設備保全のあるべき姿とは?3つのポイントや実現する上で必要なこと
製造業において、生産ラインを適切に維持管理するための設備保全は必要不可欠な業務です。しかし、近年では生産設備のオートメーション化やリードタイムの短縮、高度なスキルを持った人材の不足といった問題によって、保全業務に課題を抱える企業も少なくありません。
そこで本記事では、設備保全の基本的な知識を解説するとともに、設備保全のあるべき姿と実現する方法について紹介します。人材不足に課題を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること
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目次
製造業で年々重要度が増す「設備保全」とは?
ここでは、設備保全の意味と重要性について解説します。併せて、設備保全の分類ごとのメリット・デメリットについても紹介します。
設備保全とは
設備保全とは、工場の機械・設備を定期的に点検・修理する業務です。機械設備の機能を正常に保つために行われます。
設備機器は使用していれば必ず劣化します。摩擦があれば徐々に擦り減り、振動があれば緩みが生じ、繰り返し荷重をかければ疲労します。こうした劣化が進行すると本来の機能を発揮できず、製造現場ではチョコ停が頻発したり、突発的な不具合によって生産設備が動かなくなったりするのです。
こうした事態を防ぐために、劣化している部品や通常とは違う動き、または異音がないかを常に確認、必要であれば部品交換や修理といった保全業務を実施します。つまり、工場の機械が安定した状態で安全に稼働するように維持管理を行うのです。
設備保全の重要性
設備保全の重要度は年々増しています。生産設備はオートメーション化が進んだことで複雑化しており、適切な機械保全を実施しなければ安定稼働が成り立たなくなったためです。
また、サプライチェーンの効率化によって製造のリードタイムも短縮しているのが実情です。メーカーは部品在庫をできる限り抱えずに済むように、サプライヤーと呼ばれる中小企業に迅速かつ安定的な部品供給を求めています。そのため、不具合によって生産設備が停止すれば、それだけダウンタイムが長くなり、安定的な部品供給が危うくなるのです。顧客の要求する納期に間に合わせるために、設備保全業務も重要な経営戦略の一つだといえるでしょう。
関連記事:設備保全とは?考え方とスキルの重要性~環境変化により顕在化する課題とは
設備保全の分類
設備保全は、大きく事後保全と予防保全、予知保全の3種類に分けられます。それぞれのメリット・デメリットについて把握しておきましょう。
事後保全
事後保全とは、設備保全において、設備が故障したあとに原因を調査して対策を講じることを指します。たとえば、駆動伝達に使用されるVベルトの場合、完全に切れてしまい、駆動しなくなってから部品交換を行うのが事後保全に当たります。ICチップのように劣化の兆候があまり見られず、ある時突然壊れる部品には、事後保全で対応することが多いといえます。
*メリット
事後保全はコストを抑えられる点がメリットです。部品の寿命が来るまで使いきるため、余計な費用が発生せず、日常点検や定期点検といった保全活動にコストをあまりかけずに済みます。
*デメリット
部品が壊れてから修理対応に当たるため、生産停止のリスクが高まります。また、劣化した状態でも使い続けることになるため、設備が持つ本来の生産力を発揮できない点もデメリットです。
予防保全
予防保全とは、部品の劣化や小さな異常を見逃すことなく適切なメンテナンスを施し、故障を未然に防ぐ保全方法です。前述のVベルトの例であれば、「ベルトに亀裂やキズがないか外観を目視する」「規定以上の厚さがあるかを点検する」といった保全活動が予防保全に当たります。メーカーの指定する寿命が来る前に交換を行うのも予防保全です。
*メリット
部品の劣化が進行する前に交換を行うため、生産ラインにおける突発的なトラブルを回避できます。そのため生産停止や、保全担当者の急な呼び出し、現場作業者の残業が発生しづらい点がメリットです。また、設備の機能が低下しないため、不良品の発生を抑制でき、品質や生産性向上にも貢献します。
*デメリット
予防保全では部品を定期的に交換します。なかには、まだ使えるにもかかわらず交換する部品もあるため、事後保全に比べてコストがかかります。また、日常点検を細部にわたって行わなければならず、保全業務の標準化や日頃からの教育が求められます。
関連記事:予防保全とは?予知保全との違いや目的、メリット・デメリット、IoTとの関係
予知保全
予知保全とは、設備機器の劣化や異常といった予兆を事前に検知し、故障を未然に防ぐ方法です。CBM(Condition Based Maintenance)とも呼ばれ、時間基準で部品交換をする予防保全とは違い、一つひとつの部品の状態に合わせて保守メンテナンスを行います。
*メリット
部品の劣化スピードは使用状態や頻度によって一つひとつ異なります。そのため、予防保全では定期点検の前に部品が使用限界を迎え、設備故障に至る場合もあります。その点、予知保全では故障に至る前に最善のメンテナンスを施すため、安定稼働はもちろん、保全活動の最適化を達成できます。
*デメリット
予知保全の実現のためには、デジタル化によって設備の状態をリアルタイムに監視・記録するソリューションシステムを構築する必要があるため、導入コストがかかります。
設備保全のあるべき姿とは?
それでは、設備保全の理想的な姿とはどのようなものでしょうか。改善を行う際に目標となる、あるべき姿について紹介します。
あるべき姿① 予防保全が適切に行われている
1つ目のあるべき姿とは、すべての機械・設備が定期的に点検されており、事故を未然に防ぐことができている状態です。
予防保全を適切に行うには、保全計画をきちんと立てる必要があります。この際、故障履歴や設備の稼働に関するデータを基に、綿密な保全計画を策定します。保全計画に沿って予防保全を行うことで、常に適切なタイミングでの部品交換を実現できるのです。
あるべき姿② 設備保全に関する知識やノウハウが従業員に定着している
設備保全に関する知識やノウハウが属人化せず、従業員に均等に定着している状態が理想です。給油一つをとっても、多く入れすぎれば漏れの原因になり得るため、適正な量を知っておく必要があります。
従業員に知識やノウハウを定着させるには、保全業務をきちんと標準化し、マニュアルを作成するのが望ましいでしょう。
あるべき姿③ DXが進んでいる
DXによって設備の状態に関するデータを蓄積し、保全に活用できている状態も理想です。マンパワーに頼った保全活動は多くの時間や人材コストがかかるという課題があります。
そのため近年では、設備管理に際して蓄積したデータをAIで分析し、劣化状態を見極めている現場も増えています。つまり、人の手では対応しきれない部分はIT技術でカバーする体制を構築すると、あるべき姿に近づくのです。
設備保全のあるべき姿を実現するために必要なこと
前提として、設備保全にはさまざまな知識が必要とされます。たとえば「設備から異音がする」「電動機に振動が発生している」といった場合に、原因を特定するためには機械を熟知していなければならないためです。
そんななか、近年の技術革新やオートメーション化などによって、設備保全に求められる知識や技術は年々高度化しています。つまり、正しい設備保全を行うには、高度なスキルを持った人材を確保する必要があるのです。
とはいえ、設備保全のエキスパートは一朝一夕では育たないことから、自社で人材を確保しきれない場合も多いでしょう。そこで最近では、自社での人材の育成を続けながら、派遣会社を通して必要な人材を確保する動きも増えています。
設備保全をあるべき姿にするには人材が不可欠
設備保全のあるべき姿を実現するには、「予防保全が適切に行われている」「設備保全業務のノウハウや知識が現場に定着している」「DXが進んでいる」といった条件を達成する必要があります。
なかでも、高度なスキルを持った人材が設備保全の中心を担うことになるのは言うまでもありません。しかし、人材不足によって満足のいく設備保全ができないとお困りの企業担当者の方もいるでしょう。
日研トータルソーシングでは、自社の施設で研修を積んだ設備保全の技術者を即戦力として派遣いたします。また、人材育成のための研修の請負など、課題に合わせたソリューションを提供しています。設備保全の人材に課題を感じている担当者の方は、ぜひ一度お問い合わせください。