労働者派遣法とは?制定された背景や法律における6つの主要ポイント
人材派遣は、企業の柔軟な人員計画を可能にし、働く側にとっても多様な働き方を実現できる雇用形態です。ただし、人材派遣サービスを利用するにあたっては「労働者派遣法」という法律に基づいて適切に対応する必要があります。この法律は派遣社員の権利を守るために制定されたものであり、利用企業はその内容を正しく理解したうえで人材派遣サービスを活用しなければなりません。
本記事では、労働者派遣法の概要を解説し、制定の背景や重要なポイントについて詳しく紹介します。人材派遣サービスの利用を検討している企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてください
この記事でわかること
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目次
労働者派遣法とは?制定された背景
労働者派遣法の概要や、どのような労働者に適用される法律なのかをわかりやすく解説します。
労働者派遣法とは
労働者派遣法は、1985年に派遣社員の保護と派遣事業の適正な運営を目的として制定されました。現在の正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣社員の保護等に関する法律」(以下「派遣法」)です。
この法律は、派遣社員が不当な扱いを受けないよう、基本的なルールを提供するものです。派遣事業を運営する派遣元企業だけでなく、派遣社員を受け入れる派遣先企業も、この法律の内容を理解・遵守しなければなりません。
労働者派遣法の対象範囲
労働者派遣法は、派遣元企業に雇用され、派遣先企業で働く労働者を対象としています。業務上の指揮命令は派遣先企業が行う一方、給与の支払いや福利厚生の提供は派遣元企業側が行うのが原則です。
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特徴 |
有期雇用派遣 |
・派遣先企業と人材派遣会社間で派遣契約を締結する ・人材派遣会社と派遣社員が雇用契約を締結し、派遣先企業が求める期間のみ役務を提供する |
無期雇用派遣 |
・有期雇用派遣と同じ仕組みを採用しているが、人材派遣会社と派遣社員の間で無期の雇用契約を締結している ・安定した雇用形態である |
紹介予定派遣 |
・派遣先企業が後日派遣社員を直接雇用することを前提とした仕組み ・派遣期間中に派遣社員の能力や適性を考慮して採用するかどうかを判断する |
労働者派遣法を遵守しながら派遣社員を活用するためにも、これらの雇用形態の違いを派遣元企業と派遣先企業の双方が正しく理解しなければなりません。
労働者派遣法が制定された背景
労働者派遣法は、労働市場の変化に対応するため、1985年に制定され、翌年の1986年から実際の人材派遣が可能となりました。
ここでは、労働者派遣法がどのような変遷を辿って来たかを知るために、沿革について見ていきましょう。
年 |
概要 |
1986年 |
・労働者派遣法が施行 ・専門知識を必要とする13業務(同年16業務に拡大)が対象 |
1996年 |
・対象業務が26業務に拡大 |
1999年 |
・対象業務がネガティブリスト方式(非対象職種のみを指定)に変更され、原則自由化 |
2000年 |
・紹介予定派遣が解禁 |
2004年 |
・製造業務への派遣が可能に ・26業務への派遣期間制限が撤廃 ・派遣期間の上限が従来の1年から3年へ延長 |
2006年 |
・医療関係業務の一部で派遣が解禁 |
2007年 |
・製造業務への派遣期間が最長3年に延長 |
2012年 |
・派遣法改正による規制の強化 (日雇派遣の原則禁止、グループ派遣の規制など) |
2015年 |
・派遣法の大幅改正 (3年ルールの導入、労働者派遣事業の許可制一本化など) |
2020年 |
・同一労働同一賃金の導入 |
1996年には、市場ニーズの高まりにより、派遣対象業務に研究開発や広告デザイン、アナウンサーなど10種類が追加され、計26業務に拡大されました。これらの対象となる業務を定めたリストを「ポジティブリスト」といいます。
1999年には派遣対象業務が基本的に自由化され、特定の非対象業務のみをリスト化する「ネガティブリスト」方式が導入されました。対象外とされた業務には以下のようなものがあります。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 病院・診療所などにおける医療関連業務
- 弁護士・社会保険労務士などの士業
また、2004年には派遣期間の上限が従来の1年から3年に延長され、特定業務では派遣期間が無制限となり、ネガティブリストに掲載されていた業務についても、一定の条件下で派遣労働が解禁されました。解禁される業務や条件については、細かい基準が設けられており、派遣可能期間も1年以内という上限必要書類が設定されています。
2012年には、偽装請負や二重派遣などの問題を受けて、派遣労働者保護を強化する目的から、日雇派遣の原則禁止やグループ派遣の規制などが実施されました。
2015年には、派遣法の大幅改正が実施され、派遣期間の上限が3年に統一されました。また、派遣社員の雇用安定措置が義務付けられ、派遣先企業への直接雇用依頼や新たな派遣先を紹介することなどが求められるようになりました。
直近では、2020年に派遣社員と正社員の待遇格差をなくすための法整備として「同一労働同一賃金」が導入され、派遣先企業の正社員と派遣社員の待遇を統一するように求められるようになりました。
このように、短期間のみや専門性の高い労働者へのニーズが高まったこと、そして適切な運営と労働者保護を目的に新たな法律が必要とされたことなどを理由に、派遣法は短期間のうちに何度も繰り返し改正されてきたのです。
労働者派遣法における6つの重要ポイント
派遣法には、派遣社員を現場で登用する際の注意点がいくつかあります。ここでは、派遣法における6つの重要ポイントを詳しく解説しましょう。
ポイント1 派遣期間の制限
派遣社員を受け入れる際は、労働者派遣における期間制限に注意が必要です。同一組織単位での同一派遣社員の受入期間は3年までと定められており、3年を超えて同じ派遣社員を受け入れるのは違法行為となります。3年という期間の枠を超えて就業してもらいたい場合は直接雇用に切り替える、もしくは過半数労働組合などへの意見聴取を行わなければなりません。
ただし、事務所単位で派遣期間を延長する場合は、派遣先の課やグループの変更を行えば継続雇用することができます。同一組織単位では、同じ派遣社員と3年以上の派遣契約を締結できないと覚えておきましょう。
ポイント2 派遣社員の禁止業務
派遣契約書に記載のない業務に派遣社員を従事させることはできません。また、派遣法で定められている派遣禁止業務(適用除外業務)への従事も禁止されています。
具体的には、次の5つの業務があります。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 病院・診療所などにおける医療関連業務
- 弁護士・社会保険労務士などの士業
ただし、これらは禁止業務であり、派遣が禁止されている事業を指すため、一部条件を満たせば派遣社員を受け入れられます。派遣社員を受け入れる際は、従事させる業務内容にも注意しましょう。
ポイント3 同一労働同一賃金
現在施行されている派遣法では、同一労働同一賃金が原則となっています。同一労働同一賃金とは、派遣社員であっても、同種の業務に従事する正社員と同等の待遇を受ける権利があるという考え方です。つまり、賃金や福利厚生などで不合理な差別があってはならないとされているのです。
待遇決定については「派遣先均等、均衡方式」「労使協定方式」の2つの方法から選び、不合理な賃金の格差を是正するように努めなければなりません。
ポイント4 派遣事業の適切な運営の遵守
労働者派遣事業を運営するためには、厚生労働省からの許可が必要です。2015年の法改正により、すべての労働者派遣事業が許可制となりました。許可を得るために、人材派遣会社は、次のような一定の基準を満たす必要があります。
- 専ら特定の者に提供することを目的としないこと
- 派遣元責任者が適正に選任されていること
- 労働保険・社会保険の適用等派遣社員の福祉の増進が見込まれること
引用元:労働者派遣事業を適正に 実施するために|厚生労働省 北海道労働局
人材派遣サービスを安心して利用するためにも、適切に運営されている人材派遣会社者であるかを事前に確認しましょう。
ポイント5 日雇派遣の原則禁止
日雇派遣とは、1日ごと、もしくは30日以内の期間を定めて派遣社員を就業させることです。別名「スポット派遣」や「スポット」とも呼ばれています。
しかし、働くのが短期間のみという理由で雇用環境の十分な整備がされずに労働災害につながったケースや、不適切な日雇派遣が社会問題化したことを受けて、2012年の法改正により、日雇派遣は原則として禁止となりました。現在は1日だけ、1週間だけという短い期間で短期労働契約を締結する行為は違法行為と見なされる恐れがあるため注意が必要です。
ただし、特定の条件下では例外が認められるケースもあります。日雇派遣の例外業務としては、ソフトウエア開発や機械設計、事務用機器操作などの18業務が定められています。31日未満の派遣期間で派遣社員を雇う場合は、対象業務に該当していることを確認しましょう。
ポイント6 離職後1年以内の派遣労働禁止
離職後1年以内の派遣労働禁止とは、労働者の雇用待遇や賃金を守る目的から、派遣先企業を退職した労働者を1年以内に派遣社員として受け入れることを禁止するルールです。
派遣先は、当該派遣先を離職後1年以内の者を、派遣労働者として受け入れてはいけません(労働者派遣法第40条)。そして、 派遣元事業主は、派遣先を離職した後1年を経過しない労働者を派遣労働者として当該派遣先へ派遣する行為も禁止されています(労働者派遣法第35条)。
労働者派遣法を理解したうえで派遣社員を活用しましょう
労働者派遣法の概要や歴史、派遣社員を雇用するうえで注意すべきポイントを紹介しました。
派遣法は、これまで何度も法改正されており、今後も適宜改正されることが予想されます。派遣社員の活用を検討している企業は、最新の動向や情報を常にキャッチアップすることが重要です。
派遣社員は、人材不足が深刻化する製造業において重要な労働力であり、今や欠かせない存在となっています。人材派遣サービスを効果的に活用してビジネス拡大につなげるためにも、信頼できる会社を選びましょう。
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