品質管理検定(QC検定)とは?資格難易度と合格率、メリットを解説
製造業において、適切な品質管理を徹底する重要性はいうまでもありません。現場における品質管理の質の維持・向上を図るため、品質管理検定(QC検定)の取得を推奨する企業が見受けられるのも当然でしょう。製造現場のみならず、購買や製造、物流などの部門においても、品質管理への高い意識は横断的に求められます。
本記事では、品質管理検定の級ごとのスキルレベルなどについて触れたうえで、品質管理検定の有資格者を雇用するメリットについて考察していきます。
- 品質管理検定(QC検定)は、品質管理に関する知識を客観的に評価する資格
- 有資格者は製品の品質管理、サービス品質の向上に関する一定のスキルを備えた人材と評価できる
- 1級~4級があり、級によって求められる品質管理の知識レベルが異なるほか、受検対象者の想定実務レベルも異なる
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目次
品質管理検定(QC検定)とは
品質管理検定(QC検定)とは、品質管理に関する知識を「客観的」に評価する資格です。一般社団法人日本品質管理学会の認定を受け、一般財団法人日本規格協会(JSA)と一般財団法人日本科学技術連盟(JUSE)が実施しており、16の協賛団体があります。
なお、品質管理検定は「QC検定」とも呼ばれていますが、QCは「Quality Control」の頭文字に由来します。Quality Controlとは、製品などの品質を管理し、サービスを向上させる取り組みを指すものです
品質管理検定は2005年に第1回の試験が実施された比較的新しい資格ですが、2023年時点にて累計合格者は66万人を突破。3月と9月の年2回、全国約120箇所の会場にて筆記試験が実施されています。
試験日程 (※2023年) |
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試験方式 |
筆記試験
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合格基準 |
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この品質管理検定の有資格者は、製品の品質管理ならびにサービス品質の向上に関する一定のスキルを備えた人材と評価できます。資格取得を目指し勉強に取り組むことで、製造業はもとより、接客業などのサービス提供者も含め、品質管理に関するスキル向上が期待できるものです。
実際に製造業を中心に、品質向上のための取り組みの一環として、品質管理検定の取得を推奨する企業もあります。
品質管理検定(QC検定)の難易度別合格基準
品質管理検定には1級~4級のレベル区分が設けられています。
- 4級:社会人としての仕事の進め方や企業活動の基本常識、品質管理の基本を理解しているレベル
- 3級:品質管理の実践方法を理解し、基本的な品質管理や改善活動に関して、必要に応じたサポートを受けながら実施できるレベル
- 2級:品質管理や改善活動を自立して実施できるレベル
- 1級:品質管理活動のリーダーに最低限必要とされる知識を有しているレベル
このように、級によって求められる品質管理の知識レベルが異なるほか、想定されている受検対象者の実務レベルにも違いがあります。
企業などが品質管理検定の取得を人事評価に活用する場合には、級ごとの実務レベルを正しく把握しなくてはいけません。
品質管理検定4級の合格基準
品質管理検定4級は、社会人としての仕事の進め方や企業活動の基本常識、品質管理の基本を理解できているレベルです。
品質管理に関する用語を正しく理解し、改善活動に関しても言語化できるレベルに相当し、新入社員や外部委託のスタッフ、あるいは品質管理を初めて学ぶ学生などに向けた資格と位置付けられています。
試験・出題範囲
4級の試験では、品質管理の概要や改善、さらに工程や検査、標準化、データに関すること、QC7つ道具や企業活動の基本などについての知識が評価されます。
合格基準と難易度
合格基準はおおむね総合得点の70%以上の正答です。なお、2023年3月に実施された第35回品質管理検定では、合格率は84.95%と高水準でした。難易度はそれほど高くありません。
実務レベル
4級の有資格者は、品質管理の基礎を理解できているスタッフとして、生産ラインの各工程や品質検査、あるいは改善活動などでの活躍が期待できます。
品質管理検定3級の合格基準
品質管理検定3級は、品質管理の実践方法を知識として内面化し、基本的な品質管理や品質改善活動に関して、必要に応じたサポートを受けながら実行できるレベルです。
具体的には、QC7つ道具の作り方や使い方をほぼ理解できているレベルに相当します。
- パレート図
- 特性要因図
- グラフ
- ヒストグラム
- 散布図
- 管理図
- チェックシート
職場で発生する問題に対して、改善の進め方のサポートやアドバイスを受けながらQC的問題解決法を用いて解決を図れるレベルが想定されており、業種や職種を問わず、職場の問題解決を担うポジションの社員や品質管理を実践的に理解したい学生に向けた資格の位置づけです。
試験・出題範囲
3級の試験では、データの収集方法やまとめ方の基本、QC7つ道具の利用方法、新QC7つ道具の基本、QC的モノの見方や考え方、基本的な品質管理や改善活動に関することなどに関する知識が評価されます。
合格基準と難易度
手法分野・実践分野のそれぞれがおおむね50%以上、総合得点でおおむね70%以上の正答が合格基準です。なお、第35回品質管理検定の合格率は49.91%となっており、4級よりも難易度は大幅に上がっています。
実務レベル
3級の有資格者は、QC7つ道具を活用し、上司のサポートのもとで職場の改善活動に取り組んでいけるスキルを有する人材レベルです。たとえば製造業の現場では、上司とともに部品の管理方法や作業動線の改善活動に取り組む、といった場面での活躍が想定されます。
品質管理検定2級の合格基準
品質管理検定2級は、品質管理や改善活動を自立して実施できるレベルです。自らが中心となり、QC7つ道具や新QC7つ道具などの統計的手法を活用して、職場で発生する品質に関連する問題の解決や改善を図れます。また、品質管理を実践的に理解し、適切な活動を行うスキルの裏付けにもなります。
品質管理や品質保証、研究・開発、生産技術といった品質に関わる部署の管理職やスタッフのほか、部門における品質問題を解決するリーダーなどに向けた資格の位置づけです。
試験・出題範囲
2級の試験では、QC七つ道具などの統計的な手法を自主的に活用していくために必要とされる知識を評価されます。確率分布や相関分析、回帰分析などの統計に関する知識のほか、抜取検査や信頼性工学、実験計画法などに関する知識も問われます。
合格基準と難易度
3級と同様に、手法分野・実践分野のそれぞれがおおむね50%以上、総合得点でおおむね70%以上の正答が合格基準です。第35回品質管理検定の合格率は25.08%と難易度は高く、決して簡単な試験ではありません。
実務レベル
2級の有資格者は、品質に関わる改善活動のリーダーを担うスキルを有します。また、品質保証や生産技術、研究開発といった各部門の管理職として、品質に関わる知識を活かして活躍できる能力が認められます。
品質管理検定1級の合格基準
品質管理検定1級は、品質管理活動のリーダーに最低限必要とされる知識を有しているレベルです。現場で起こる諸問題に対して、品質管理の面からの解決策や改善策を主導する役割を担います。
また、専門性の高い知識を必要とする課題に対し、どのような手法を活用していけばよいのか、解決に向けた筋道を立てられるレベルでもあります。
品質管理部門や技術系部門など、品質管理全般についての知識が必要とされるポジションのほか、品質問題の解決において指導的な立場となる技術者に向けた資格の位置づけです。
試験・出題範囲
1級の試験では、品質管理の手法や実践全般に関する理解度など、品質管理活動のリーダーが備えておくべき知識を問われます。なお、1級のみ一次試験と二次試験があり、一次試験のみに合格すると準1級、二次試験にも合格すると1級を取得できます。
合格基準と難易度
一次試験のマークシートは、手法分野・実践分野のそれぞれがおおむね50%以上、総合得点でおおむね70%以上の正答率でクリアできます。二次試験は論述式で、合格基準の正答率はおおむね70%以上です。
第35回品質管理検定では1級の合格率は2.48%、準1級は8.8%と、一次試験、二次試験ともに難易度は極めて高いです。また、一次試験免除者(前回の準1級合格者)の二次試験合格率は38%となっています。
実務レベル
製造業においては、1級の有資格者は品質管理を専門とする部署の技術者として、部門を横断して品質管理に関わる諸問題の解決に取り組むリーダーとしての活躍が期待できます。
たとえば、顧客のニーズを満たすために、製造の各工程で連携を図り、品質の向上と生産リードタイムの短縮に取り組むといったケースが挙げられます。
品質管理検定(QC検定)を有するメリット
企業が品質管理検定の有資格者を雇用するメリットには、主に次の3点が挙げられます。
- 品質管理の実用的な知識がある
- 品質管理における問題解決能力が高い
- 品質管理業務の伝達・指導ができる
品質管理の実用的な知識がある
多くの企業が品質管理体制に関する課題を少なからず抱えているなか、求められる知識を体系的に身につけている有資格者が重宝されることはいうまでもありません。実用的な知識も備えた人材の雇用で、部門全体、ひいては企業全体の品質管理レベルの向上も図れます。
また、製造業の企業では、正社員には品質管理に関する教育を実施していても、期間社員と呼ばれる契約社員や派遣社員にまでは徹底しきれていないケースも見受けられます。品質管理検定の有資格者を雇用することで、教育に割かれるコストや時間の軽減を図れることもメリットです。
さらに、品質管理検定の有資格者は品質管理に関する知識レベルを客観的に把握できているため、さらなるスキルアップのための教育計画を組みやすいという利点もあります。
品質管理における問題解決能力が高い
品質管理検定の有資格者は、QC7つ道具や新QC7つ道具といった製造工程や品質管理における統計的な手法を身につけています。製品に関して発生する問題の多くは、QC7つ道具レベルの知識を持っていれば解決できるとされていることからも、有資格者を雇用するメリットは大きいです。
- 4級:QC7つ道具という言葉を知っているレベル
- 3級:QC7つ道具の使い方をほぼ理解しているレベル
- 2級:QC7つ道具を使いこなせるレベル
実務においては、品質管理検定3級の有資格者であれば、上司などのサポートや指導に応じて品質管理に関する諸問題の解決に取り組んでいくスキルを評価できます。
さらに2級の有資格者となれば、改善活動に主体的に取り組めるスキルを持つレベル、1級の有資格者であれば、部門を横断して品質管理に関する諸問題の解決に取り組んでいけるスキルを有するレベルです。
品質管理業務の伝達・指導ができる
品質管理検定1級・2級の有資格者は、品質管理業務に関して伝達・指導ができるレベルに該当します。資格取得を通じて品質管理に関する知識を体系的に理解していることからも、指導担当者として適任です。
つまり、品質管理検定の有資格者が社内にいると、品質管理業務レベルの底上げにつながります。1級・2級の有資格者は、社内の品質管理教育の講師や品質管理に関わる統計的な手法の指導担当者のほか、取引先の品質管理の改善を指導するポジションなどでの活躍が見込まれるでしょう。
なお、人材市場において、品質管理を担当できる即戦力は不足しています。その点からも、品質管理業務の伝達・指導オペレーションが整備されるメリットは大きいです。
まとめ
品質管理検定は、品質管理に関する知識を「客観的」に評価する資格です。取得を推奨する企業があることや、受検者が年々増加傾向にあることからも、実用性の高い資格と評価できるでしょう。
品質管理に関わる人材の採用にあたっては、品質管理検定の取得有無を、級ごとの実務レベルを加味したうえで評価基準のひとつに取り入れることも検討してみましょう。
また、日研トータルソーシングでは、派遣スタッフに向けて品質管理に関する資格取得の全社サポートを展開しています。
【主な資格取得実績】
- 品質管理検定(QC検定)
- 自主保全士
- 機械保全技能士
- 衛生管理者
さらに、コスト削減や作業時間短縮、不良率の低下など、QC活動を通じた改善事例をナレッジとして蓄積。お客様へご提案させていただくとともに、品質・生産性向上を支援しています。
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