日雇派遣とは?禁止されている理由や例外的な雇用条件、注意点
日雇派遣とは、契約期間が31日未満の派遣雇用のことです。
2012年の労働者派遣法改正により、現在は原則禁止とされています。スポット的な人手不足に悩み、「日雇派遣スタッフを雇用できないだろうか」と考えている製造業関係の人事担当者の方も多いでしょう。
条件を満たせば例外的に日雇派遣スタッフを雇用できますが、日雇派遣スタッフの雇用を進めるためには、労働者派遣法の正しい理解が必要です。
万が一法令違反となった場合には、派遣会社や派遣先企業は罰則を受け、社会的イメージの低下につながるといった可能性があります。
本記事では、日雇派遣が原則禁止となった背景や、例外条件を詳しく解説していきます。記事の後半では、日雇派遣を活用したい場合の注意点もわかりやすくまとめているため、ぜひ参考にしてください。
日雇派遣とは?単発バイトとの違い
「日雇派遣」と「単発バイト」には、それぞれ明確な定義があります。この項目では、日雇派遣と単発バイトの定義や働き方の違いについて解説しましょう。
日雇派遣とは
日雇派遣は「スポット派遣」「スポット」などとも呼ばれ、契約期間が31日未満の短期間の派遣雇用を指します。
具体的には、派遣会社に登録している労働者が人手の足りていない会社に派遣され、1日~数日間だけ就業します。
日雇派遣は2012年の法改正によって原則禁止となり、現在は「31日以上の雇用期間」の契約を結ぶように義務付けられています。また、勤務時間が週20時間を下回る場合も、日雇派遣と見なされるため、注意が必要です。
働き方によっても日雇派遣に当たるかどうかが変わるため、以下で例を見てみましょう。
日雇派遣に当たる |
日雇派遣に当たらない |
● 労働契約期間が1日 ● 労働契約期間が30日 ● 30日以下の労働契約期間を更新させていく |
● 労働契約期間が31日で1か月間の仕事 ● 労働契約期間が31日以上で、複数の短期の仕事を組み合わせる |
日雇派遣に当たるかどうかの判断は、“労働者と派遣元の労働契約”に基づきます。日雇派遣ではない労働契約が結ばれていれば、派遣先企業が「1日だけ」「1か月だけ」などの期間でスタッフを受け入れても問題はありません。
単発バイトとの違い
日雇派遣と単発バイトの大きな違いは、雇用主です。日雇派遣の労働者は、「派遣会社」と契約を結びます。
一方で、単発バイトの労働者が契約を結ぶのは、「就業先の企業」です。単発バイトであれば、雇用契約に日雇派遣のような条件はありません。
労働者側には、派遣元ではなく直接雇用となる企業との契約条件に則り、福利厚生や給与を受け取れるメリットが生まれます。
日雇派遣が原則禁止になった背景
2012年に労働者派遣法が改正されるまでは、日雇派遣に係る規制はありませんでした。2008年のリーマンショックによる不況で増加した「派遣切り」をきっかけに、日雇派遣の課題が浮き彫りとなったのです。
当時、派遣切りに遭った労働者には、新たな収入源を見つけることが困難で生活が不安定になる人が多く、社会問題にまで発展しました。
また日雇派遣では、社会保険への加入ができず、賞与や昇給も期待できません。さらに当時は、派遣元と派遣先の間で適切な雇用管理や安全指導が果たされておらず、労働災害のリスクも高い状況にあったのです。
派遣労働者の保護という目的も含め、労働者の不安定な就業解消のため、国は法改正を行い「日雇派遣の原則禁止」が成立しました。
日雇派遣を雇用する例外的な条件
冒頭でもお伝えした通り、例外的に日雇派遣が認められるケースもあります。例外と認められるためには、大きく分けて「業務の条件」と「労働者の条件」を満たさなければなりません。これから詳しく解説していきましょう。
「日雇派遣の例外業務」に該当する場合
日雇派遣が認められる「業務の条件」として、適正な雇用管理に影響を及ぼすおそれがないと認められている業務への派遣であることが求められます。
例外業務に該当するのは、以下18種の業務です。
● ソフトウエア開発
● 機械設計
● 事務用機器操作
● 通訳、翻訳、速記
● 秘書
● ファイリング
● 調査
● 財務処理
● 取引文書作成
● デモンストレーション
● 添乗
● 受付、案内
● 研究開発
● 事業の実施体制の企画、立案
● 書籍などの製作、編修
● 広告デザイン
● OAインストラクション
● セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
上記した18業務は、過去の労働者派遣法で定められていた、いわゆる「26業務」から「特別な雇用管理を必要とする業務」および「日雇派遣がほとんどみられない業務」を除いたものです。
日雇派遣スタッフを活用したいと考えている人事担当者は、まずは自社の業務が上記18種類に含まれているかどうかを確認しましょう。
「日雇派遣の例外」に該当する場合
例外として日雇派遣の雇用を認められるためには、労働者に対する条件も満たさなければいけません。
労働者に対する条件は、大きく分けて以下4つです。
● 60歳以上の人
● 雇用保険適用外の学生
● 副業として働く人
● 主たる生計者ではない人
1つ目の「60歳以上の人」については、雇用機会が著しく低下する高齢者の雇用機会を広げるために例外とされるもので、満60歳以上の人が対象です。
2つ目の「雇用保険適用外の学生」については、本業が学生であることを理由に、日雇派遣が認められています。
3つ目の「副業として働く人」については、厚生労働省が労働者保護の観点から例外条件に提示している「生活のためにやむを得ず日雇派遣の仕事を選ぶことのない水準にある者」に当てはまる人が対象です。
そのため年間の生業収入が500万円以上で、安定した雇用と一定の収入を得られている人の“副業として”であれば、日雇派遣が可能となります。
4つ目の「主たる生計者ではない人」についても同様の理由で、年間の世帯収入が500万円以上、かつ主たる生計者(世帯収入の合計のうち50%以上の人)ではない人が対象です。
日雇派遣スタッフを雇用したい場合の注意点
自社で人手不足に悩んでも、日雇派遣は避けることが原則です。
ここからは、どうしても日雇派遣を活用する必要がある場合に注意すべきポイントについて解説していきますので、参考にしてください。
依頼者・業務に問題がないか確認する
日雇派遣スタッフを雇用したい場合には、先ほど解説した「業務の例外」と「労働者の例外」に該当するかどうかの確認をします。そのうえで、派遣禁止業務に該当しないかの確認も必要です。
派遣禁止業務には、以下があります。
● 港湾運送業務
● 建設業務
● 警備業務
● 病院・診療所などにおける医療関連業務
● 弁護士・社会保険労務士などのいわゆる「士」業務
製造業などにおいて、夜間の倉庫警備のための人材を必要とする企業もあるでしょう。しかし、警備目的で無人の時間帯に常駐させることは、派遣禁止業務に当たります。
教育訓練を行う必要がある
派遣元企業は、日雇派遣スタッフに対して、職務に必要な教育訓練を就業前に実施する必要があります。
教育訓練を実施するのは派遣元企業ですが、日雇派遣スタッフを受け入れると決めた場合には、派遣先企業として自社の仕事内容や手順、注意点を含めたマニュアルを提示できるように、準備を整えておきましょう。
法令を遵守した派遣スタッフ雇用には人材紹介サービスがおすすめ
日雇派遣とは、31日未満の短い契約期間での派遣雇用のことです。2012年の法改正により、「労働者の保護」や「不安定な雇用の解消」などの観点から、原則禁止とされています。
どうしても日雇派遣スタッフを雇用する場合には、必要な条件を満たしているかどうかの確認が必要です。幅広い業態を持つ製造業においては、「知らないうちに法律違反を犯す可能性」も心配でしょう。
法令を遵守した日雇派遣の雇用を進めるためには、人材紹介サービスの利用がおすすめです。
日研トータルソーシング株式会社は、製造業のあらゆる業種・職種に対するワンストップの人材サービスを展開しています。
スポット的な人手不足に悩み、日雇派遣スタッフの活用を検討している事業者様は、ぜひ人材サービスの利用を検討してみましょう。
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