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業界トレンド

CASEとは?自動車業界での意味、MaaSとの違い、メーカー戦略と事例

CASEとは?自動車業界での意味、MaaSとの違い、メーカー戦略と事例
set02製造業トレンド集

自動車業界の新たな潮流を示す、「CASE」という言葉が近年注目されています。

CASEは100年に一度ともいわれる自動車業界の変革を象徴するキーワードであり、その先に見据えられている、移動自体をサービスとして捉える「MaaS」と合わせ、自動車のあり方自体にも大きく関わる概念です。

CASEとは何か、その概要を簡単に解説するとともに、注目される背景などと併せ、自動車業界にて今後予見される動きや各自動車メーカーの戦略について見ていきます。

この記事でわかること
  • CASE(ケース)とは、自動車業界の先進技術とサービスを表した造語
  • Connected(自動車のIoT化)・Autonomous(自動運転)Shared & Services(共有)・Electric(電動化)
  • メーカーは自動車の製造・販売業から、移動手段をサービスとして提供する存在へ

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目次

    CASEとは?自動車の技術革新が意味するもの

    CASEの説明図

    CASE(読み方:ケース)とは、「Connected:コネクテッド」「Autonomous:自動運転」「Shared & Service:シェアリング・サービス」「Electric:電動化」の頭文字をもとにした造語です。

    「Connected」と「Autonomous」「Electric」は自動車がハード面で物理的な変化を遂げていくことを示すもので、機能としての相互関係があります。そして、こうした技術の進化が、「Shared & Service」の基盤となるという構図です。

    このCASEは自動車業界のみならず、社会全体に変革をもたらすとされています。

    C(Connected):自動車のIoT

    スマホを持つ男性

    「C(Connected)」のコネクテッドは、自動車に通信機器やセンサが搭載されIoT化が進み、車や周辺の状況、道路状況など取得したデータをインターネットを介して活用していくものです。

    • 交通情報や駐車場の空き情報の通知
    • 事故発生時の自動通報システム
    • 自動車が盗難された際の自動追跡システム
    • エンジンの再始動を制御するセキュリティシステム

    これらはすでに実用化されている、コネクテッドの事例です。

    A(Autonomous):自動運転

    車を運転する女性

    「A(Autonomous)」は目覚ましい技術革新を遂げている自動運転を指します。

    安全運転のレベル一覧
    参照:国土交通省「自動運転のレベル分けについて」

    上表のように、自動運転はレベル0~レベル5のレベル分けがされています。レベル1~2の技術は、多くの自動車メーカーでADAS(先進運転支援システム)として搭載。レベル3も、2020年11月にホンダがレベル3の技術を搭載した新型レジェンドを発表するなど、実用化が進行しています。

    また、米国や中国などではレベル4の実証実験が行われています。日本においても、2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックでは、選手村でレベル4相当の自動運転を行う小型の電気バスの運行が行われました。レベル4までの実証実験は各国で実施されている一方で、現時点の技術ではレベル5の実現は困難とされています。

    レベル3までとレベル4~5では、運転の主体が「人」から「車」に変わり、ドライバーが不在になるという大きな違いがあります。そのため特にレベル4以降の実用化にあたっては法整備が必要とされています。

    なお日本では2020年4月の道路交通法の改正によって、高速道路などでのレベル3の自動車の走行が可能となりました。

     

    S(Shared & Services):所有から共有へ

    「S(Shared & Services)」に該当するのは、カーシェアリングやライドシェアリングです。

    ライドシェアは有償による相乗りを指すものですが、これは日本ではいわゆる「白タク」に該当するため、現行法では認められていません。また、道路交通法で自家用車を有償で運送に使うこと自体が原則として禁止されているため、海外では自家用車を使った配送サービスも広まっていますが、日本では違法です。

    ただし、ライドシェアは公共交通サービスのない過疎地域などで例外的に認められていて、少子高齢化や過疎化が進むことで今後広がっていくことも考えられます。

    カーシェアリング車両台数と会員数の推移グラフ
    画像参照:公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団「わが国のカーシェアリング車両台数と会員数の推移」

    一方、日本でもカーシェアリング市場は急成長しています。公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団が2020年3月に実施した調査によると、カーシェアリングの車両台数は40,290 台で前年比約15%増加。会員数は204万6,581 人で前年比約26%増加しています。

    車が所有するものから共有するものへと変化するとともに、「移動するためのツール」として捉えられるように変わってきたといえます。

    E(Electric):電気自動車とカーボンニュートラル

    充電をする電気自動車

    「E(Electric)」が示す自動車の電動化の推進は、地球温暖化対策として脱炭酸社会の実現に向けた世界的な動きとして展開されています。ガソリンなどの化石燃料から、走行中にCO2を排出しない電気へと、動力源の移行の流れが起きているものです。また、電気自動車は制御のしやすさから、コネクテッドや自動運転の実現にも貢献するとされています。

     

    これまでEU各国では独自にガソリン車やディーゼル車の販売の規制を打ち出してきましたが、2021年7月にEUとして2035年にハイブリッド車を含むガソリン車・ディーゼル車の販売を事実上禁止する方針を打ち出しました。また、アメリカではカリフォルニア州で2035年までにガソリン車の販売が禁止されます。

    このようなカーボンニュートラル推進に根差した相次ぐ動きから、今後は電気自動車の普及が加速していくと見られています。

    「日本はこうした自動車の電動化の動きに遅れているのでは?」とする見方もありますが、それは正しいものではありません。日本は燃費への意識の高さから、むしろ他国に先駆けてハイブリッド車や電気自動車の開発に取り組んできました

    トヨタ自動車は2021年10月に新型の電気自動車の「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」を発表し、2022年に発売を開始、そして2030年までに30車種を展開する方針を打ち出すなど、さらなるアクションの具体例も見られます。

     

    CASEに象徴される自動車業界の今後

    交通とネットワークのイメージ図

    ドイツの自動車メーカーが打ち出した「CASE」は世界の自動車メーカーの新たな潮流として注目され、日本においても経済産業省も含めた大規模な取り組みとなっています。

    CASEが注目される理由とその進化の先に見据える「MaaS」

    CASEという言葉が用いられたのは、2016年9月に開催された「パリモーターショー2016」で、メルセデス・ベンツを展開するダイムラーが中長期戦略のタイトルで用いたのが始まりです

    ダイムラーは、「Connected:コネクテッド」と「Autonomous:自動運転」「Shared & Service:シェアリング・サービス」「Electric:電動化」の4つを組み合わせることで、モビリティサービスのプロバイダーに転換していくことを宣言するという狙いがありました。

    CASEは多くの自動車メーカーに衝撃を与え、自動車の製造・販売を行うだけではなく、車という「移動手段のサービス」を提供する、新しい潮流を象徴する言葉となったのです。

    また、移動すること自体をサービスとして考える(Mobility as a Service)、略して「MaaS」はCASEの進化の先に実現され、移動利便性の向上やさまざまな課題を解決する手段として注目されています、

    MaaS(マース:Mobility as a Service)とは、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるものです。

    日本版MaaSの推進|国土交通省

     

    上述のカーシェアリングやライドシェアリングのほか、すでに広く浸透しているSuicaなど移動決済の統合手段もMaaSの一環として位置づけられるものです。Society5.0の実現の中核を担う施策のひとつとして、官民を挙げての推進体制が講じられています。

    CASEをめぐる経済産業省のアクション

    経済産業省でも、2020年「CASE技術戦略プラットフォームまとめ」として取りまとめるなど、CASEに関する取り組みを強化する姿勢を明確に打ち出しています。

    経済産業省が取り組みの具体的な方向性として掲げているのは、下記の4つのテーマです。

    • CO2の低減
    • 電動化技術
    • AD/ADAS・コネクテッド技術
    • 基盤的技術

    CO2の低減

    CO2の低減では、「LCA」「リユース/リサイクル」「軽量化/マルチマテリアル」の3つの分野を設定しています。

    「LCA」とは製品の原料の採取から製造、使用、廃棄に至るまでのすべての工程での環境負荷を軽減するという考え方で、2020年度からバッテリーに関する評価方法などの議論をスタートしています。「リユース/リサイクル」や「軽量化/マルチマテリアル」の分野では、車載用蓄電池やアルミニウムのリサイクル、車両の軽量化などに関して、議論や研究が行われています。

    電動化技術

    「電動化技術」は全固体電池など燃料電池や小型高速モーターの研究開発、電池やパワー半導体の生産性の向上などに関する取り組みです。

     

    AD/ADAS・コネクテッド技術

    「AD/ADAS・コネクテッド技術」は「コネクテッド関連技術、セキュリティ」「シミュレーション技術の活用」「ソフトウエア人材育成の強化」の3つの分野があります。

    このうち、「コネクテッド関連技術、セキュリティ」では、2021年度までの国際標準を考慮した日本での協調型自動運転実現に向けた通信方式の提案と通信技術のロードマップの策定などの取り組みが行われています。「シミュレーション技術の活用」では2020年度から、産官学による一般道での安全性評価用シナリオの作成や、車両E/Eアーキテクチャのモデルベース開発のプロジェクトをスタートするとしています。

    基盤的技術

    「基盤的技術」では、「モデルベース開発」「電磁波対応特性を持つ新素材」「多様なモビリティの展開」が打ち出されています。

    参考:経済産業省「CASE技術戦略プラットフォームまとめ」

    モデルベース開発

    2020年度に内燃機関・トランスミッション・EV・半導体などのモデル化とガイドライン構築を推進し、2021年度に普及の核となる民間団体を立ち上げるというスケジュールとなっています。

    電磁波対応特性を持つ新素材

    OEM供給のために素材メーカーとの調整加速を念頭に、情報科学によって材料開発を効率化するMI(マテリアル・インフォマティクス)のプラットフォームを具体化する検討を行うものです。

    多様なモビリティの展開

    農業機械や建設機械など他のモビリティのニーズも踏まえて、パワートレイン技術を強化するプロジェクトの検討が打ち出されています。

    国内メーカーの戦略と事例

    スマートシティーイメージ図

    国内の自動車メーカーは、コネクテッドや自動運転などCASEを軸にした技術開発を積極的に進めています。また、異業種である通信事業者を巻き込んだ取り組みとしてもCASEは展開されています。

    トヨタ自動車:国内のCASEを牽引

    トヨタ自動車は国内の自動車メーカーの中でも「CASE」をアクティブに打ち出し、モビリティ社会の実現を牽引する立場です。

    トヨタ自動車では、2018年6月の新車発売時からコネクテッドサービス「T‐Connect」をスタート。万が一の際にオペレーターが緊急車両などを手配する緊急通報をはじめ、集中力が乱れているときのナビ音声による注意喚起、目的地検索やお役立ち情報検索といったサービスを提供しています。

    また、「Toyota Safety Sense」という名称で、多くの車種に衝突の回避や事故による被害の軽減のためのADAS(先進運転システム)を搭載。衝突被害軽減ブレーキやハンドル操作サポート、追従ドライブ支援機能、車線はみ出しアラートといった機能を実装しています。

    日産自動車:イノベーションを積極的に推進

    日産自動車でも、イノベーションを積極的に進めています。「Nissan Connect」はスマートフォンとの連携を強化しているのが特長。たとえば、カーナビへスマートフォンから行先を送信する、スマートフォンをカーナビにつなげて音楽を再生する、車に乗る前にスマートフォンでエアコンを作動しておくといったことが可能です。

    また「ProPILOT 2.0」の搭載車では、ナビ連動走行と同一車線での車速および車線の維持機能により、高速道路におけるハンズオフドライブを実現しています。

    ホンダ:自動運転「レベル3」を実現

    ホンダでは、2020年11月に自動運転レベル3の機能を搭載した新型レジェンドの型式認定を取得しました。これは自動運転機能を搭載した自動車として、世界で初の認可となります。

    「Honda SENSING Elite」の機能としてトラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)を搭載し、走行中に渋滞に遭うと、ハンズオフ機能付車線内運転支援機能でアクセルやブレーキ、ステアリングの操作が実行され、同一車線内で車間距離を保ちながら走行や停止、再発進が行われるものです。

    通信事業者もCASEに参入

    自動車メーカーだけではなく、大手通信事業者もCASEに参入する動きを見せています。

    ソフトバンクはホンダとコネクテッドカー開発で提携関係にある一方で、2018年9月にトヨタ自動車などとの共同出資により、オンデマンドモビリティサービスを展開する「MONET Technologies」を立ち上げました。従来からトヨタ自動車はKDDIやNTTと協業関係にあったことから、既存の枠組みを超えた動きとして話題になりました。

    GMOインターネットグループでは、2020年1月にGMOモビリティクラウドを設立。GMOクラウドからコネクテッドカー関連事業を引継ぎ、自動車業界の事業者向けに自社ブランドアプリを制作するサービスとして、「LINKDrive collaboリンクドライブコラボ byGMO」を展開しています。

    自動車部品の変化・部品メーカーに問われる変革

    電気自動車のエンジンルーム

    自動車メーカーでは、CASEをはじめとする先進分野に経営資源を集中させています。基本的な技術領域は部品メーカーが担うという構図です。

    部品メーカーは単に供給を請け負うのではなく、周辺領域を含めて設計提案から行うなど、自社製品の付加価値の向上に向けた取り組みが求められています。また、自動車メーカーや自社の収益性を高めるため、生産性の向上によって価格競争力をつけていく取り組みも、変革する業界内での生き残りのために必要です。

    まとめ

    自動車はコネクテッドや自動運転、電動化によって、従来とは異なるイノベーションが起こっており、さらにシェアサービスの普及で、「所有」から「共有」に変わる動きも見られます。この自動車業界の変革を象徴するキーワードが「CASE」です。

    自動車メーカーや部品メーカーが今後も生き残っていくためには、こうした新たな概念に即した事業展開が求められます。高度な技術革新や価格競争力が必要とされていくでしょう。

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    監修者プロフィール

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    監修:細原 敏之(ほそはら としゆき)

    高分子材料を利用した自動車電装部品の設計、製造、生産技術(設備設計、レイアウト検討)及び品質保証業務などを歴任し、トヨタ自動車関連のティア1サプライヤーであるデンソー、アイシン精機及び三菱電機株などを主要顧客とした業務の責任者を担当。その後、タイ・バンコックでの工場建設の代表取締役、発電所などの金属ガスケットやシール材などの開発・マーケティング担当を経て独立。工場の品質管理、生産管理及び労務管理の業務や、ISO審査員及び経営コンサルティング業務を開始し、現在に至る。

    この記事を書いた人

    Nikken→Tsunagu編集部

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