると「おめでとう」って連絡してきてくれて。今でもみんな仲間だと思っています。

ユリコタイガー:素敵!

チクリン:もしプロプレイヤーとしてうまくいかなかったら、多分ずっとそこで働いていたと思います。ほんとに。

ユリコタイガー:そんな風に思わせるなんて、よっぽど良い職場だったんですね!

ユリコタイガーの夢に向かう原動力

チクリン:今度はユリコタイガーさんのことも聞かせてください。

ユリコタイガー:ええ〜私ですか!?

チクリン:ユリコタイガーさんは、どうして日本でコスプレイヤーの仕事をされているんですか?

ユリコタイガー:それはもう、子どもの頃から日本のアニメとかゲームが大好きで、14歳で初めて涼宮ハルヒのコスプレをして「ハレ晴れユカイ」を踊ったら、もうハマっちゃって!

チクリン:ああ!当時すごく流行ってましたね。

ユリコタイガー:それ以来、いろんなコスプレをしてきたんですけど、ずっとずっと日本に行きたいと思っていて、親にもずっと言ってました。「私、大人になったら日本に住むから」って。そのためにアルバイトを頑張ってお金をためていて、初めて日本に来たのは18歳のときです。

チクリン:ものすごい行動力ですね。

ユリコタイガー:そのときは旅行みたいな感じだったんですけど、19歳に日本語学校に留学して、本格的に日本に滞在するようになりました。

チクリン:最初は留学だったんですね。

ユリコタイガー:でも学校にいる間に、ある事務所の方にスカウトされて、それからはモデルやコスプレのお仕事をさせていただいております。

チクリン:まさにシンデレラストーリーですね。夢に向かって突き進む力は私なんかよりよっぽどあるような気がします。

ユリコタイガー:そんな、、チクリンさんみたいに毎日何時間もゲームの練習なんてできませんよ!

チクリン:いやいや、ユリコタイガーさんのリリのコスプレも、ただきれいなだけじゃできないですよ。

ユリコタイガー:そう言ってもらえると嬉しいです! リリはお気に入りのキャラクターなんです。最初は高飛車なお嬢様キャラは好きではなかったんですけど、やってみたらすごくハマって。みんな喜んでくれるし。何より、高飛車な態度や言葉って、自分でやるとちょっと気持ちいいんですよ!

チクリン:そ、そうなんですね。

ユリコタイガー:このリリのおかげでバンダイナムコさんに声をかけていただいて、鉄拳の公式レイヤーになることもできました。

チクリン:思い入れのあるキャラなんですね。

夢を叶えた今、何を目指しますか?

ユリコタイガー:チクリンさんは、やっぱりずっと鉄拳のプロプレイヤーになることを目指していたんですよね?

チクリン:そうですね。梅原大吾さんっていう有名なストリートファイターのプレイヤーがいるんですけど、この方が2010年に日本で初めてプロゲーマーになったんです。それを知って、自分も、という思いはずっとありました。

ユリコタイガー:私は日本に来てコスプレの仕事をすること、チクリンさんは鉄拳のプロゲーマー。夢を叶えた2人ですね。

チクリン:そうですね(笑)。ユリコタイガーさんは夢を叶えて、もう満足ですか?

ユリコタイガー:私、やりたいことまだまだいっぱいあるんです!今はとにかく、バンドを組んで日本のロックスターになりたいです!

チクリン:ロックスターですか!

ユリコタイガー:私、日本のロックも好きなのでいつか憧れのスターのようにステージに立って熱唱したいんです!

チクリン:熱いドリームですね(笑)。

ユリコタイガー:チクリンさんは現状で満足ですか?

チクリン:満足といえば満足ですね。チームに所属しているので固定の給料は出て、大会に優勝すれば賞金がもらえますし、頑張れば頑張るだけリターンがある仕事なんです。

ユリコタイガー:では、特に目標もありませんか?

チクリン:もちろん目標はあります! 今はとにかく、鉄拳の大会で結果を出し続けたいです。ずっと優勝し続けたいです。

ユリコタイガー:大きな目標ですね!

チクリン:それと、eスポーツ選手の一員として、もっとこの業界を盛り上げたいですね。eスポーツと言っても格闘ゲームは決して主流ではないんですが、どんどん市場が拡大している手応えは感じています。もっともっと業界が大きくなって、いろんな選手がプロになって活躍できれば良いなと思います。

ユリコタイガー:さすが世界王者! 責任感のある夢ですね!今日は色々とお話を聞かせてもらってありがとうございました!

チクリン:こちらこそありがとうございました! ユリコタイガーさんのことは存じてましたが、色々お話できて楽しかったです。

まとめ

ストイックにゲームを練習し続け、プロのeスポーツ選手になる夢を叶えたチクリンさんと、日本で好きなコスプレの仕事をする夢を叶えたユリコタイガーさん。

同じ”夢を叶えた2人”ですが、かたやチクリンさんは不安定な収入を派遣社員になることで補い、もし夢が叶わなくても収入を失わないように堅実な保険をかけていたのに対し、ユリコタイガーさんは夢に向かって突き進んでいるうちにスカウトされてとんとん拍子に夢が叶っていくという、対照的なサクセスストーリー。

夢の叶え方は人それぞれですが、”いま”動かなければ何も始まらないことだけは確かのようです。

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バンダイナムコエンターテインメント
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『鉄拳7』
http://www.tk7.tekken-official.jp/

〈企画・編集・執筆:株式会社LIG、撮影:藤井洋平〉