QCサークル活動(小集団改善活動)のメリットと製造業の品質向上・「時代遅れ」と廃止される理由
IoT機器などICT技術の活用によって、品質管理の精度を向上させる手法が注目されていますが、日本では従来から品質向上を図るため、QCサークル活動が行われてきました。
しかし、QCサークル活動を実践しても、さほど品質向上の効果がみられないケースがあり、「時代遅れ」と廃止される傾向が見られるのも事実です。
そこで、QCサークル活動とはどのようなものなのか、メリットや進め方をあらためて整理したうえで、QCサークル活動が続かないケースの要因や対策も取り上げていきます。
- QCサークル活動は小集団で自主的に製品やサービスの品質管理や改善に取り組む活動
- 従業員の問題解決力や論理的思考の向上に役立ち、人材育成にもつながる
- 結果ありきでなく、テーマに沿った現状把握と分析、対策の実施が重要
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目次
QCサークル活動(小集団改善活動)とは
QCサークル活動の「QC」は「Quality Control」の略で、品質管理を意味しています。QCサークル活動は小集団改善活動とも呼ばれ、職場で自主的に製品やサービスの質の管理や改善に、小集団で取り組む活動を指すものです。
QCサークル活動における小集団は10人程度の規模が一般的です。また、サークルリーダー、書記といった役割を全員で分担して担うことも特徴に挙げられます。
このQCサークル活動は日本独自のものであり、日本の工業製品の品質向上の原動力となったことから、海外からも注目されています。
QCサークルのメリット
QCサークル活動によるメリットは、品質の管理や改善を通じて、品質向上を図れることだけではありません。
QCサークル活動は現場で問題点を見つけて、データを集めて数値化やグラフ化による定量分析を行い、課題を明確化した後、対策を立案していくという流れです。結果、従業員の問題解決力や論理的思考が向上するとともに、人材育成にもつながります。
また、QCサークル活動を通じてコミュニケーションをとることでチームワークがよくなるなど、組織の活性化を図ることもできます。
製造業の作業効率向上、ひいては生産性向上に役立つ「5S」も、QCサークル活動の小さなグループで取り組むことで継続しやすくなるでしょう。
製造業におけるQCサークル~「品質向上」の意味するもの
QCサークル活動における品質向上は、2つの種類に分類することができます。
- 製品(=プロダクト)の品質向上
- 業務(=オペレーション)の品質向上
製品の品質向上の面では、加工精度や歩留まり、顧客満足度などが指標となります。例えば、不良品の多さが課題として顕在化している場合、不良発生率などのデータから定量的に現状を把握し、改善のための対策を講じていきます。
業務の品質向上を図るには、業務のプロセスや仕分け、作業ルールを見直すとともに、業務の属人性を排除して、誰でも同じ品質で作業を行えるように業務を平準化していきます。
また、製造業の現場作業では工程の一部の同じ作業を繰り返し行うケースが多く、工程全体が見えないことや単調な作業が続くことから、モチベーションを維持しにくい側面があります。そこでQCサークル活動によって業務改善を行い達成感が得られると、モチベーションのアップにもつながっていくでしょう。
QCサークルの進め方
QCサークル活動は次の流れで進めていきます。
1:サークルメンバーの決定
職場内で10人程度の規模のグループを作ります。人数が多すぎると発言しないメンバーが増えてくるためです。
2:テーマの検討
現状の問題点の洗い出しを行い、問題点を評価して絞り込み、テーマを決定します。問題点の洗い出しを行う際には、部門ごとの目標として定められた数値と実績の差が大きいものが対象となります。
例えば製造業の現場では、製造リードタイムや生産計画日程比、不良発生率といった数値から、問題点を探ります。また、問題点を洗い出した後は、緊急性や重要性、コスト、効果などの面から評価して絞り込み、テーマを決定します。
製造業のQCサークル活動のテーマとしては、「組み立て工程での不良発生率を削減する」「生産計画日程比を向上させる」といったものが考えられるでしょう。
3:現状認識と目標設定
テーマを決定した後、関連するデータを収集して定量分析を行い、現状について詳細までを把握します。
データ収集を行う際によく使われるのは、層別にグループ分けしたデータごとに分析する手法です。例えば、「組み立て工程での不良発生率を削減する」をテーマとしている場合、生産設備や作業者、材料のロット、作業方法などの層別で不良発生率を分析していくことで、相関関係が見えやすくなります。
また、棒グラフと折れ線グラフによるパレード図を用いると、問題点ごとの影響の度合いを把握するのに便利です。
現状を認識した後には、どの程度の改善を図るのか目標設定を行います。
4:問題が発生する原因の深堀
問題が発生する原因を洗い出し、推定される原因を検証していきます。
原因の追究に用いられることが多いのは特定要因図です。特定要因図はフィッシュボーン図とも呼ばれ、問題となっている特性を書いて、大骨の部分に大きな要因を定義した後、次に小骨に大骨の要因を生み出す要素を記入していきます。さらに、小骨の要素を細分化して、孫骨に書いていくという流れです。
また、特定要因図によって推定された原因をもとに、グラフを用いて検証を行います。
5:対策の実行
問題を改善して目標を達成するための対策を立案して、実行に移します。
例えば、組み立て工程での不良発生率が高かった要因が属人的なものであった場合には、ミスの少ない熟練作業者とミスの多い作業者の作業手順を比較して、作業マニュアルを見直すといった対策を講じることができます。
6:効果測定と共有
効果測定を行い、目標をどの程度達成できているのか、サークルメンバーに共有します。すぐに大きな効果を上げることは難しいため、PDCAサイクルを繰り返して、改善を重ねていくことが大切です。
QCサークルへの否定的な声~「時代遅れ」と廃止される理由
QCサークル活動を行っていても効果が上がらず、「時間の無駄」「時代遅れでは?」といった声も聞かれ、活動が停滞、あるいは廃止されてしまうケースもみられます。
QCサークルに否定的な声、あるいは廃止を望む声が挙がる背景には、以下のような課題が考えられます。
- 資料をつくることや発表自体が目的化してしまう
- 業務に役立っているという実感がない
- 業務に追われ、準備に時間を割くのが難しい
これら個別の課題に対し、有意義な活動に改善するための施策を考察します。
資料をつくることや発表自体が目的化してしまう
資料を作成して発表することが目的化してしまいやすいのは、定期的に活動発表の場を設けているケースで、特に活動期間が短い場合です。
大きな問題となっているテーマは改善を図るための難易度が高いことが多く、すぐに結果を出すことが難しいことから敬遠されがちです。その結果、解決策がわかりやすいテーマを選んで資料を作成するのでは、意義のある活動とはなりにくいでしょう。
こうしたケースでは活動発表の頻度を見直すといった対策が有効です。
業務に役立っているという実感がない
難易度の高いテーマに取り組み、短期間で活動を終わらせているケースで起こりやすい課題です。
難易度が高いテーマは現状把握に時間がかかることから、実行に移してからの期間が短くなってしまうため、相応の効果を得るのは難しくなります。しかし、推測によって効果があったことを前提として、発表後には活動を終えてしまうと、やっていることが意味のないものとなってしまいます。実際には課題の改善が図れておらず、再び問題が露呈してしまうことにもなりかねません。
QCサークル活動では、テーマの難易度に合った活動期間を設定することが大切です。
業務に追われ、準備に時間を割くのが難しい
通常の業務に追われていて、活動発表の準備に時間を割くのが難しいケースでは、過度な残業が発生してしまうことがモチベーションの低下につながっていきます。
QCサークル活動の負担を軽減するには、役割分担を見直す、あるいは活動発表の際の資料を簡素化するといった対策が考えられます。
まとめ
QCサークル活動は、主体的にメンバーが取り組むことで品質向上の効果が見込めます。そのためには、結果ありきではなく、テーマに沿って現状把握や分析を行い、必要な対策を実行していくことが大切です。
QCサークル活動は品質向上に寄与するだけではなく、従業員のモチベーションアップにもつながっていくものです。テーマ選定や活動期間、役割分担など、適切な運用を行っていくことを意識してください。
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