

製造業の各企業は「人・モノ・情報」の流れを把握するため、以前からシステム導入に積極的に取り組んできました。近年は産業用に特化したシステムである「IIoT(インダストリアルIoT)」の導入も進んでいます。IIoTならこれまでよりも膨大なデータを取得・分析できるため、さらなる業務効率化やコスト削減が期待されています。
本記事では製造業におけるIIoTとはどのような技術かを解説するほか、IIoTのメリットや実装の際の課題について紹介します。
この記事でわかること
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製造業において話題となっているIIoTとは、具体的にどのような技術なのでしょうか。IoTとの違いと併せて解説します。
IIoTとは「Industrial Internet of Things」の略で、製造業や物流業、建設業といった産業用に特化したIoTを指します。具体的には、工場にある機械やシステムをネットワーク化し、生産プロセスを高度化するテクノロジーのことです。
IIoTを構成する技術は、「デバイス」「ネットワーク」「プラットフォーム」「アプリケーション」の4種類に大別されます。
「デバイス」は製造現場のデータを収集する技術です。振動や温度を検知するセンサーやカメラのほか、複数のデバイスを束ねるゲートウェイなどが含まれます。
「ネットワーク」の役目は、デバイスが収集したデータを中央のサーバーに伝送することです。5GやLTEなどの広域にわたる通信サービスと、BluetoothやWi-Fiに代表される近距離の通信サービスがあります。
製造業のIIoTの場合、非常に多くのデバイスがネットワークに接続されることが予想されます。「プラットフォーム」は、それら多数の端末を効率的に管理するための技術です。
最後の「アプリケーション」は、デバイスで収集したデータを可視化・分析する技術です。たとえば、大量のデータを人間の目にわかるようにグラフ化したり、収集したデータから設備の正常・異常を判別したりできます。
IIoTの役割は、「デバイス」や「ネットワーク」といった技術を用いて、監視・管理対象である「人・モノ・情報」のデータを収集し、サーバーに蓄積しつつ分析を行って工場のシステム全体を最適化することです。IIoTの導入によって生産ラインの見える化や在庫管理の適正化、保守管理の効率化などを実現できます。
IIoTとIoTは、適用範囲や使用目的が異なります。
IIoTは、製造や物流といった産業分野に特化しており、特に製造業では在庫管理の適正化や業務効率化、予知保全などに活用されています。
一方のIoTは産業分野のみならず、住宅や家電製品、自動車などの日常生活に関わる範囲を広く対象としています。住宅に取り付けた人感センサーや火災報知器によって侵入検知や火災検知を実現するといったように、日常生活の利便性向上を目的としてIoTが活用されます。
また、IIoTは厳しい環境下に置かれた産業用機器が適用範囲であるため、日常生活で使用されるIoT機器に比べて安定性と堅牢性が要求される点も大きな違いです。
IIoTが注目されている理由は、製造業が抱えるさまざまな課題を解決できることにあります。ここでは、IIoTを導入した場合のメリットについて紹介します。
センサーやカメラによって生産設備のデータを収集するIIoTなら、リアルタイムで生産ラインの監視とデータの分析が可能です。これにより、生産管理や品質管理などの効率化を実現できます。たとえば化学プラントの操業においては、現場から離れた中央制御室で生産ラインの状態を監視できるほか、異常を検知するAIを併用すればオペレーションの手助けになります。このような管理業務の効率化によって生産性を向上させることができれば、人手不足の解消にもつながるでしょう。
これまでは、全国各地にあるサプライヤーや小売店が持つ在庫数を正確かつタイムリーに把握することは困難でした。これを、IIoTをはじめとするデジタル化によって、組織の枠を超えてサプライヤーや小売店の在庫数を一元管理できるようにすることで、サプライチェーン全体で過剰在庫や欠品を防ぐことが可能になります。
サプライチェーンの最適化に付随するメリットとして、適正在庫を実現できれば、在庫を保管するためにかかるコストを削減できる点も挙げられます。さらに、IIoTの導入によって、工作機械やポンプといった設備の故障や事故の前兆を早期に察知する予知保全を行うことも可能です。結果として設備故障によるダウンタイムを抑えられるため、製造コスト・保守コストの削減にもつながります。
IIoTで収集したデータを活用することで、これまで実現できなかったようなサービスを顧客に提供できる可能性が出てきます。たとえば、設備や製品の状態に応じた保守契約や稼働データに基づくコンサルティングなど、新たな収益源を開拓できるのです。
IIoTの活用領域は研究開発や調達、製造、保守、物流と多岐にわたります。自社だけでなく、外部の組織も含めた膨大なデータを蓄積・分析することで、経営や投資に対する意思決定が迅速かつ的確になるでしょう。これにより、需要変動に対応しやすくなります。
IIoTの概要や導入した際の効果について見てきましたが、実装するにはさまざまな課題があります。ここでは実装時の主な課題について解説します。
IIoTの導入にあたっては、デバイスやサーバー、アプリケーションなどに多額の投資が必要です。そのため、ROIを説得力のある形で示すことが困難な場合があるのも事実です。経営者を含むステークホルダーに対し、長期的視点での効果や費用対効果をどう説明するかが課題となります。
現場の通信環境が不安定で、通信速度が不十分な場合、リアルタイムでのデータ収集が困難になります。その場合にはネットワーク回線の高速化と大容量化を行う必要がありますが、数多くの通信端末を導入するIIoTでは通信負荷がかかりがちです。
IIoTの導入により、これまで閉じていた工場内ネットワークを外部のインターネットと接続するケースが多くなります。そのため不正アクセスやマルウェア侵入を防ぐために、ファイアウォールや暗号化、アクセス権限管理など、総合的な対策が必要になります。機密情報に対する適切な取り扱いやセキュリティ意識向上のための社員教育も不可欠です。
IIoTの実装にはセンサーやデータ分析、AIなどの知識が必要とされます。加えて自社の製造プロセスについても詳しく知っていなければなりません。このような製造業とITの知見を兼ね備えた人材は不足しており、データ解析やAI活用を担うエンジニアの育成が追いつかないのが現状です。
IIoTとは、製造業や物流業など、産業用に特化したIoTのことです。工場にある生産設備や在庫などのデータを、ネットワークを経由して詳細に収集することで、業務効率化やコスト削減、サプライチェーンの最適化などを実現できます。
IIoTを実装する際に重要なことは、IoTに精通したIT系エンジニアの確保です。しかし、IT人材の育成がうまくいかず、人手不足に悩む企業も多いのではないでしょうか。
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