2024年製造業の就労ニーズ白書|若手が定着する職場を作るには
製造業を取り巻く環境は、市場ニーズの多様化や生産コストの増加、DX導入の遅れなど、さまざまな課題で溢れています。そのなかでも特に深刻なのが、従業員の高齢化や離職率の増加による「人材不足」です。
製造業界では、新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに一時的に就業者数が増えたものの、依然として慢性的な不足状態が続いています。そのため、求職者が就業先に求めるものを理解し、人材の採用・定着に努めることが急務でしょう。
本記事では、製造業従事者や製造業への就職を検討している人材を対象に行った日研トータルソーシングのアンケート結果に基づき、求職者が就業先を選ぶ際に重要視するポイントや、製造業の企業として取るべき対策を詳しく解説します。
この記事でわかること
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目次
製造業で働く人が求めていることとは?
製造業の人手不足は、特に中小企業において深刻化しています。
『2024年版 ものづくり白書』によると、製造業の就業者数は、2022年度は1,044万人、2023年度は1,055万人に増加しています。
ところが、中小企業における産業別従業員数過不足DIを見てみると、2020年に新型コロナウイルス感染拡大による影響を受けて一時的ながらわずかに過剰に転じたものの、それ以降は不足状態が続きました。最新の調査結果である2023年は「-20.4」と、依然として深刻な人手不足の状況となっています。
人手不足に陥って企業の競争力が低下してしまうと、品質を担保した製品をこれまでのペースで製造することができず、生産量の低下や生産ラインの縮小による売上減少にもつながります。つまり、製造業における人手不足は、企業として早急に対応すべき課題と言えるのです。
この課題への解決策を探るために、日研トータルソーシングでは、製造業の就業者が何を求めているかを調査しました。就業者が就職先や仕事内容に求めるものは時代によって大きく変わるものです。人材不足解消を目指して人材定着を図るためには、製造業で実際に働く人の声に耳を傾け、より良い職場環境を整備していくことが重要と言えます。
日研トータルソーシングが実施した「製造業の就労ニーズ調査」について
日研トータルソーシングでは、製造業における就業意向を調査すべく、製造業従事者や製造業への就職・転職を希望している人材、計400名を対象にアンケートを実施しました。
*調査概要
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具体的には、製造業従事者の仕事や職場に対する満足度をはじめ、製造業への就職・転職先を選ぶ際に重視しているポイント、さらには、働くうえで重視するポイントなどを調査し、アンケート結果から製造業の企業が取るべき対応や対策を検討しました。
製造業の就労ニーズ調査でわかったこと① 職場への満足度
まず、「いまの会社や工場で働き続けたいと思いますか?」という質問に対して、「そう思う」が51.2%(昨年:54.7% )、「そう思わない」が48.7%(昨年:45.3%)という回答を得ました。現在の職場に満足しており、このまま働き続けたいという意向が多少優勢であることがわかります。
一方で、従業員の年代別に見てみると、若手ほど現在の職場に満足していない傾向にあります。10代、20代の従業員においては、半数以上が働き続けたいと思わないという意見であり、転職意向を持っている人材が優勢です。
続いて、「現在の仕事へ不満を感じていること」を調査した結果、「給与水準」や「労働環境」、「業務内容」に対して不満があることがわかりました。
具体的には、次のような不満の声が寄せられています。
【現在の仕事への不満の声】
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これらの声から、不満の多くが単調でつまらない業務内容や業務量のストレスに関わることだとわかります。企業として、こういった従業員たちのニーズを正確に把握しておかなければ、モチベーションの低下や退職者の増加といった事態となりかねません。
製造業の就労ニーズ調査でわかったこと② 働くうえで重視するポイント
「就労形態における譲れない条件はありますか?」という質問に対しては、正社員志向を持つ人の割合は64.5%と、昨年の調査結果の52%を大きく上回る結果となりました。特に、30~50代の正社員志向が高い傾向にあります。
ただし、「契約社員や派遣社員でも構わない」と回答した人も全体の35.5%と、一定の割合で存在します。
政府が推進する働き方改革によって働き方の多様化が進み、必ずしも正社員にこだわらない層も増えたことが大きな要因と言えるでしょう。特に、若い世代は、正社員にこだわらず、非正規雇用者でも問題ないと考える傾向が強いようです。
最近の製造業においては、正社員に比べて人件費を調整しやすい契約社員、派遣社員の採用を検討する企業も増えています。自社にとって最適な正社員と非正規雇用者の割合を検討しながら、人材の流動化や技術の継承問題への対策を検討していきましょう。
続いて製造業への就職や転職先を選ぶ際に、最も重要視されているポイントについての調査結果です。就職や転職時に最も重要視されているのは、2023年の結果と変わらず「職場の雰囲気が良好で、トラブルの少ない円滑な人間関係を望める」という点でした。
一方で、特に注目したいのは、40~50代のベテラン従業員たちが転職で重視するのが「今後の安定や給与アップにつながるスキルの獲得」であることです。なかでも、50代はどの世代よりも高い「19.5%」もの人たちがスキルアップを望んでいます。
この傾向から、現在の20~30代のような若い世代においても、将来的に安定した生活を求めてスキルアップを望み、転職を検討するようになる可能性が示唆されています。スキルアップできる環境の整備も早いタイミングで進められるとよいでしょう。
製造業の就労ニーズ調査から考える企業が取るべき対応
日本国内の製造業を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しています。製造業DXがなかなか進まないことによる自動化の遅れや業務の属人化による技術継承問題、人件費や原材料価格の高騰など、さまざまな課題が挙げられますが、なかでも「人材不足解消」は企業の存続や成長には欠かせない要素です。
人手不足を解消する重要なポイントとして、若手人材を増やすことが挙げられます。しかし、現在の日本では若手人材の数自体が減少しています。2002年の34歳以下就業者数が32.6万人なのに対し、2023年は25.9万人に減少しています。さらに製造業においては、34歳以下の就業者数の割合が2002年と比較し、6.9%減少しており、若手人材の獲得競争が激化しています。
スキルや経験の豊富な40〜50代の中堅社員は65歳前後で定年を迎えるため、若手人材が少ないままでは、20年後には事業の継続がままならなくなる恐れもあります。
若手人材を定着させるために、若手世代が働きたいと思える職場環境を作ることが急務と言えるでしょう。
「現在の職場で満足していること」という質問に対しては、多くの人が「職場の雰囲気が良い」「立地が良い」「業務内容にやりがいを感じる」「労働環境が良い」などと回答しました。
企業として、従業員が働きやすいと感じる職場環境を整備することは必須です。また、仕事に対してやりがいや面白みを感じられるように、従業員のスキルアップ制度や教育体制を整えることも重要です。さらに、従業員に長く働いてもらうためにも、誰もが納得できる給与体系や人事評価制度を整えていく必要もあります。
具体的にどのような施策を実施すべきかは、企業の実態によって大きく異なります。日研トータルソーシングのホームページでは、弊社サービスのご活用事例や派遣人材の採用のコツなど、知って役立つ情報を盛り込んだホワイトペーパーを公開しています。
無料でダウンロードできますので、慢性的な人材不足にお悩みの製造業の企業様は、ぜひ参考にしてください。
製造業の就労ニーズ白書を参考に慢性的な人材不足を解消しよう
製造業における人手不足は年々深刻化しています。特に中小企業では、人材確保や人材定着率の改善に向けた取り組みが必須です。
製造業における人材不足を解消するためには、従業員の職場への「満足度」や「働くうえで重視するポイント」などのニーズを理解しながら、企業として取るべき対応について考える必要があります。
人材不足の解消に向けて、製造業企業としてできる具体的な対策は、次のとおりです。
- 社内においてキャリアアップ制度や教育体制を整備する
- キャリアサポート体制やスキルアップ支援が充実したパートナー企業と連携する
- 人材派遣会社に専門教育を委託する
将来的に安定して事業を継続できるよう、自社に適した施策を講じていきましょう。
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