製造業における不良対策とは?不良発生の原因や不良率の目安
製造業において、不良対策は大きな課題です。品質不良の定義は「定めた規格から外れたもの」であり、「塗料が一部剥がれている」「正しい位置にボルト」がないといったものが該当します。そのまま流出してしまうと顧客満足度や企業の信頼度を低下させてしまうため、不良品の出荷は防がなければなりません。原材料が無駄になり、修正に労力もかかる不良品を減らすことは、利益率の改善にもつながります。
原因の究明を早期かつ的確に進めることが、不良対策の第一歩です。本記事では、製造業の現場で不良品が発生する原因である「4M」と対策について、詳しく解説します。人的ミスや機器トラブルなど、課題それぞれに対する考え方にも触れるため、人手不足や経験値による品質の差に悩む製造業関係の方は、ぜひ参考にしてください。
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製造業で不良品が生まれる原因
製造業で不良品が発生する原因は、以下「4M」のいずれかに分類できるとされています。
● Man(人)
● Machine(機械)
● Material(材料)
● Method(方法)
「4M」とは、品質管理における用語です。
不良品が発生した際に、4Mのどの要素に原因があったのかを分析することによって課題が明確になり、解決までの道筋が見えてきます。
まずは4Mについて理解を深めるところから始めましょう。
ヒューマンエラー
ヒューマンエラーである「Man(人)」は、残り3つの要因とも深く関係するため、4Mの軸ともいえます。ここで重要となる考え方が、製造現場における結果的な品質の良し悪しは、作業者の力量ではなく、やり方の良し悪しによるというものです。
たとえば、作業中に人的ミスが発生した場合、問題は作業者ではなく、ミスが起こってしまう手順にあると考えます。もしくは、集中力やモチベーションの低下、長時間労働による疲労などによって作業の精度が下がることも、ヒューマンエラーを誘発します。
また作業者間のコミュニケーション不足や、不適切なオペレーションが原因となる作業ミスも、管理者がヒューマンエラーによる不良対策を考える際に、しっかり検討すべきポイントです。
設備の不備や機械の操作ミス
「Machine(機械)」に含まれる不良品発生原因には、設備の不備だけではなく、操作ミスも含まれます。一見人的ミスと判断できそうな問題でも、操作が複雑で難しい場合、根本的な発生原因があるのは機械です。
製造業において、適切な設備の導入は欠かせません。「正常に機能しているか」「劣化や老朽化はないか」「操作性が適正であるか」なども、不良対策には重要なポイントです。
材料の不良
製造現場で扱う部品や原料などの「Material(材料)」も、製造の品質に関わる大切な要素です。材料の品質が求める基準に満たないと判断できる場合、仕入れ段階での不良なのか、もしくは仕入れてから製造するまでの管理の期間で不良が起きているのかを分析することがポイントとなります。
トラブルの発生原因を特定するためには、材料のトレーサビリティを確保することも重要です。リスク管理としてだけではなく、結果として品質管理や顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
不適切な業務手順
「Method(方法)」に含まれるのが、不適切な業務手順です。たとえば、作業の手順が複雑であることや、チェック工程に抜けがあることなども、不良品の発生原因となります。
また、作業手順に関する教育不足を原因とするヒューマンエラーにも関わることがあります。
製造業における不良品を減らす対策
不良対策としては、「不良品発生の防止」と「不良品流出の防止」の、2つの軸で考えることが大切です。
作業の標準化
不良対策の基本は、作業の標準化、つまりマニュアルを作成することです。製造業の現場では、作業員の経験や技術力によって、製品の品質に差が生まれることがあります。
とはいえ人の入れ替わりは避けられないため、誰が行っても効率的かつ安定的に行える作業方法を定めることが、標準化という考え方です。
先ほど解説した「4M」に関わる作業を標準化することは、作業員の経験や技術力に左右されずに一定の品質を担保するために有効です。
マニュアルには「作業手順」と「工具・機器の取扱い方法」を具体的かつ明確に記載してください。
また、マニュアル作成時には、過去の失敗事例や熟練作業員が持つ知識なども記載すると、現場の作業員が本当に求めているノウハウを伝えられるでしょう。
社内体制の整理
コミュニケーション不足や不適切なオペレーションによるヒューマンエラーを改善させるためには、社内体制を見直しましょう。伝達事項が正確に伝わる社内体制を整えることで、ローテーションの変更などがあった場合でも、業務効率を落とさずに作業を進められるようになります。
また、疑問や気付きを口に出しやすい雰囲気をつくり、作業員のモチベーションを維持していく意識も重要です。
定期的なメンテナンス
製造現場で扱う機械は消耗品です。定期的にメンテナンスを行うことで、機械の不備・不良だけでなく、老朽化による性能低下にも、いち早く気付けるようになります。
トヨタ自動車も取り入れ、さまざまな業界で注目されている「5S」を実践するのもよいでしょう。
<5S>
- 整理:不要なデータや物を捨てる
- 整頓:必要な物を特定の場所に置く
- 清掃:職場の清掃、道具の手入れ
- 清潔:整理、整頓、清掃の徹底により清潔を保つ
- 躾:ルールを定義し、定着させる
「5S」の徹底は、生産性向上や労働災害の未然防止につながります。
特に、定期的な教育を通し、マニュアルや社内ルールを浸透させていく「躾」は、思い込みによる行動ミスを防ぐなど、ヒューマンエラー対策として効果的です。
作業効率や品質の分析
不良対策には、作業内容や品質の測定・分析も欠かせません。過去との差分を把握することで、改善点発見へとつながります。
システムの導入
ヒューマンエラーを0にすることはできません。そこで、AIやIoTなどのシステムを導入することで、人の能力に依存しない製造工程を実現し、ヒューマンエラーの削減を可能とするのです。
たとえば、比較的リーズナブルに入手できる計測や制御のためのインタフェース装置を導入するだけでも、生産効率の向上と品質の安定化を一度に狙えるでしょう。
また、データを正しく収集するツールであれば、スピーディーな原因究明や適切な工程管理に活用できます。
このように、適切なシステムの導入によって「品質の安定した製品の大量製造」と「データに基づく管理」が可能な現場環境を構築することができるでしょう。
対策によって不良率を0%にすることは可能?
製造現場における不良率は0%であることが望ましいですが、実現は不可能といわれています。不良品を完全になくすことが難しいのは、予期せぬ事態が発生する可能性を排除できないためです。
また、「不良率0%」を目標に設定すると、作業不良が隠ぺいされるリスクもあります。0%を目指すより、実現可能な不良率の目標を立てるほうがよいでしょう。
不良率の目安を考える際には、一般的に「3シグマ」や「6シグマ」といった指標が用いられます。
シグマ(σ)とは、標準偏差のことで、データのバラツキを示す数値です。正規分布に従い、平均からどの範囲に「規格内の製品」が含まれているかがわかります。
3シグマは、1,000個の製品を製造した場合、平均値から±3標準偏差の範囲内にデータの大部分(約99.7%)が収まっていることを意味します。
つまり、一般的な品質管理において、3シグマは約0.27%の不良率に相当するため、良好な品質管理レベルだといえるでしょう。
さらに6シグマは、100万個の製品を製造した場合、平均値から±6標準偏差の範囲外に位置する規格外製品が3~4個発生する程度を表します。そのため、3シグマよりも高い品質水準を目指す手法として用いられています。
これらのシグマレベルは、品質管理やプロセス改善における目標設定に活用できる指標です。
人材サービスの活用で人手不足による製造業の不良対策を進めよう!
製造業における不良対策は、利益率改善や企業の信頼度向上などにつながる大きな課題です。
不良率0%を目標とするのではなく、作業の標準化や社内体制の整備などによって、結果的に人的ミスや機械の不具合による不良品発生率を減らしていけます。
とはいえ、根本的な人手不足によって一人ひとりの作業員の負担が大きすぎるという問題を抱える製造業関係の方も多いでしょう。
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