若手社員を定着させる育成のポイント|人材を育てる重要性や課題とは
人手不足はさまざまな業種で起きている現象ですが、製造業においては「人材の高齢化」と「若手社員の離職」が喫緊の課題です。
2024年版「ものづくり白書」によると、製造業で働く34歳以下の若年者は2023年には259万人で、2002年の384万人に比べて125万人減少しています。
【出典】2024版ものづくり白書|経済産業省
その一方で増加傾向にあるのが高齢社員です。製造業で働いている400名に取ったアンケート調査でも、年齢についての最も多い回答が50代であり、次いで40代、30代と続きます。
このことから、製造業では10~20代の若手社員が少なく、人材が高齢化していることが見て取れます。
また、若手社員の離職率が高いことも見過ごせません。製造業に限った話ではありませんが、新規学卒者のおよそ3割が3年以内に離職することからも、若手社員が定着しづらいとがわかります。
人材の高齢化と若手社員の離職は、人手不足だけでなく、技能継承が欠かせない製造業においては企業存続にかかわる問題です。
そこで本記事では、独自に調査したアンケート結果を基に、若手社員が働くうえで重視している点を紐解きながら、若手社員の育成において重要なポイントを解説します。製造業の人事担当者の方はぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
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目次
製造業において若手社員の育成が重要な理由
人材に関係する課題の中でも、若手社員の育成が重視される理由は何でしょうか。
人材定着のため
実は、若手社員の定着率を高める対策の一つとして、人材育成があります。
日研トータルソーシングの調査によると、社員研修などの育成面に力を入れることで平均5%〜10%定着率が改善したというデータがあります。
先述のとおり、製造業では若手世代の働き手が減っています。これを改善するために大量の人材を採用しても、すぐに辞めてしまうのであれば意味がありません。
採用した人材へ研修などを行うことで、成長を実感できたり、職場への安心感が生まれたりと、人が定着しやすい環境が整っていくと言えます。
早期の戦力化のため
若手育成が重要なもう一つの理由は、早期戦力化にあります。人材育成や社員の自己啓発に力を入れることで、モチベーションの向上はもちろん、若手社員一人ひとりのスキルを底上げすることができます。
ものづくりの現場では、顧客満足度を向上させるために高い品質や技術水準を維持するだけでなく、一日の生産ノルマを達成するだけの作業効率も重要です。若手育成によって新入社員が早期から活躍してくれれば、経営面にとってもメリットがあるのです。
製造業における若手社員育成のポイント
若手を育成するためには、まず若手社員が働き続けたいと思える環境を構築する必要があります。
それでは、若手が求めているのはどのような職場なのでしょうか?以下のグラフは現在の職場で満足している点を選択してもらった結果です。
この調査結果からは、10~20代の社員は「職場の雰囲気が良い」「立地が良い」「福利厚生が充実している」「給与水準が良い」「労働環境が良い」といった点に満足していることがわかります。良好な土壌があってこそ人が育つ一方で、雰囲気や立地、設備、制度などの職場環境が良いことはあくまで前提条件です。
重要なのは+αの部分、つまり「仕事にやりがいを感じる」「スキルアップを実感している」などもかかせません。
ここからは、「職場の雰囲気が良い」「仕事にやりがいを感じる」といった若手社員が働き続けたいと思える環境を作るための4つのポイントを解説していきます。
上司と部下の信頼関係を構築する
人材育成の問題として、仕事を教えてもすぐに辞めてしまう点が挙げられます。アンケート調査からもわかるとおり、職場の雰囲気の良さは若者を定着させるために欠かせないポイントです。したがって、定期的に1on1面談を設ける、メンター制度を活用するなどして、定期的にコミュニケーションを取れる体制を整えるようにしましょう。
悩みを打ち明けやすく、気軽に相談できる関係を築くことで、働きやすい職場環境を醸成できます。早期の離職防止につながれば、人材育成にも効果が見られるでしょう。
適材適所で人材を配置する
現在の仕事について不満を感じている点という質問に対して、「業務内容が面白くない」と回答した10~20代の割合がほかの年代よりも高くなりました。
この結果から、単純作業やスキルアップが望めない職場環境だと不満につながりやすいことがわかります。
そのため、一人ひとりの特性や強みに合った業務を割り振ることが大切です。仕事に対してやりがいを持てれば、受け身ではなく主体性を発揮しながら業務に当たることができます。ミスマッチや希望のキャリアとの齟齬がないか、面談などで定期的に確認するとよいでしょう。
社内の研修や育成カリキュラムを整備する
社員がスキルアップできない環境に不安を抱くことはアンケート調査のとおりです。AIや自動化といった技術の進歩は目覚ましく、「将来、AIや機械に取って代わられるのでは」という不安感も影響していると考えられます。
ビジネスマナーなどの新入社員研修だけでなく、技術やマネジメント系の研修や社内の昇級試験などを整備し、スキルアップしていることを体感できる体制を整えるとよいでしょう。体系的な研修プログラムの整備や明確なキャリアプランを示せば、社員は自身の成長を感じられ、不安感を払拭できます。
適切な目標設定・評価を行う
人事評価制度を導入する場合には、努力すれば達成できる適切なレベルの目標設定を行い、透明性の高い制度で成果を評価することが大切です。高すぎる目標設定や、評価軸が不透明だと、モチベーションは低下しやすくなります。社員自身の傾向や志向性に合わせて目標を設定し、進捗を適宜フィードバックするようにしましょう。
これら4つのポイントをより詳しく解説したホワイトペーパーがあります。製造業に従事している、または製造業への就職を希望している400名にアンケートを取り、独自に調査した資料です。貴社の人材定着にお役立てください。
製造業における若手社員育成の課題
若手社員の育成が重要だとは理解していても、社内での育成がなかなか進まない現状もあるでしょう。ここでは、製造業において若手育成を阻む課題を整理します。
指導のためのリソースが不足している
育成で問題となるのが、「部下を育成するような時間がない」という点です。これは、人手不足によって育成担当者である中堅社員や管理職がコア業務から離れられず、後輩を指導する時間を十分に取れないために起きます。
カリキュラムを考える、研修内容を整備する、指導する、フィードバックをするなど、人材育成のためにやることは多岐にわたります。すべての研修計画を自社のリソースだけで行うと、どこかで無理が生じることもあるでしょう。
育成カリキュラムが複雑になっている
技術の進化や業界の変化に伴い、研修のカリキュラムも変わり続ける必要があります。しかし、仕事内容も高度化していくことから、教える側の負担も増していきます。たとえば、半導体製造では、半導体そのものの構造はもちろん、複数ある半導体製造プロセスを正しく把握しなければなりません。
その一方で、高価な半導体製造装置を取り揃えている学校は少ないため、入社後にOJTで一から学ぶ必要があります。このような事情から製造業界ではeラーニングといった教材だけで学習するのは難しく、実際に機械を触りながら経験する必要があるため、教育する側の負担が増すのです。
若手社員の育成に取り組み企業競争力を上げるには
アンケート調査の結果から、若手世代がどのような点に満足・不満を感じているかを紐解き、若手社員の育成で重要なポイントを整理してきました。
育成においては職場環境を整備しつつ、スキルアップを感じられるような方針を定めることが大切です。とはいえ、製造業では育成担当者のリソースがなく、カリキュラムも複雑化していることから、育成が間に合っていない企業も少なくありません。
「リソースが不足している」「研修のノウハウがない」などの課題は、日研トータルソーシングが解決いたします。日研トータルソーシングは自社研修施設を有しており、生産技術や設備保全といった専門技術の習得を目指す高度な研修を実施しています。人材育成や人手不足に課題を感じる企業のご担当者様は、以下の資料をご覧ください。