パワーエレクトロニクスとは?技術の基礎知識と注目されている理由
パワーエレクトロニクスとは、家庭用のドライヤーや発電所など、幅広い分野で活用されている電力制御と電力変換に用いられる技術です。
太陽光発電や電気自動車の普及により、近年注目を集めています。本記事では、パワーエレクトロニクスの意味や仕組み、技術者に求められることについて解説します。
パワーエレクトロニクスとは何か
パワーエレクトロニクスとは、電力を効率的に制御して、変換する技術です。パワーデバイス(パワー半導体)を搭載した回路を用いて、電気の種類や電圧を変換するという技術であり、電力輸送や変換、供給などに利用されています。
例えば、パソコンやドライヤー、エアコンなども、パワーエレクトロニクスが用いられている身近な例です。家電製品を動かすためには、パワーエレクトロニスによって電気の種類と電圧を適切に変換して供給する必要があります。
パワーエレクトロニクスの仕組み
パワーエレクトロニクスを説明するには、電気の種類である「交流(AC)」と「直流(DC)」の変換を例にするとわかりやすいです。
例えば、100V・交流電源の家庭用コンセントで、5V・直流電源のスマートフォンを充電するとします。
供給する電気の種類と電圧が違うため、家庭用コンセントからそのまま充電しようとしてもできません。ACアダプタ(充電器)を用いて100V交流(AC)から5V直流(DC)へ変換する必要があります。
このとき、電気の種類を変える整流回路(インバータ、コンバータ)に用いられているのが“パワーエレクトロニクス”です。直流(DC)から交流(AC)へと変換しています。
コンバータ:直流→交流【電気の種類を変換】
インバータ:交流→直流 【電気の種類を変換】
また、電力変換だけでなく、電力制御や電圧変換などにも活用されています。
DC-DCコンバータ:直流(100V)→直流(50V) 【電圧を変換】
AC-ACコンバータ:交流(100V)→交流(50V) 【電圧を変換】
パワーエレクトロニクスの技術者に求められていること
パワーエレクトロニクス技術者には、電力の伝達と変換における、電力ロスの低減や経済性の追求が求められています。脱炭素社会の実現や、電力消費量の急速な増加など、社会問題に密接に関わっているといえるでしょう。
ただし、電力会社などのサプライヤー視点と電化製品を作るメーカー視点では、求められる技術がやや異なります。
サプライヤーである電力会社では、発電所でつくり出した電力を効率よく各家庭に分配することが重要です。発電所の電力を送る際、送電線の電気抵抗などにより、多くのロスが発生している点が問題視されています。経済的により優れた電力供給システムについて、パワーエレクトロニクス技術者は模索しなければなりません。電車のパンタグラフや太陽光発電なども同様です。
一方の電化製品メーカーでは、製品の小型化や軽量化などが求められています。また、ICT機器の普及による電力消費量の急速な増加も社会問題になっています。このような課題を解決するために、スマート化と省エネ化を両立させた製品の開発を進めなければなりません。電化製品だけでなく、電気自動車などの分野にも関わりがあります。
2024年以降もパワーエレクトロニクスに注目が集まる可能性が高い
家庭用バッテリーや電気自動車の普及に伴い、近年パワーエレクトロニクスへの注目が高まっています。
家庭用バッテリーの普及
太陽光発電システムなどによって各家庭で発電した電気を蓄えるため、大型バッテリーの普及が進んでいます。太陽光でつくった電力を効率よくバッテリーに蓄えるためには、パワーエレクトロニクス技術が重要です。
電気自動車の普及
電気自動車に搭載するバッテリーやモーターなどにも、パワーエレクトロニクスの技術は欠かせません。インバータやコンバータ、制御システム、センサーなど、多数のコンポーネントの電力制御や変換などが必要になるためです。充電で蓄えた電気で効率的にモーターを動かせるよう、無駄のない変換技術と省エネ性が求められています。脱炭素社会の実現に向けて、日本政府も補助金や優遇制度で電気自動車を推奨している点も重要でしょう。
パワーエレクトロニクスは、将来的にエネルギー問題の解決や新技術の開発につながる技術であると考えられています。電力消費の効率化だけでなく、再生可能エネルギーの開発にも、パワーエレクトロニクスが必要となるからです。今後のエネルギー問題を解決する重要な役割を担っているといえるでしょう。
パワーエレクトロニクスの進化が社会問題の解決に求められている
パワーエレクトロニクスは、電力を効率的に制御・変換するための重要な技術です。家電製品や電気自動車などの日常的に使うものから、電力業界や鉄道業界などのインフラ設備にいたるまで、幅広い分野で活用されています。
これからのパワーエレクトロニクスの技術者には、省エネ化や製品の小型化だけが求められるわけではありません。クリーンエネルギーの活用や脱炭素社会の実現といった、経済性と社会性を両立させるSDGsの観点も追求する必要があるでしょう。
パワーエレクトロニクスの需要は、今後さらに高まることが予想されています。効率的な電力消費と環境の保護の観点からも、パワーエレクトロニクスの進化が求められているのです。
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