製造業の効率化を進めるには?重視される理由、改善が見えない原因
製造業における効率化とは、業務プロセス全体や各作業にかかる時間的コストを削減することを意味します。
製造業の経営者の中には、業務の効率化は大切であると理解していても、目の前の業務に追われてしまい、なかなか効率化が進まないと悩んでいる方も多いはずです。
そこで本記事では、製造業において業務の効率化を実現するための具体的な方法を詳しく解説します。製造業で効率化が重要視されている理由や、効率化が進まない要因もわかりやすくお伝えするため、ぜひ参考にしてください。
製造業で効率化が重要視されている理由
製造業において業務効率が重要視されている理由としては、主に次の2つが挙げられます。
生産年齢人口が減少している
生産年齢人口とは、生産活動の中心に位置する15〜64歳の人口のことです。労働やビジネスの中核的な担い手であるとともに、社会保障を支える重要な存在であると考えられています。ところが、日本国内の生産年齢人口は、少子高齢化や人口減少の進行に伴い、年々減少しているのです。
内閣府の「人口減少と少子高齢化」によると、2065年の生産年齢人口はおよそ4,500万人になる見通しであるとされています。これは、2020年の生産年齢人口と比較して約2,900万人も減少することを意味します。
とりわけ、製造業における就業者数の減少傾向は顕著であり、深刻な人材不足が懸念されているのです。「製造業=3K(きつい・汚い・危険)」というマイナスイメージを持つ人が多く存在することも、製造業の人材不足に拍車をかけていると考えられるでしょう。
人材不足の状況下で生産ラインを維持するためには、生産効率を高め、従業員一人あたりの生産性を高めていく必要があるのです。
競争が激化している
製造業界で生き残るためには、競合他社に対抗しなければなりません。近年はグローバル化の影響を受け、国内だけでなく、海外の企業との競争も激化しています。
特に海外メーカーは、コストを抑えて安価な製品を製造するケースも少なくありません。グローバル化を進める国内企業においても、すでに効率化に向けた取り組みを進めている企業が多くあります。こうした背景から、高品質でかつ低コストで生産できる製品でなければ、競合企業に太刀打ちできないのです。
効率化を進めて、生産性向上とコスト削減を実現させることは、製造業で生き残っていくために必須といえるでしょう。
製造業で効率化が進まない主な原因とは?
効率化を図るためには、生産性を下げてしまう理由や原因を正確に把握することが重要です。製造業において効率化が進まない主な原因を確認しましょう。
人手が不足している
近年のものづくりの現場では、慢性的な人手不足が深刻化しています。人手不足の状況には、生産年齢人口の減少や終身雇用制度の崩壊など、さまざまな理由が関係していると考えられています。
従業員一人あたりの最適な業務量はある程度決まっているものです。適量を超えて業務過多の状況に陥ると、従業員に大きな負荷がかかってしまい、集中力が下がることでミスが起こりやすくなるため注意が必要です。業務量が適切でないことを理由とする、離職者が増える原因にもなるでしょう。
製造業で効率よく作業を進めるに、まずは適切な人数の従業員を確保することが大切なのです。
作業の標準化ができていない
製造業の効率化を妨げる原因の一つとして、作業の標準化ができていない点も挙げられます。
業務標準化とは、業務内容の認識や作業手順を統一することです。誰が作業しても同レベルの製品ができるようにするためには、作業の標準化が欠かせません。従業員によって作業スピードや正確さにムラが出てしまうと、ノウハウが蓄積されにくいだけでなく、作業を効率的に進めにくくなります。
たとえば、特定の従業員のみが作業内容を把握している「業務の属人化」が起きている職場では、作業の標準化ができていないケースがよく見られます。
他部門との連携が不足している
製造業において効率化が進まない原因には、他部署との連携不足もあります。製造業では、一つの部署だけでなく、複数の部署が関わり合いながら製品を作り上げていくものです。
マーケティング部や製品開発部などでうまく連携が取れていないと、連絡ミスや情報共有不足などが起こるリスクが高まります。製造プロセスに抜けや漏れが生じてしまうと、時間やコストの損失につながるでしょう。
オペレーションや工程管理が不適切
作業のフローや管理に問題がある場合も、効率化が進まない原因となるため注意が必要です。
たとえば、検品や検査といった業務の管理を紙ベースで行っているケースなどは、紙の管理などの手間が多く、効率化が進みにくいといえるでしょう。
スムーズな業務を行うためには、オペレーションや工程管理の効率化も忘れないようにしましょう。
製造業で効率化を進めるための具体的な方法
製造業において、生産性を向上させるために試してほしい具体的な方法は次の3つです。取り組みやすいものから、ぜひ実行してみてください。
5Sを見直す
製造業において効率化を推し進めるためには、5Sの徹底が有効とされています。
5Sは、次の言葉の頭文字から名付けられました。
- 整理(不要なものを把握し、処分する)
- 整頓(必要な機材や材料を必要なときに取り出せるようなルールづくりをする)
- 清掃(ゴミや汚れを掃除し、機材メンテナンスを行う)
- 清潔(常に清潔な職場にすることで、働きやすい環境を整える)
- しつけ(上記4つのSをいつでも実行できるよう、従業員に浸透させる)
5Sを心がけることで、職場環境が整い、無駄の削減につながるのです。道具がなくなったり、異物が混入したりといったトラブルの削減にもつながるでしょう。
5Sの見直しは、初期投資も少なく済み、短期間で効率化の効果を実感しやすい業務改善方法の一つです。まずは整理整頓されていない場所を見つけることから始めましょう。
5Sについて詳しくは以下の記事を確認してください。
ムリ・ムダ・ムラを洗い出す
5Sと併せて「ムリ・ムダ・ムラ」の削減も、業務効率を図るうえで重要な要素です。こちらは「ムリ・ムダ・ムラ」の頭文字を取って「3M」と称されています。
3Mとして、次のような具体例が挙げられます。
- ムリ:従業員や設備が持つ能力以上の作業のこと
- ムダ:不必要な作業や資源の浪費のこと
- ムラ:作業手順が統一されておらず、品質にばらつきがある状態のこと
製造業において「ムリ」が生じると、従業員の長時間労働や設備の過負担が生じてしまうでしょう。また、「ムダ」が生じてしまうと、人件費や材料費、運搬費など、あらゆるコストが増加してしまいます。さらに、「ムラ」があることで品質基準を満たす製品の生産量が減り、顧客満足度の低下につながると考えられます。
このように、業務に3Mがある状態では、従業員の負担やコストの増加に反して品質や生産スピードが不安定になってしまうのです。3Mの原因を特定して排除するためには、感覚で行っている業務を数値化する必要があります。数値化して客観的に分析し、業務の中の3Mを見つけることで、効率化につながるでしょう。
DXを推進する
DXとは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略であり、デジタル技術を活用した業務改善のことです。
製造業におけるDXは、作業用ロボットやAI・IoT技術による業務の自動化、生産管理システムや人事管理システムのようなITツール導入など多岐にわたります。DXを通して、製造過程や製品、サービスなどが総合的に改善されることが期待されています。
ただし、DXの規模によっては、DXを担当する人材の確保や、新たな設備の導入のためのコストが大きくなる可能性があるため、慎重に検討することが重要です。
書類の電子化やクラウドサービスの活用など、ちょっとしたことからDXに取り組めるとよいでしょう。
自社に最適な方法で製造業の効率化を推進しよう
製造業の経営者の中には「日々の業務をこなすのに精一杯で、業務の効率化まで手が回らない」とお悩みの方も多いでしょう。ただ、製造業において効率化を進めると、製造コストや人件費の削減、さらには顧客満足度向上など、さまざまなメリットがもたらされることは事実です。
やるべきことや課題は多岐にわたるものの、すべて同時並行で取り組む必要はありません。本記事で紹介した内容を参考にしながら、自社で対応できるところから取り組んでください。万が一、慢性的な人手不足に陥っている場合は、人材派遣の活用も検討してみましょう。
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