派遣社員を受け入れるまでの流れは?必要な準備や注意点
人材派遣サービスを利用する場合、派遣先企業は派遣社員を受け入れるための事前準備が必要になります。特に、業務内容の整理や指揮命令系統の明確化などは、派遣社員がスムーズに業務に当たるために欠かせない事項です。
とはいえ、派遣サービスを利用するのが初めての場合や、ノウハウがない場合には「何をどう準備すればよいかわからない」と感じるのではないでしょうか?
そこで本記事では、派遣社員を受け入れるまでの流れ、必要な準備内容、注意点などについて解説します。
この記事でわかること
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目次
派遣社員を受け入れるまでの流れ
派遣社員を自社に受け入れるまでには複数のステップがあります。ここでは以下の4ステップに整理して解説します。
Step1.派遣会社に人材の紹介を依頼する
人材が必要になった時点で、どのような人材が必要か明確にし、派遣会社に紹介を依頼します。派遣社員が必要な理由や業務内容、求める条件(スキル、勤務時間、期間など)を的確に伝えましょう。
Step2.派遣会社と打ち合わせする
求める条件を伝えたあとは、マッチする人材を派遣会社に選定してもらいます。派遣社員からの希望があれば顔合わせや職場見学を行う場合もありますが、派遣先による事前面接や履歴書の送付請求などは禁止されています。
職場見学の際に派遣先が説明できる事項は、以下のとおりです。
・業務の具体的な内容 ・必要な業務能力 ・社員食堂や休憩室などの職場環境 ・人員や社員構成 ・出退勤手続きの方法 ・服務規律 ・福利厚生等 |
Step3.契約を締結する
派遣社員の就業が決まったら、派遣先は派遣会社と労働者派遣契約(個別契約)を締結しなければなりません。契約内容としては以下のような事項を定めます。
・従事する業務内容 ・従事する事業所の名称と所在地、派遣就業する場所と組織単位 ・指揮命令者の氏名、部署、役職 ・派遣の期間と就業日 ・就業の開始時間と終了時間、休憩時間 ・安全衛生に関する事項 など 【参考】第7 労働者派遣契約|厚生労働省 |
また、労働者派遣契約を締結する際、派遣先は事業所単位の派遣期間の制限について、抵触日がいつになるかを派遣会社に通知しなければなりません。
Step4.派遣社員を受け入れる
契約を締結したら、社内周知を行い、受け入れの準備を行います。派遣社員の初出勤までにデスクやパソコン、マニュアルなど、業務に必要な準備を整えておきましょう。
派遣社員の受け入れに必要な準備
派遣社員を受け入れるにあたっては多くの準備があります。必要な準備が漏れないように確認しておきましょう。
派遣社員に任せる業務内容を整理する
まず、派遣社員に依頼する業務内容を具体的に整理しておく必要があります。派遣社員が入社後、すぐに自分の業務を把握できるようにするためです。また、改正労働者派遣法によって同一労働同一賃金が規定されたことも、業務内容の整理が必要な理由の一つです。
同一労働同一賃金とは、派遣社員と正社員の間の不合理な待遇差をなくすためのルールです。このルールに抵触しないために、派遣先は派遣社員に任せる業務内容を十分に考慮しなければなりません。同じ業務内容にもかかわらず正社員と待遇が異なるといったことのないよう、業務の範囲や期待する成果を整理する必要があります。
指揮命令系統を明確にする
派遣先は、派遣社員に業務についての指示を出す指揮命令者を明確にする必要があります。派遣社員との雇用契約は派遣元が締結しますが、実際の業務指示は派遣先が担当します。そのため、派遣社員は指揮命令者の指示の下で業務を行うのです。
指揮命令者は派遣社員の勤怠管理や就労環境の確認も行います。指揮命令者としては、派遣社員の業務内容を理解しており、正確な指示ができる人を任命します。なお、苦情処理などは派遣先責任者の業務です。
業務上必要な申請や備品・機器などを準備する
派遣社員の勤務初日までに業務上必要なPCやデスク、入館証、マニュアルなどを整備しておきましょう。オンラインで業務を行う場合は、アクセス権限や通信設備の確認を事前にしておくと、派遣社員がスムーズに業務を開始できます。
派遣社員を受け入れる際の注意点
派遣社員の受け入れにあたっては、法律に基づいて守らなければならない事項もあります。ここでは注意点を整理しておきます。
派遣契約の範囲内の業務を任せる
契約書に記載のない業務を派遣社員に任せることは、契約違反となります。任せたい業務内容をきちんと整理してから派遣会社に依頼する必要があるのも、これが理由です。ちょっとした書類整理などであっても、契約外の業務はできません。これは派遣法26条によって定められているため、違反した場合には行政指導が入る可能性があります。
派遣社員には禁止されている業務がある
契約書の記載にかかわらず、派遣社員には任せてはならない業務があることも理解しておきましょう。港湾運送業務、建設業務、警備業務、病院・診療所などにおける医療関連業務、弁護士や公認会計士などの士業が該当します。
これらの業務は、専門性が高いため有期雇用に適していなかったり、危険な業務であったりすることを理由として派遣社員の就業が禁止されています。まとめて派遣禁止業務(適用除外業務)といわれており、仮に従事させた場合には罰則が科されることになります。
適用される業種や罰則規定などについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
受け入れ期間には限度がある
派遣社員には、労働者派遣法によって派遣期間の上限が定められています。派遣受入期間の制限には、「事業所単位の期間制限」と「個人単位の期間制限」の2種類あります。
- 事業所単位の期間制限
一つの事業所において、派遣社員を受け入れられる期間は原則として3年までです。派遣先が3年を超えても受け入れを続けたい場合には、派遣先の過半数労働組合等から意見聴取をする必要があります。
- 個人単位の期間制限
一つの部署で同じ派遣社員を受け入れられる期間は、原則として3年までです。この期間を超える場合は契約内容を見直すか、別の部署に異動させるなどの対応が必要です。例えば、設計課でAさんを受け入れた場合、同じ設計課での3年を超えて就業させることはできません。そこで、別の課に異動とすれば、3年を超えても受け入れができます。
派遣の受け入れをスムーズにするには
派遣先には、派遣社員を受け入れる際に、指揮命令系統や依頼する業務内容の明確化など、整備しなければならない事項があります。法律で定められている事項について守らなければならないのはもちろん、派遣社員の受け入れをスムーズにし、気持ちよく働いてもらうためには万全の事前準備が必要です。
この記事内で述べた内容のほかにも、以下のようなポイントに配慮する必要があります。
- 円滑なコミュニケーションの構築
- スキルアップのサポートなど
とはいえ、これらのことを派遣先だけでカバーするのは簡単ではありません。大切なのは、派遣先と派遣社員に対してきめ細かなサポートを行っている派遣会社を活用することです。
定期的な面談による人材管理やスキルアップのサポートが充実しているのが、日研トータルソーシングです。人材不足を感じているけれど、派遣社員の受け入れに多少不安があるという方は、ぜひ以下の資料をご覧ください。