MRPとは?導入で期待できることやERP、JITとの違い、導入時の注意点
MRP(Material Requirements Planning system)とは、製造業において材料や部品を必要に応じて調達する生産プロセスを管理・計画するためのシステムのことです。日本語では「資材所要量計画」と訳されます。
MRPは主に在庫管理の場面で使われますが、広義では生産にかかわる人員や設備、資金などを含めて使用されることもあります。
生産の全体最適を担う管理者にとって非常に重要となるMRPですが、導入の効果や注意点について「実はよく知らない」といった方も多いでしょう。
そこで本記事では、製造業関係の人事や工場の管理者向けに、MRPの導入によって得られる効果と注意点について具体的に解説します。
また、MRPとよく比較されるMRP2・ERP・JITなどとの違いについても詳しくご説明します。
MRP(Material Requirements Planning)とは
MRP(Material Requirements Planning)とは生産管理手法の一つで、必要な資材を、適切な量・適切なタイミングで調達する計画のことです。日本語では「資材所要量計画」といいます。
具体的には、生産計画にもとづいて必要な資材を算出し、どのくらいの量の資材を発注するか、また発注時期はいつにするかを決定します。
MRPの主な目的は、在庫数の過不足防止と生産性向上です。資材の在庫情報や製品の受注状況などを照らし合わせることで、精度の高い在庫管理と生産計画を実現します。
MRPの導入で期待できる効果
MRPの導入によって、製造業務では以下4つの効果を期待できます。
- リードタイムの短縮や在庫コストの削減
- 在庫や仕掛品の適切な管理
- 生産現場の業務効率化
- スケジュールや納期遅れの防止
MRPは、生産スケジュールや製造計画などに関わる在庫・仕掛品の管理を、最適化するのに役立ちます。
在庫の過不足が起こると需要と供給のバランスが崩れてしまいかねません。保有しすぎている在庫の管理に手間がかかったり、在庫不足で生産を一時ストップしなければならなくなったりと、現場の運用に加えて販売管理にも問題が発生してしまう可能性があります。
MRPを活用すれば、資材調達の際に必要な情報である原材料や生産量の需要予測が可能になり、製造工程や生産活動などが効率的になります。その結果、リードタイムの短縮や在庫管理コストの削減が可能です。
また、これら一連の効率化によって納期の遅れを防止できます。納期遅れの防止は顧客満足度を向上させ、利益の最大化にもつながるのが導入のメリットです。
MRPとMRP2、ERP、JITそれぞれの違い
製造業務には、計画・実行・制御という3つの管理領域があり、それぞれに以下のような管理手法が適応されています。
- ERP(統合基幹業務システム)
- 計画 MRP・MRP2 など
- 実行 JIT(ジャスト・イン・タイム)・MES(製造実行システム)・SCM(サプライ・チェーン・マネジメント) など
- 制御 IoT など
そして上記領域のなかで、生産管理と製造管理を統合して管理するのがERPシステム(統合基幹業務システム)です。
各領域のなかでも特に覚えておくべき内容のMRP2・ERP・JITについて、MRPとの違いを踏まえて以下で具体的に解説します。
MRP2とは
MRP2とは、MRPで管理していた材料や部品だけでなく、生産能力・人員・物流・資金までを管理して製造工程を考慮して作成する生産資源計画のことです。MRPの進化版として1980年代に登場しました。
生産スケジューラーなどを活用して現場で発生する負荷を見える化し、生産能力の向上を目的としています。
MRP2は、MRPと比較してより正確な生産計画を立てられるのが特徴です。生産プロセスがより効率化され生産性のさらなる向上にもつながる点がメリットで、MRP2によって資源の最適化と生産効率を高められます。
ERPとは
1990年代に登場したERP(Enterprise Resource Planning)は、生産管理・会計・販売などの部門を一つのシステムに統合した業務プロセスを抜本的に見直す管理手法です。
業務全体のプロセスを改善して企業活動を最適化することをBRPと呼び、BRPの施策の一つとしてERPがあります。ERPは統合基幹業務システムとも呼ばれており、企業の経営戦略を構築する際には欠かせない管理手法です。
ERPの導入メリットは情報の一元管理が可能になる点です。企業経営の基盤となる「ヒト・モノ・カネ・情報」を適切に管理して有効活用できるようになるため、企業全体の業務効率化と体質改善を図れます。
ITやIoTを活用したDX化を図り、クラウド型ソフトによるほかのシステムとの連携を可能にして、業務効率化を実現する目的でも導入するケースが増えています。
JITとは
JITは、1970年頃にトヨタ自動車が開発した生産管理方式で「ジャスト・イン・タイム」と読みます。MRPと同じく「必要なタイミングで、必要量を供給する」ために生まれた生産管理手法です。
MRPは製造工程の前工程から後工程に対して、原材料の発注数やタイミングを指示するプッシュ型の生産方式です。一方JITは、後工程から前工程に対して必要な原材料を指示して取り寄せるプル型の生産方式という違いがあります。
また同じくトヨタは、流通の情報共有の効率化を図るという考えから「かんばん方式」という生産方式を考案しました。生産現場で、工程間の仕掛在庫を最少にするための仕組みです。この仕組みは、明確で正確な指示を次工程に引き継ぐために「生産指示標」と呼ばれる“かんばん”を使用するのが特徴です
一方、JITの課題点を克服した生産方式として「セル生産方式」も生まれました。製品を少数で生産できるのが特徴です。
セル生産方式については、下記記事で解説しています。合わせてご覧ください。
MRPを導入するときの注意点
MRPの手法を導入する際にはいくつか注意しておくべきことがあります。MRPは急な計画変更に弱いという特徴があるためです。弱さをカバーするためのポイントを把握して効果的に活用しましょう。
部品表(BOM)の整備が必要
BOMとは「Bill Of Materials」の略称で、製造の際に必要な部品を一覧にした部品表です。この部品表をもとに資材の使用料などを算出し、管理や品番整理を行います。
しかし、部門によって管理方法が違っていたり、必要な情報が不足していたりするなどの課題がよくあります。
部品表は、社内全体の共通言語として機能するためにも、管理方法の見直しと品目・品番の整理、ルールの徹底など現場業務での改善から始めましょう。
MRPの運用には、ミスが発生しにくい環境をつくることが重要です。
情報共有しやすい環境の整備・仕組み化が必要
MRPは仕様や計画の急な変更に弱いため、情報共有が正確かつ迅速に行われる環境整備や仕組み化が必要です。
具体的には、リアルタイムで柔軟かつ正確に製造現場の情報を共有できるよう、管理情報の更新はこまめに行うといったルールの設定や、在庫数や製番の把握体制の見直しを行います。
また、部門ごとの情報共有をスムーズに行うため、ITやIoTによるデータ管理システムの導入などで連携を強化することも重要なポイントです。
MRPなどの生産管理システムを活用して業務効率と生産性を向上させよう
MRPは、在庫数を適正に保ち、生産性を向上させるために誕生した管理手法です。必要な資材を、必要な量、必要なときに調達する計画を立てることで、在庫管理のコスト軽減、生産現場の業務効率化といった効果が期待できます。
また、製造業のソリューションには、MRP以外にも、主に以下の基幹システムや生産管理方式が有効です。
- MRP2
- ERP
- JIT
とくにERPは、生産プロセスの管理と基幹系情報の統一が可能で経営戦略には欠かせない最新の管理システムとして現在の主流となっています。
本記事を参考に、自社への導入コストを検討しながら、費用対効果の高い管理方式を選定・導入して業務効率や生産性の向上に活かしてください。
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