MTBF(平均故障間隔)とは?計算方法とMTTRとの故障率・稼働率における関係
製造現場において、生産設備の故障等に伴うダウンタイムの発生は、生産計画の変更、ひいては納期の遅延にもつながる深刻な問題です。
そこで目を向けたい指標がMTBF(平均故障間隔)です。MTBFは生産設備の信頼性を計測し、安定稼動を実現するための指標のひとつとして機能します。
本記事では、MTBFの概要や計算方法、MTBF向上のために検討すべき項目について考察します。
- MTBFは「Mean Time Between Failures」の略称で、設備やシステムの「平均故障間隔」を意味する指標
- 計算式は「MTBF=総稼働時間/総故障回数」
- MTBF向上のためには、予防保全や予知保全など設備保全機能の強化が求められる
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目次
MTBF(平均故障間隔)とは
MTBFとは「Mean Time Between Failures」の略称で、設備やシステムの「平均故障間隔」を意味します。
平均故障間隔とは、平均してどのくらいの期間に1回の故障が起きているかを示す値です。つまり、MTBFは生産設備が正常稼働を開始してから、次に故障するまでの時間の平均値を表します。MTBFの値が高いほど故障が起きにくく、信頼性が高い設備と評価できます。
MTBFの計算方法
MTBFの算出に用いる計算式は以下の通りです。
MTBF=総稼働時間/総故障回数
以下の具体例から、実際にMTBFを計算していきます。
<例>
- 300時間正常稼動
- →故障・修理
- →400時間正常稼動
- →故障・修理
- →200時間正常稼動
- →故障・修理
この例のMTBFは、正常稼動した時間の300時間と400時間と200時間を足して総稼動時間を求め、故障回数の3で割って算出します。
(300時間+400時間+200時間)/3回=300時間 MTBF:300時間
MTTR(平均復旧時間)との関係
MTBFに関連する言葉に「MTTR」があります。MTTRとは「Mean Time To Repair」の略称で、設備やシステムの「平均復旧時間」を意味する指標です。
平均復旧時間とは、設備やシステムが故障などにより停止したのち、修理を経て再稼動するまでのダウンタイムの平均を示す値で、一定期間内のダウンタイムの合計時間を故障した回数で割って求められます。つまり、MTTRの値が小さいほど、故障から復旧までの時間が短くなることを意味し、システムを継続的に稼働できる高い可用性を示します。
MTBFとMTTR、両者はいずれも設備やシステムの故障に関する指標という点では共通しています。
- MTBF:どの程度故障が少なく稼動できるかの「信頼性」を示す指標
- MTTR:故障からどの程度で復旧できるの「可用性」を示す指標
Operating Ratio(稼働率)の算出
また、MTBFとMTTRは、Operating Ratio(稼働率)の算出にも用いられます。
Operating Ratioとは、設備やシステムの稼働が要求される時間に対して、故障やメンテナンス等で停止している時間を除いた「実際の稼働時間の割合」を示す指標です。つまり、Operating Ratioが高いほど、信頼性や可用性が高い設備と評価できます。
Operating Ratioの算出に用いる計算式は以下の通りです。
Operating Ratio=MTBF÷(MTBF+MTTR)
たとえばMTBFが300時間、MTTRが5時間の場合は、Operating Ratioは98.36%となります。
MTBFを用いて信頼性を測る際の注意点
MTBFは設備やシステムがどの程度故障が少なく稼動できるのか、その信頼性を示す指標ではありますが、算出する際の前提条件などの違いも考慮しなくてはいけません。設備の信頼性そのものを比較できる指標としては必ずしも機能しない点に注意しましょう。
また、「MTBFが高い=耐用年数が優れている」とはならないことも留意すべきです。
算出の前提条件や要素の値が異なる
MTBFは、前提条件となる故障の定義が異なると、算出時の要素である故障回数の値も変動するため、値を単純に比較できないケースもあります。
たとえば、故障の定義を「設備全体の動作が停止した状態」を指すのか、または「一部の機能が実行できない状態」を指すかによって、故障発生回数は変動します。警告ランプが点滅していても設備が稼働している場合の取り扱いなども、故障回数の計測に関わってくるでしょう。
また、作業者の操作ミスやメンテナンス事業者の修理作業不備といった人為的な要因や、消耗品が耐用期間内に使用できなくなってしまったケースなど、設備自体の故障以外の要因を考慮するか否かも、MTBFが表す信頼性の評価に影響をおよぼします。
「MTBFが高い=耐用年数が優れている」ではない
MTBFの値が高い設備は、故障が発生しにくい信頼性の高い製品とされますが、耐用年数の長さとはイコールで結びつきません。MTBFと耐用年数には直接的な相関関係は認められない点にも注意しましょう。
一定期間内の故障率は、初期不良が発生する初期故障期間に高まる傾向があり、その後は製品が安定的に稼働する偶発故障期間を経て、製品の消耗によって故障率が再度高まる摩耗故障期間を迎えます。この磨耗故障期間に故障が発生すると、製品は寿命を迎えたことになります。
一般的にMTBFは磨耗故障期間を考慮せず、偶発故障期間の故障率をもとに算出します。そのため、MTBFと耐用年数には相関関係を見出せないのです。
人間にたとえてイメージしてみましょう。厚生労働省の「令和3年簡易生命表(女)」によると、25歳の女性の死亡率は0.00025と報告されています。死亡率を故障率と解釈すると、MTBFは故障率の逆数となるため、1÷0.00025=4000(年)と求められます。
しかし、当然ながら人間は4000年にもわたって生きられません。このような誤りが生じるのは、25歳のときの状態が永遠に続くという前提にもとづいた計算であることに起因し、偶発故障期間に該当する部分のみで算出したためです。
こうした具体例からも、MTBFと故障率や耐用年数には相関関係がないことがわかります。
MTBF向上のための検討項目
製造現場では、設備のMTBFは生産性に大きく関わる要素です。MTBFを向上させる施策として、次の3つの項目を検討しましょう。
- 障害対応の対策
- ハードウェアの対策
- ソフトウェアの対策
障害対応の対策
まずは障害が発生する確率を低下させるための対策です。障害が発生しにくいように、生産ラインの改良を検討しましょう。初期故障期間に発生する故障を考慮し、頻度が高い事象の原因を特定して改良を施すと、障害発生頻度の低下が見込めます。
また、偶発故障期間においては、障害が発生してから修理するのではなく、日常点検や定期点検を徹底し、消耗品を一定期間で交換する予防保全を実施することで、故障の発生を抑えられます。
あるいは生産設備にICT機器を導入し、設備の故障が起こる予兆を検知してメンテナンスを実施する予知保全の導入も効果的です。
ハードウェアの対策
ハードウェアの構成もMTBFに関連することから、稼働率の高いシステム構成が望まれます。
ハードウェアの構成は大まかに「直列」と「並列」に分類され、ハードウェアが直列の構成は、システム構築にかかる費用を軽減できます。しかし、たとえばAとBとCというシステムが直列でつながっている場合、1つのシステムが停止すると、同一回路にあるほかのシステムも停止してしまうことから、全体の稼働率の低下を招きます。
一方、並列の構成の場合では、AとBとCのいずれかのシステムが停止しても、ほかのシステムは影響をうけないため。稼働が停止する範囲は限定的です。障害の発生による全システムの停止といった事態を避けられることから、MTBFの向上につながります。
ソフトウェアの対策
ソフトウェアの信頼性を高めるには、開発段階や仕様書の段階での不備を防ぐほか、テスト段階でいかに不具合やバグを修正していくかといった点がポイントになります。
実際にソフトウェアを運用するにあたっては、システムで使用するデータを正しく保つことも重要です。最新の抜け漏れのない正しいデータを活用できるよう複数の処理を一括して実施する、バッチ処理を夜間に実施したデータを使用する際には、正しいマスターファイルを用いているかチェックするなどの対策を徹底しましょう。
保全力を高めて設備が故障した際の対処を早める
MTBFの向上によって設備の安定稼動が実現すると、昨今、製造業での重要度が増している生産リードタイムの短縮につながります。
MTBFの向上の要となるのは、設備保全にほかなりません。上述した予防保全や予知保全は、故障発生頻度を減少させて、MTBFを向上させる対策として極めて有効です。
予防保全や予知保全を導入して設備保全機能を強化するとともに、事後保全の対応力も高め、故障が発生時のダウンタイムを最小限に抑えることが、企業の競争力を高めていくポイントになります。
まとめ
MTBF(平均故障間隔)は生産設備の故障率に関連する指標で、その値の高さは信頼性の高さと結びつきます。
また、MTBFは生産ラインの安定稼働の実現のために、向上を目指すべき値です。予防保全や予知保全など設備保全機能の強化が求められ、生産設備の高度化に対応できる保全専門人材の確保が望まれます。
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