設備総合効率(OEE)とは?計算方法や指標の目安、改善のポイント
設備総合効率(OEE)は、生産設備の効率性を表すための指標です。
自動化が進んだ近年の製造業では、設備に関して評価指標(KPI)を設ける必要性が出てきました。そこで、KPIの一つとして重要視されているのがOEEです。OEEを活用すれば幅広い視点から稼働状況を可視化でき、ロス削減につなげられます。
本記事では、設備総合効率の基本やどのように計算するか、近年の製造業で重要視されている背景などを解説します。併せて設備総合効率の改善方法についても紹介するため、ぜひ参考にしてください。
設備総合効率(OEE)の基本
生産性を評価するKPIにはさまざまなものがありますが、なかでも代表的なKPIが設備総合効率です。製造業で重要視されている背景と併せて、設備総合効率の基本を解説します。
設備総合効率とは
設備総合効率とは、生産設備の効率を表すために使用される指標です。英語の「Overall Equipment Effectiveness」を略して、OEEとも呼ばれています。算出方法は後述しますが、簡単にいえば「生産能力の最大値に対して、良品を生産している時間の割合」を示すものです。
生産設備のパフォーマンスを示す指標としては、ほかに稼働率があります。ただし、稼働率は操業時間に対して設備がどれだけ動いていたかを示すものに過ぎません。これに対して設備総合効率は、「停止ロス」や「性能ロス」、「不良ロス」なども含めることで、実態に近い効率性を表しています。現場の生産力をより具体的に評価したい場合は、設備総合効率のほうが精度が高いといえるでしょう。
設備総合効率が製造業で重要視されている理由
生産性の向上やコスト削減を実現する方法の一つとして、設備の稼働状況を把握してロスを排除することが挙げられます。従来は設備の大まかな稼働時間しか把握できていませんでしたが、近年はIoTやAIの普及に伴うDXにより、設備機器の稼働データを詳細に取得できるようになりました。
このような稼働データを活用して設備総合効率を算出することで、生産プロセスにおける課題を明確にし、さらなる効率化や改善に役立てることができます。設備の稼働効率を詳細に分析し、理想の状態と現状から改善点を見出すことで生産性向上やコスト削減を実現できるのです。
設備総合効率(OEE)の計算式
設備総合効率は、「時間稼働率」「性能稼働率」「良品率」の3つを掛け合わせて算出します。それぞれの意味については以下のとおりです。
・時間稼働率
時間稼働率とは、設備の負荷時間に対して実際に稼働していた時間の割合のことです。たとえば操業時間が9時間で休憩が1時間だった場合、計画上の設備の負荷時間は8時間となります。
8時間のうち、設備故障や段取り替え、立ち上がりなどに合計1時間かかってしまう場合、実際の稼働時間は7時間と計算できます。この場合の時間稼働率は87.5%です。
時間稼働率=(負荷時間-停止時間)÷負荷時間×100 =(8-1)÷8×100 =87.5% |
・性能稼働率
性能稼働率とは、設備の稼働時間に対してどれくらい生産できたかという割合のことです。計算式は以下のとおりです。
生産中はチョコ停や速度低下などで、基準のサイクルタイムよりも長くかかることがあります。製品一つ当たりのサイクルタイムが2分で、生産数が150個、稼働時間7時間(420分)の場合の性能稼働率は約71.4%になります。
性能稼働率=基準サイクルタイム×生産数÷稼働時間×100 =2×150÷420×100 =約71.4% |
・良品率
良品率とは、生産数に対して良品となった製品の割合のことです。150個中、不良品が3個出たら良品率は98%です。
良品率=(生産数-不良数)÷生産数×100 =(150-3)÷150×100 =98% |
以上のそれぞれの割合から設備総合効率を計算すると以下のようになります。
OEE=時間稼働率×性能稼働率×良品率 =0.875×0.714×0.98 =約61.2%(0.6122) |
設備総合効率(OEE)の基準値は?
設備総合効率は、「85%程度」を目標として掲げることが多いようです。ただし、これは設備をほぼ最適な状態で稼働して達成できる数値であり、実際に達成するには設備保全活動に力を入れなければなりません。
また、業種によってOEEの水準は異なるものです。企業によっても生産方式や受注形態などが異なるため、数値を単純に比較することは困難です。自社の状況や目標に応じて、適切なOEEの目標値を設定することが大切だといえます。
設備総合効率(OEE)を改善するためのポイント
設備総合効率は主に「7大ロス」によって低下します。7大ロスとは「故障、段取り・調整、工具交換、立ち上がり、速度低下、空運転・チョコ停、不良・手直し」のことです。ここでは、設備総合効率を改善するためのポイントについて紹介します。
設備データの可視化
7大ロスを排除するためには、設備が理想的に稼働している状態と現状とのギャップを捉える必要があります。そのためには、設備の詳細をデータとして可視化して現状を分析することが重要です。データ化することで、問題の早期発見や迅速な対応がしやすくなります。稼働率や性能の低下を引き起こす要因を特定できれば、設備総合効率を改善できるでしょう。
予知保全の実施
従来の保全方法は、定期的に点検を行う予防保全といわれるものです。しかし、稼働状況は設備ごとに異なるため、メンテナンスを行う前に故障が発生するリスクがありました。これに対して「予知保全」は、設備ごとの稼働状況を監視し、壊れる前にメンテナンスを行うことを指します。生産設備の故障や異常の兆候を察知し、先回りして保守することで、製品の品質低下や生産ラインの停止を防げるのです。
生産プロセスの見直し
製造プロセスや生産ラインを見直すことも、設備総合効率を改善するために効果的です。製造を行う際の動線やオペレーションの無駄を削減できれば、段取り替えや立ち上がりにかかる時間を短縮できる可能性があります。
また、品質管理を徹底することも有効です。不良を多く発生させたり、手直しが多かったりすると、生産性は低下します。ISOといったマネジメントシステムを取り入れ、現場で改善活動を行うことが大切です。
社員教育の強化
適切な設備保全を行うためには、専門的な技能を持った人材が欠かせません。また、品質不良を改善したり、安全な職場環境を整えたりするには、オペレーターをはじめとする社員の高い意識が必要です。したがって、社員教育を強化することが設備総合効率の改善につながります。
トレーニングプログラムやセミナーの実施などを定期的に行い、社員の意識やスキルを高めましょう。社員のスキルが高まることで、生産効率や安全性の向上が期待できます。
専門性の高い人材を活用して設備総合効率を改善しよう
設備の生産能力を評価する設備総合効率は、「時間稼働率」「性能稼働率」「良品率」の3つを掛け合わせたものです。生産プロセスを最適化し、設備総合効率を改善するためには、徹底した品質管理や適切な設備保全、社員教育が重要だといえます。
ただし、設備保全を高いレベルで行える人材を採用・教育するのは簡単ではありません。そこで、専門性の高い外部の人材を活用する方法はいかがでしょうか。
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