派遣会社に支払うマージン率とは?計算方法や比率の相場、費用の内訳
人材派遣サービスを利用する際、企業は派遣スタッフの賃金のほかに、さまざまな費用を派遣会社に支払います。このうち派遣スタッフの賃金以外の費用を「マージン」と呼び、契約に関する総費用に対してマージンが占める割合を「マージン率」といいます。マージンの内訳は派遣会社ごとに異なるため、マージン率は派遣会社を選ぶ基準の一つになります。
人材派遣にかかるコストを最適化するために、派遣先企業はマージン率について正しく理解しなければなりません。
そこで、本記事では、人材派遣契約をする際に知っておくべき「マージン率」と、その計算方法、適切な派遣会社を選ぶポイントなどについて詳しく解説します。人材派遣サービスの活用を検討している企業の担当者の方はぜひ参考にしてください。
派遣会社のマージン率とは?
派遣スタッフを登用する際、派遣先企業はサービスの提供元である派遣元企業に「派遣費用」を支払います。派遣費用は、派遣先企業と派遣元企業双方の合意の下で決定されます。
派遣費用の内訳は、以下のとおりです。
*派遣費用の内訳
派遣費用=派遣スタッフの賃金+諸費用(マージン) |
このように、派遣費用には、登用する派遣スタッフに支払われる賃金だけではなく、諸費用も含まれるのが大きな特徴です。
マージン率は以下の計算式で求められます。
*マージン率の計算式
マージン率=(派遣料金の平均額-派遣スタッフの賃金の平均額)÷派遣料金の平均額×100 |
派遣サービスの利用にかかるコスト管理をするためにも、派遣元会社と契約する前にマージン率を確認することが重要です。
一般的に、派遣元会社のマージン率は20〜50%が相場とされています。厚生労働省が発表した「マージン率等の情報提供について」によると、2018年時点のマージン率は、一般労働者派遣事業者で35.4%、(旧)特定労働者派遣事業者で37.0%でした。
【出典】「派遣会社のマージン率等について」(厚生労働省)
派遣会社へ支払うマージンの主な内訳
実はマージン率が高ければ高いほど、派遣元企業が多くの利益を得ている…というわけではありません。もちろん、マージンには派遣元企業の利益が含まれているものの、社会保険料や福利厚生費、派遣スタッフへの教育訓練費などのコストも含まれており、派遣スタッフが安心・安全に働くための環境づくりにも活用されているのです。
ここでは、派遣元企業に支払うマージンの主な内訳を詳しく紹介しましょう。
社会保険料
社会保険とは、国によって設けられている保険制度のことです。派遣スタッフの社会保険料は、雇用主である派遣元会社が負担します。
一般社団法人日本人材派遣協会が公表している「派遣料金の構造」によると、派遣費用のおよそ10%が、派遣スタッフが加入する社会保険料などに充てられているとわかります。
派遣スタッフの場合は、次の5種類の社会保険の対象となります。労使折半で保険料を支払うため、会社負担分の保険料を派遣元企業が負担します。
社会保険の種類 |
内容 |
分類 |
健康保険 |
病気やケガをした際に、医療費の一部を補助する保険制度 |
狭義の社会保険 |
厚生年金保険 |
老後の生活を支えるために、退職後に年金として支給する保険制度 |
|
労災保険 |
業務中の事故や職業病による被害を保証する保険制度 |
|
雇用保険 |
失業時に失業保険が支給され、再就職の支援を行う保険制度 |
労働保険 |
介護保険 |
高齢者が必要とする介護サービスを提供できるようサポートする保険制度 |
それぞれの保険の加入条件は、厚生労働省のホームページをご確認ください。
福利厚生費
福利厚生費とは、派遣スタッフとして働く労働者に対して適切な福利厚生を提供するために必要な費用のことです。
福利厚生費は、主に次のような費用に充てられます。
- 慶弔見舞金
- 派遣スタッフの有給休暇費用
- 健康診断の費用など
慶弔見舞金とは、労働者やその家族の祝い事や不幸に対して、企業が支給するものです。具体的な慶弔見舞金の種類には、次のようなものがあります。
- 結婚祝い金
- 出産祝い金
- 死亡弔慰金
- 傷病見舞金
- 災害見舞金など
また、派遣スタッフであっても、条件を満たせば有給休暇を取得できます。年次有給休暇は労働基準法第39条で定められた権利です。派遣スタッフが有給休暇を取得する際の費用は、派遣先企業ではなく派遣元企業が捻出しなければなりません。そのため、マージン費用に有給休暇取得のためのコストが含まれているケースがあります。
そのほかにも、派遣スタッフが心身ともに健康な状態で働けるように健康診断を実施している派遣元企業も存在します。
これらの福利厚生は、法律上企業に義務付けられているものではありません。しかし、多くの企業が支給していることからも、必要経費として捉える必要があるでしょう。
教育訓練費
教育訓練費とは、派遣スタッフに対して研修などの実施するための費用を指します。派遣スタッフがスキルアップして活躍の場を増やすための必要コストです。
近年では、派遣スタッフから正社員としてキャリアアップしたいと希望する方も多く存在しており、派遣元企業での教育訓練を充実させることで、派遣先企業の慢性的な人材不足の解消にも大きく貢献すると期待されています。
派遣会社の運営費
派遣会社の運営費とは、文字通り「派遣元企業が事業を運営するためにかかる経費」のことです。オフィスを維持するための家賃や光熱費といったランニングコストに加え、派遣元企業で働く社員の人件費などが含まれます。
営業利益
営業利益とは、社会保険料や福利厚生費、教育訓練費、運営費などを除いた、派遣元企業の利益部分のことです。日本人材派遣協会の調査結果によると、派遣元企業の営業利益の平均は、派遣費用の1.2%相当でした。
マージン率の高い派遣会社は避けたほうがよい……?
マージン率は、2012年に施行された改正労働者派遣法によって、派遣元企業に対して公開が義務付けられています。この法改正は、労働者や派遣先企業が適切な派遣元企業を選択できるようにする目的で実施されました。
一方でマージン率を制限する法律はないため、契約する派遣元企業によってマージン率が大きく異なる点にも注意しなければなりません。
派遣スタッフとして働きたいと考える労働者や人材派遣サービスを利用したいと検討している企業は、派遣元企業のマージン率、賃金の平均水準、教育訓練に関する取り組み状況などを確認してから利用する企業を選択する必要があります。
マージン率の低さだけに着目して人材派遣サービスを選ぶのは大変危険です。マージンが実際にどのような用途に活用されているかを確認したうえで、適した人材派遣サービスを選びましょう。
【出典】「派遣会社のマージン率等について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00013.html
派遣サービスを利用する際は、マージン率と用途に着目しよう
派遣先企業が派遣元企業に支払う派遣費用のうち、派遣スタッフに支払われる賃金部分を除いた残額が「マージン」、そしてマージンが派遣費用全体に占める割合を「マージン率」といいます。
マージンの内訳としては、社会保険料や福利厚生費、教育訓練費、運営費、派遣元企業の営業利益などがあります。マージン率が低ければ低コストで人材派遣サービスを利用できるように感じますが、一概にそうとはいえません。
人材派遣サービスの利用を検討している場合は、マージン率やマージンの内訳など、派遣元企業が公表している情報を参考にしながら、自社に適したな人材派遣サービスを選びましょう。
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