協働ロボットとは|メーカーの動向と導入事例・市場シェア
大型の生産ラインでなければ導入が難しい産業用ロボットとは異なり、設置場所を問わず、変種変量生産にも柔軟に対応しやすい協働ロボットが注目を集めています。協働ロボットは直感的な操作でプログラミングができるなど、ロボットに不慣れでプログラミングの知識がない人でもティーチングを行いやすくなっていることが特徴です。
協働ロボットとは何か、導入のメリットなどを解説したうえで、導入事例や主要メーカーの動き、市場情勢などを紹介していきます。
- 協働ロボットとは、安全柵なしで人間と協働作業を行うロボットのこと
- 作業者と同じ空間での協働作業が可能で、変種変量生産に対応
- 取り扱いメーカーの増加による価格ダウンに伴い、市場は拡大中
目次
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協働ロボットとは
協働ロボットとは、安全柵なしで人間と協働作業を行うロボットです。技術の進歩と法改正によって、協働ロボットの導入が進んでいます。
これまでの産業用ロボットとの違い
従来の産業用ロボットは安全を確保するための柵が必要であったのに対して、協働ロボットは柵が不要で、作業者と同じ空間での協働作業が可能な点が大きな違いです。また、産業用ロボットは同品種の大量生産に用いられることが中心ですが、協働ロボットは変種変量生産に柔軟に対応することができます。
協働ロボットが注目されている背景
協働ロボットが注目され、中小企業でも導入が進んでいるのは、主に次の3つの背景によるものです。
- 安全性の向上(80W規制の緩和)
- 直感的な操作が可能になった
- インテグレーションの容易さ
産業用ロボットの利用にあたっては柵を設置するという法規制がありました。しかし、2013年の規制緩和によって、「国際標準化機構(ISO)の定める産業用ロボットの規格に準じた措置を講じる」などの条件を満たすことで、柵を設置せずに作業者と同じ空間で作業を行うことが可能となっています。また、リスク評価法が整備されるとともに、ロボットメーカーの安全性を確保するための技術も向上しました。
さらに、従来の産業用ロボットはプログラミングや周辺機器の設置といったインテグレーションの作業負担が導入障壁となっていましたが、技術革新によってこの手間が軽減されています。
協働ロボットはタブレット端末や直接アームを操作するダイレクトティーチングなど、直感的な操作が可能になったことで、ロボット操作に不慣れな作業者でも取り扱いやすくなりました。
協働ロボットのメリットと課題
製造現場への協働ロボットの導入には、次に挙げるメリットや課題があります。
- 製品品質の均一化
- 生産性向上と人件費削減
- ティーチング人材の確保が不可欠
人による作業では、作業者の熟練度や癖などの属人性によって、品質のバラツキが多かれ少なかれ生じてしまいます。一方協働ロボットによる作業は作業精度が高く、製品品質が均一化されることがメリットです。
また、従来は人間が行っていた作業を協働ロボットが代替することによって、作業スピードが上がるとともに、作業者を別の業務に充てられることから、生産性向上と人件費削減にもつながります。
一方で、協働ロボットの導入にはティーチングと呼ばれる、ロボットの手であるマニピュレータの動作を設定するためのプログラミング作業が不可欠です。こうした作業負担は従来のロボットと比較して軽減されていますが、ゼロになったわけではありません。ティーチングができる新たな人材を雇用する、あるいは育成するなど、人材の確保は引き続きの課題として残っています。
協働ロボットの導入事例
協働ロボットの導入によって実際にどのような効果が生まれているのか、導入事例を紹介します。
- タカゾノ:省力化と生産性の向上に貢献
- タカギベーカリー:省人化とラベル貼付ミスの削減
- 日本ハムファクトリー:省人化と肉体労働の削減を実現
※事例出典:一般社団法人 日本ロボット工業会「ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック」
タカゾノ:省力化と生産性の向上に貢献
医療用分包機の製造を手掛けるタカゾノでは、協働ロボットとパレットストレージなどを導入。これまでは製品の仕分けや積み込みを人の手で行っていましたが、コンベヤーで自動仕分けをして、協働ロボットが製品のピッキングを行い、パレットステージによって移動して積み分けるというシステムを構築しました。
協働ロボット導入のきっかけ
医療用分包機のニーズの増加に応えるため、二交代制を導入したところ、早朝や深夜の人材確保が課題となりました。また、作業者の肉体的負担も増加しました。
協働ロボット導入効果
協働ロボットやパレットストレージなどの導入によって、製品の仕分けや積み込みを行う作業者は6名から4名に削減され、肉体的負担が軽減されるとともに、生産性も向上しました。
タカギベーカリー:省人化とラベル貼付ミスの削減
タカギベーカリーでは、ラベル貼付作業の工程に協働ロボットとパラレルリンクロボットを導入。消費期限ラベルの貼付をハンドラベラーによる手作業でやる体制から、協働ロボットがパン箱を渡して、パラレルリンクロボットが箱単位でラベルを貼り、協働ロボットがパン箱を積むというライン化を実現しています。
協働ロボット導入のきっかけ
冷凍製品の解凍後の消費期限ラベル貼付作業をハンドラベラーによる手作業で実施していましたが、深夜作業になるため、人材確保が困難な状況でした。また、複数の作業者が貼付作業を行うことで貼付ミスが発生し、取引先から指摘を受けるケースがあることも課題でした。
協働ロボット導入効果
協働ロボットとパラレルリンクロボットの導入によって、作業者を5名から2名に削減するとともに、ラベルの貼付ミスも防げるようになりました。
日本ハムファクトリー:省人化と肉体労働の削減を実現
日本ハムファクトリーでは、ハム・ソーセージギフト製品の包装工程で、包装機への投入を行う工程に協働ロボットを導入しました。作業者2名がコンベヤーに検品した製品を投入すると、協働ロボットが包装機に投入し、作業者1名が検品を行うという流れです。
協働ロボット導入のきっかけ
ハム・ソーセージ業界はお中元・お歳暮シーズンの繁忙期と閑散期の差が大きく、繁忙期に合わせて人材を確保しようとしても人気がなく、人材の確保が難しい状況でした。
協働ロボット導入効果
協働ロボットの導入によって作業者が5人から3人に削減できるなど省人化が図れ、肉体労働の削減につながりました。
拡大する協働ロボット市場と主要メーカー
協働ロボットは市場規模が拡大傾向にあります。コロナ禍による自動化ニーズも追い風となり、主要メーカーの競争が激化しています。
2030年の協働ロボット市場は出荷金額2,000億円超えの見通し
矢野経済研究所によると、2019年の協働ロボットの市場規模は、メーカー出荷金額で1,000億7,800万円と推計しています。そして、右肩上がりに市場規模は拡大し、2030年には2,230億8,200万円と、2,000億円を超えることを予測しました。
協働ロボットは生産ラインのレイアウトや工程の変更に柔軟に対応しやすいことから、昨今、求められている多品種少量生産や変種変量生産に活用できることが、その理由として挙げられます。
協働ロボットの本体価格は下落へ向かう
協働ロボットの市場規模の拡大が見込まれる一方で、矢野経済研究所では、2030年の協働ロボットの本体価格は2020年と比較して3割程度下落していくと予測しています。
協働ロボットにはIoTやAIなどの新しい技術が取り入れられ、製造業の中でも導入する業種が広がっていくことが見込まれています。また、協働ロボットを取り扱うメーカーも増加したことで、関連部品のコスト削減が図れるためです。
協働ロボット主要メーカーの動向
協働ロボットの世界シェア1位はユニバーサルロボットですが、日本企業も多くのメーカーが展開しています。
ユニバーサルロボット:世界市場シェアNo.1
デンマークのユニバーサルロボットは、2005年に創業した協働ロボットの世界市場シェアNO.1のメーカー。世界50カ国以上で導入され、最近ではエレクトロニクス分野での受注が増加傾向にあり、医薬品や化粧品の分野でも活用されています。軽量な製品の組み立てのほか、パッケージングや荷積みなどの工程に利用されるケースが目立ちます。
ユニバーサルロボットの協働ロボットはセットアップが迅速に完了できるのが特徴で、開梱から設置、最初の作業のプログラミングまでが1時間でできます。
主力商品はUR協働ロボットeシリーズで、協働ロボットは小型タイプが多いですが、UR16eは可搬重量16kgと重量物にも対応しています。
ファナック:ロボットの未導入分野向けの製品を展開
ファナックは1972年に創業し、本社を富士山の麓の山梨県忍野村に置いています。協働ロボットや産業用ロボットのほか、CNCやサーボメーター、レーザ発振器などを手掛けています。
主力商品のCRシリーズは、産業用ロボットを導入している自動車メーカーなどに向けた製品。衝撃を吸収するためソフトカバーで覆われているのが特徴で、CR-35iAは可搬重量35kgです。
また、ロボットを使い慣れていない分野向けのCRXシリーズも展開。コロナ禍による生産の自動化ニーズの高まりから受注が好調で、生産体制を強化しています。
オムロン:パッケージング化による差別化を図る日系大手
オムロンは1933年に創業し、京都市に本社を置いています。オムロンは制御機器事業や電子部品事業、パワーコンディショナーや蓄エネ製品などの社会システム事業、体温計や体重組成系などのヘルスケア事業を手掛け、世界120の国や地域で商品を展開しています。
オムロンは協働ロボットを協調ロボットとして展開。例えばセンサーなど他のソリューションを組み合わせて、パッケージング化して提供するのが特徴です。
主力商品のTMシリーズは高解像度カメラを搭載し、バーコードやQRコードなど読み取りのほか、カラー識別やOCRといった機能もあります。カメラを利用する作業での立ち上げ時間が短く、ロボットアームを操作することでプログラムを作成するダイレクトティーチングにも対応しています。
安川電機:日本初の産業用ロボットメーカー
安川電機は1915年創業の老舗企業で北九州市に本社があります。安川電機は1977年に産業用ロボットを日本で初めて販売した企業で、サーボメーターやインバータなども手掛け、メカトロニクスに強みを持っています。
MOTOMAN-HCシリーズは指や手が挟まれにくいように配慮された構造で、ダイレクトティーチボタンによって簡単に操作できるため、ロボットに不慣れな作業者でも取り扱いしやすいのが特徴です。台車と組み合わせたハンドキャリータイプは生産ラインのレイアウト変更に対応しやすいという利点があります。
三菱電機:2020年に協働ロボットに参入した総合家電メーカー
三菱電機は重電システムや産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイス、家電を手掛ける総合電機メーカーで、1921年に創業しました。
三菱電機は2019年に「2019国際ロボット展(iREX2019)」で協働ロボットのMELFA ASSISTA(メルファアシスタ)を参考出展した後、2020年5月に発売しました。MELFA ASSISTAはロボットアームの上部に操作ボタンを装備し、ダイレクトティーチングを行うことができます。専用エンジニアリングツールによって、タブレットの画面操作だけでプログラミングを行うことも可能です。また、ロボットアームのLEDライトで稼働状況を把握することができるなど、安全性にも配慮されています。
まとめ
現場の省人化やヒューマンエラーの防止、生産性の向上などの効果が期待できると注目を集める協働ロボット。市場規模も拡大傾向にあり、今後も導入が進んでいくことが見込まれています。
ただし、協働ロボットはティーチングが従来よりも簡単に行えるようになったとはいえ、担当する人材の確保は引き続きの課題として残ります。専門知識を有する人材の雇用や育成、あるいはアウトソーシングといった施策が求められるでしょう。
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