

リチウムイオン電池は、スマートフォンやパソコンなどをはじめ、多くの家電製品に使われており、現代の生活に欠かせない存在です。近年では、電気自動車搭載用バッテリーや再生可能エネルギーの蓄電用としても活用されており、持続可能な社会を実現するためにも、その重要性が高まっています。
本記事では、リチウムイオン電池の種類や仕組みなどの概要をわかりやすく解説します。リチウムイオン電池が注目されている理由やメリット・デメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
|
リチウムイオン電池の概要を理解するために、特徴や仕組み、鉛蓄電池(なまりちくでんち)との違いを詳しく見ていきましょう。
リチウムイオン電池とは、リチウムイオンが正極と負極の間を移動することで充電・放電を行う二次電池の一種です。
二次電池 とは、充電することで繰り返し利用できる「充電式電池」を意味します。一方、使い切りの乾電池は「一次電池」 といいます。
リチウムは非常に小さく軽い物質であるため、軽量で小型の電池を製造できるのが特徴です。また、耐久性にも優れており、以下のような製品や分野で使用されています。
スマートフォンやパソコンなどの家電製品に使用されているほか、大容量設計とすることで、ロボットや電気自動車、インフラなど、幅広い分野で活用されているのです。
リチウムイオン電池は、あらかじめリチウムを含ませた金属化合物を使用した「正極」と、リチウムをためる働きのある炭素材料で作られた「負極」、そしてリチウムイオンを通しやすい「電解液」の主に3つの素材で構成されています。
正極と負極は接触しないようにセパレータで仕切られており、電解液を通して電気が通るように配置されているのが特徴です。
リチウムイオン電池の放電は、外部の回路を通って負極側にあるリチウムイオンが正極側に移動することで起こります。一方で、充電する際は、正極側にあるリチウムイオンが電解液を介して負極側に移動し、リチウム化合物を形成します。
鉛蓄電池とは、正極と負極の材料に鉛を用いた二次電池のことで、次のような特徴があります。
*鉛蓄電池のメリット・デメリット
メリット |
デメリット |
・比較的安価に製造できる ・幅広い温度範囲で動作する ・過充電に強い |
・バッテリー自体も重い ・使用頻度によって性能が低下する ・破損時に危険を伴う |
鉛蓄電池は、リチウムイオン電池と比較すると低コストで製造でき、幅広い温度範囲で動作可能なため、多様な用途に利用されています。
また、リサイクルが可能な点や二次電池の課題である「過充電」にも強い点なども高く評価されています。
ただし、バッテリー自体が重く用途が限定されたり、使用頻度によって性能が低下したり、さらには破損時に危険を伴うなどが大きなデメリットです。
リチウムイオン電池と鉛蓄電池の大きな違いは、次のとおりです。
|
リチウムイオン電池 |
鉛蓄電池 |
電解液 |
有機電解液 |
希硫酸 |
バッテリー寿命 |
長い |
短い |
バッテリー充電時間 |
短い |
長い |
メンテナンスの必要性 |
メンテナンスフリー |
定期的にバッテリー液の補充が必要 |
初期費用 |
高い |
安い |
ランニングコスト |
安い |
高い |
エネルギー効率 |
高い |
やや低い |
環境への配慮 |
やさしい |
有害物質が含まれている |
低温環境での動作 |
弱い |
強い |
このように、リチウムイオン電池と鉛蓄電池にはさまざまな違いがあります。用途に合わせて最適な種類の二次電池を選択することが大切です。
続いてはリチウムイオン電池を利用するメリット・デメリットを詳しく解説します。
リチウムイオン電池を利用するメリットは、次のとおりです。
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
リチウム自体が非常に小さな物質であるため、軽量かつ小型の電池を製造できます。加えて、ほかの二次電池に比べて小型であるにもかかわらず、3.2~3.7Vという高い電圧まで出せるパワフルさが大きな特徴です。
同じサイズの電池で比べると、鉛蓄電池は2.1V、ニッケル水素電池は1.2V、ニッケルカドミウム電池は1.25Vまでの電圧しか出せません。
リチウムイオン電池は、電気を作る際にほかの二次電池のよう化学反応を起こさないため、劣化しづらく、電極が安定しています。そのため、電池が劣化しづらく、メモリー効果 が起きにくいのが大きな特徴です。
メモリー効果とは、充電された電力を使い切らない状態での充電を繰り返すことによって使用可能時間が短くなる現象のことです。つまり、リチウムイオン電池はバッテリーの容量が失われにくく、長年にわたる繰り返しの使用に非常に強いといえるでしょう。
リチウムイオン電池の最大の特徴ともいえるのが、急速充電できる点です。リチウムイオン電池以外のニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池なども急速充電をすること自体は可能でしたが、充電の終了判定が難しく、実用化には至りませんでした。
一方のリチウムイオン電池は、充電器側で充電の終了判定ができるようになったため、急速充電の実用化が叶いました。
リチウムイオン電池は、自己放電(自然放電)にも強いという特徴があります。自己放電(自然放電)とは、蓄えた電気の量が使っていない間にも自然に減っていく現象のことです。
二次電池のニッケル水素電池の自己放電率が1か月あたり10~30%なのに対し、リチウムイオン電池は1か月あたり1~2%と、非常に低い自己放電率を誇ります。
続いて、リチウムイオン電池を利用するデメリットは、次のとおりです。
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
リチウムイオン電池は、過充電や過放電を繰り返すと急激に劣化し、故障する恐れがあるため、注意が必要です。
過充電とは、十分に充電されたあとも充電を続けることを指し、スマートフォンやパソコンなどのバッテリーが劣化していく原因の一つです。最悪の場合は、バッテリーの破裂や発火などを引き起こす危険性があります。
一方で、充電が切れた状態で放置し続ける行為を「過放電」といいます。過放電状態になると異常発熱が発生するリスクが高まり、思わぬ事故につながるケースもあるため、十分注意しましょう。
リチウムイオンは、鉛蓄電池などのほかの二次電池に比べると価格が高い点がデメリットです。
スマートフォンやパソコン、電気自動車などの普及に伴い、価格は年々下がっているものの、未だに他の二次電池に比べてコストがかかります。
また、その需要は高まっているため、今後価格上昇が起こる可能性もゼロではありません。
ただし、寿命や充電スピードなどの性能の良さやメンテナンスが不要である点を踏まえると、コストの高さも納得できるとはいえます。
リチウムイオン電池が注目されている理由は、次のとおりです。
それぞれの理由をわかりやすく解説します。
リチウムイオン電池は、エネルギー密度の高さをはじめ、自己放電率の低さや耐久年数の長さなどを兼ね備えた、非常に高性能な二次電池です。
リチウムイオン電池が主流になる以前は鉛蓄電池が活用されていましたが、リチウムイオン電池は、よりコンパクトな設計で大容量の電力を蓄えられるため、鉛蓄電池よりも幅広い分野で活用されるようになりました。
リチウムイオン電池は高いエネルギー密度を持つため、同じ容量の電気をよりコンパクトなスペースに収められるのが大きな特徴です。
スマートフォンやノートパソコン、カメラなどが手のひらに収まるコンパクトサイズになっているのも、リチウムイオン電池のおかげといっても過言ではありません。年々軽量化やコンパクト化が進む家電製品や電子機器のニーズとマッチしている点も、リチウムイオン電池が注目されている理由です。
高性能が特徴のリチウムイオン電池は、ドローンや人工衛星にも使用されるなど、さまざまな分野での活用が進んでいます。技術的革新によって、今後のさらなる発展が期待されているのです。
リチウムイオン電池は汎用性が高く、エネルギー密度に優れた二次電池です。特に、電動モビリティの普及や再生可能エネルギーの蓄電用として活用されている影響から、今後さらに需要が高まると考えられます。
そのため、リチウムイオン電池についての知識やスキルを持った人材を増やすことが急務といえるでしょう。
リチウムイオン電池に詳しい人材確保を検討している企業様は、日研トータルソーシングにご相談ください。
日研トータルソーシングでは、人材派遣を通じて、製造業における業務効率化をサポートいたします。製品開発や製造現場で活躍する人材育成をはじめ、製造現場の課題解決に向けた具体的な相談も随時受け付けております。お気軽にお問い合わせください。