ファクトリー・オートメーションとは?製造業における導入のメリットやデメリット
ファクトリー・オートメーション(FA)とは、製造現場における工程を自動化することです。加工・組立・検品・マテハン(運搬)・管理などの各分野の工程を自動化することにより、人件費の削減や高い生産性と品質向上を目指します。
ファクトリー・オートメーションにはメリットがある一方で、導入のための初期費用がかかることやデジタル人材の確保が難しいといったデメリットもあります。
本記事では、ファクトリー・オートメーションの基礎知識や、得られる具体的な効果について解説します。「FAが目下の課題」という製造業関係の方は、ぜひ参考にしてください。
ファクトリー・オートメーション(FA)の基礎知識
まずはファクトリー・オートメーションの基礎知識として、その概要や注目されている理由を探っていきましょう
ファクトリー・オートメーションとは?
ファクトリー・オートメーションとは、工場などの製造現場における工程を自動化することです。
ファクトリー・オートメーションの概念が生まれたのは1950年代ですが、第四次産業革命(インダストリー4.0)といわれる現代においては、従来のFA機器に加えてITシステムやAIも構成要素の1つとなりました。
さて、ファクトリー・オートメーションに活用される技術は多岐にわたりますが、主な対象は「加工」「組立」「検品」「マテハン(運搬)」「管理」における業務です。
以下で、FA機器として導入されている例を見ていきましょう。
- ストッカー
- 搬送機(コンベア式、昇降式、パイプライン式等)
- パーツフィーダー
- 加工機
- 検査機
こうした機器を規模や予算、取り扱う製品の特性に合わせて組み合わせ、システムとして構築するのがファクトリー・オートメーションです。FA機器は、専用に設計されることもあります。
FA機器を取り扱うメーカーは幅広く、2018年にドイツのBosch社が開発した搬送ロボットは代表的なインダストリー4.0の取り組みとして、「use cases Industry 4.0 」で紹介されています。
もちろん日本国内でも、「三菱電機システムサービス」をはじめとする大手企業から中小企業まで、さまざまなメーカーが細やかなニーズに応じたFA機器を開発しています。
また前述の通り、現代の製造現場においては、ITシステムもファクトリー・オートメーションに欠かせません。たとえば「CAD(コンピュータ支援設計)」や「CAM(コンピュータ支援製造)」は、製造システムにおけるITを用いたファクトリー・オートメーションです。
製造現場における基幹システムについても、「ERP(企業資源を一元管理するシステム)」や「MES(製造工程を可視化・指示出しするシステム)」など、さまざまなITが活用されています。
スマートファクトリーとの違いは?
ファクトリー・オートメーションと混同されがちな用語に、「スマートファクトリー」があります。
これら2つの用語は「FA機器を導入し、工場をスマートファクトリー化する」と表現すれば違いをイメージしやすいのではないでしょうか。
つまり、「生産工程の自動化」を意味するファクトリー・オートメーションに対し、スマートファクトリーは「工場全体の効率的な仕組み」を意味しているのです。
ファクトリー・オートメーションが製造業で注目されている理由
人手不足
ファクトリー・オートメーションが製造業で注目されている大きな理由には、慢性的な人手不足があります。少子高齢化が進む日本では、生産年齢人口の減少が続いています。
ファクトリー・オートメーションによって人的コストを最小化し、人手不足を補うことは大きな目的の内の1つです。
製造工程の最適化のため
製造業で重要な要素には「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」の3つがあり、頭文字を取った「QCD」という用語で認知されています。
製造工程を最適化し、QCDをそれぞれ向上させることも、ファクトリー・オートメーションで叶います。
まず、手作業に依存しない製造工程は、QCDの中でも最優先事項とされる「Quality(品質)」の向上につながります。
さらに、人的コストが削減され、不良品が少なくなれば「Cost(コスト)」の課題が解決できるようになります。「Delivery(納期)」についても、機械やシステムの力を現場に取り入れることによって、リードタイムの短縮や納期の管理状況の向上が実現するでしょう。
このように、ファクトリー・オートメーションは、製造工程を多角的に最適化していきます。
ファクトリー・オートメーションの実現で叶うこと
それでは、ファクトリー・オートメーションを実現すると、具体的にどのようなことが叶うのでしょうか?
ここでは、ファクトリー・オートメーションがもたらす「品質の均一化」「生産性の向上」「人件費の削減」について詳しく解説していきます。
品質の均一化
製造業界において、製造を従業員のスキルや知識だけに依存するには限界があります。
ファクトリー・オートメーションが実現すれば、作業者のスキルに依存しない正確な製造が叶い、品質のばらつきを削減できます。また、ヒューマンエラーによるミスもなくなるため、結果として不良品の数が減っていくのです。
生産効率の向上
ファクトリー・オートメーションは、生産効率も向上させてくれます。たとえば、代表的なFA機器である産業用ロボットは、メンテナンスの時間は発生するものの、基本的に24時間の稼働が可能です。
さらに、検品や運搬においても、ファクトリー・オートメーションが可能です。たとえば外観検査では、作業員が目視で行う場合、どれだけスピードを意識しても、1秒間に数個が限界でしょう。
一方で最新のFA機器を活用すれば、1秒間で数百個単位の検品が可能になります。危険な作業も機械に任せられるため、現場の安全性が高まり、従業員の心理的負担も軽減されるでしょう。
人件費の削減
生産ラインのファクトリー・オートメーションが実現されると、作業者の数を減らすことができます。
人件費が安い国へ生産拠点を移す企業も少なくありませんが、人件費はその国の経済状況によって左右されるものです。人件費の安さで拠点を移したとしても、数年後に最低賃金が高騰すれば、移転したメリットはなくなります。
生産拠点をその時々に合わせて最適化するのではなく、「工場そのものを最適化する」という視点に変えることで、リスクの少ない安定した工場運営を実現できるでしょう。
ファクトリー・オートメーションを導入するときの注意点
ファクトリー・オートメーションを実現するためには、設備投資やシステム導入の費用がかかります。FA機器の値段は一般的に数十万円~数百万円で、工場全体のファクトリー・オートメーションとなれば数千万円以上かかるケースも珍しくありません。
そのためファクトリー・オートメーションを進めるためには、最初に現状の課題を細かく把握することが重要です。
やみくもにFA機器を導入するのではなく、生産ラインの各プロセスが抱えている課題を解決できる機器を厳選していくと、コストを抑えた効率的な導入が行えます。
また、新たな機器を導入すれば、作業工程や内容が大きく変わります。FA機器の運用に適した人材の雇用・育成にもコストが発生するでしょう。
特にファクトリー・オートメーションにはさまざまなITシステムが関係するため、デジタル人材の確保は重要なポイントです。
導入の初期費用だけではなく、メンテナンスを含めたランニングコストも考えなければなりません。
ファクトリー・オートメーションとは全体の最適化を目指す自働化
ファクトリー・オートメーションの取り組みによって製造工程を自動化させることは、「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」の向上につながります。
つまり、顧客満足度の向上や人件費削減、従業員の負担軽減など、製造業においてFA化は欠かせない要素といえるでしょう。
一方で、完全なFA化には莫大な費用がかかり、デジタル人材を雇用するなどといった事前準備が必要となるデメリットも存在します。
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