

2023年の人手不足倒産は累計で260件(前年比86%増)となり、過去最高を更新しました。とくに時間外労働の上限規制が適用される建設業と物流業は全体の過半数であり、すでに2024年問題が始まっていることがうかがえます。
しかし、人材が不足する原因はさまざまであり、人材確保は一筋縄ではいきません。本稿ではうまく人材確保する方法について「採用数増」と「定着率改善」の両軸から解説していきます。
長期化する不況のなか、人材確保の必要性がますます叫ばれるようになってきた昨今ですが、そもそもなぜ人材確保は重要なのでしょうか。人材不足の状況や企業が人材確保に失敗する理由、人手不足が招く致命的なリスクとともに解説します。
2019年の人手不足に端を発する倒産は426件(前年比10.0%増)で、2013年の調査開始以来最多です。
人手不足関連倒産の背景には15~64歳の生産年齢人口の減少や後継者不足といった「労働人口の減少」にくわえて、従業員退職や求人難、人件費高騰などの「人材確保の難化」があります。
人出不足の傾向は大企業よりも中小企業に顕著です。
理由としてはまず「資金力の差」が考えられます。
財力に乏しい中小企業では人材確保のための人件費増、賃金引き上げが難しく、人材不足に陥りやすいのです。
「構造上の問題」もあるでしょう。
知名度が低い中小企業などでは、候補者にそもそも知られていないので就職活動でもチェックされません。就職先の候補にすら入らないわけです。
人材不足はなかでもサービス業に深刻です。たとえば、飲食サービス業界に働き手が足りていない傾向にありますが、飲食サービス業界では労働に見合う賃金が支払われないケースが少なくありません。するとどうしても離職率が高くなり、人材が定着しないのです。
人材確保に失敗する理由として、たとえば採用活動がうまくできていないことが挙げられます。候補者数を集められず、面接すら実施できていないところも少なくありません。
候補者を呼び込めない原因として、自社の魅力を十分に伝えられていない、他社との差別化ができていないなどが考えられます。
人材確保の成否に深く関わるのが、労働条件です。
労働時間、待遇、職場環境、福利厚生、教育制度などが魅力的でなければ人材は集まりません。離職率もおのずと上がります。
社員と企業のミスマッチも人材確保がうまくいかない大きな理由でしょう。
採用の段階で企業と求職者間にミスマッチがあれば入社につながらないのはもちろん、仮にいったんは入社しても、「思っていたのとは違った」が発生すれば、すぐに退社してしまいます。
事業の継続や拡大のためには人材が必要です。新規事業に参入できない、新商品の研究・開発に着手ができないなど人材不足ゆえにビジネスが発展しないケースは珍しくありません。
今や多様化(ダイバーシティ)の時代です。さまざまな人材を集めていかなければ価値観の多様化に対応することはできないでしょう。
いずれにしても、人数さえ集めればよいわけではなく、優秀な人材が必要です。
労働条件を改善できても企業が候補者に認知されていなければ無意味ですし、社員とのミスマッチを解消するのも容易ではありません。
一筋縄ではいかない人材確保を成功させるには、どうすればいいのでしょうか。優秀な人材を確保するための施策を3つ紹介します。
人材確保がうまくいかない理由が、候補者が集まらないことにあるならば、自社の魅力を積極的に発信し求職者に興味を持ってもらうことが先決です。ただし時代が変われば生活様式も変わりますから、昔と同じようにやっていたのではうまくきません。
求められるのは若者のライフスタイルに合わせた広告活動です。
一般的に、若年層ほどSNSを情報源として使う傾向にあります。そこでTwitterやFacebook、LINE@などのSNS、YouTube広告などを活用するとよいでしょう。
とくにTwitterはキャンペーンを実施するなどで企業や商品に興味を持ってもらいやすいでしょう。
アライドアーキテクツ株式会社が日本国内に住む男女4,309名におこなったTwitter企業公式アカウントの利用実態に関する調査によると、企業公式アカウントをフォローしているユーザ―は約56%、そのうち57.9%が企業公式アカウントをフォローしたきっかけは「Twitterキャンペーン」であるとしています。
また、LINE@も有用です。
「他のSNSはやっていないけれど、LINEは使っている」といったユーザ―は相当数存在します。LINE@を使えばそうした層にもリーチできます。
総じていえるのはマーケティングでは、他社との差別化が大切であることです。「どこに入社しても大差がない」と思われてしまっては、人材確保はうまくいきません。
優秀な人材を集めることに成功しても自社にマッチした人材でなければ、離職され、元の木阿弥になってしまいます。求人の段階で業務内容や労働条件、求める人材、企業の方針その他条件を明確にしておくことが大切です。
ポイントは、「デメリットと思われそうなところも包み隠さず公開」すること。
良い面しか公開したくない気持ちも分かりかりますが、入社後にデメリットが発覚した場合に早期離職につながる可能性があり、採用コストが無駄になります。面接したものの採用したい人材が見つからない場合も無理に採用せず、次の機会にすることを心がけましょう。
人材確保を成功させるために欠かせないのが、内定期間中の入社辞退「内定辞退」への対策です。内定辞退を防ぐためには、内定後も本人と面接をする、家庭訪問をして本人や親との信頼関係を構築するなど内定後のフォローが重要になります。
面接時には業務内容を細かく伝えるよう意識しましょう。入社してから「思っていたのと違った」でやめるケースは多いです。入社前後のギャップを小さくするためには、まえもって業務内容を詳細に説明することが欠かせません。
人材確保を成功させるには、採用した人材や既存社員の離職防止策を講じる必要があります。仕組みや制度だけでなく、社員の内面へのケアも大切です。モチベーション・やりがいなどは定着率に大きく関わります。
人事評価で従業員の能力や業績などを総合的に評価すれば、「会社に貢献しているのに給与が低い」などの事態がなくなります。社員は良い評価を受けるためにはどうすればいいかを考えるので、やりがいにもなり満足度向上、離職率低下につながるわけです。
せっかく入社した社員も、なかなか仕事ができるようにならなければ辞めてしまう可能性があります。社内研修・教育を行うなど、社内で学べる仕組みを整えましょう。
研修・教育は新入社員の能力・理解度に合わせて適切に実施することが大切です。そのためには既存の社員に研修・教育のやり方を教えておく、業務マニュアルを整備するなど準備が必要になります。仕事ができるようになれば責任感ややりがいになり、定着率アップにつながるでしょう。
インセンティブや長期勤続に対する手当の支給など、社員のやる気に応える施策もおすすめです。
制度や仕組みの整備だけにとらわれるのではなく、ときには感謝の意を込めたメッセージカードを送るのも有効でしょう。社員は「必要とされている・感謝されている」と感じ、会社への帰属意識も高まり結果として離職率は低下、長く貢献してくれるようになります。
人材確保支援助成金制度とは事業主が、雇用管理改善をおこない、離職率の低下に取り組んだ場合に受けられる助成金制度です。
離職率を下げ生産性を向上するなど目標を達成した事業主には、最大72万円の目標達成助成金も支給されます。受給条件を満たしていれば企業規模に関わらず受給が可能です。
なお人材確保支援助成金制度は、職場改善を目的とするため、以上5つの制度は新たに導入することが必要です。
(引用:人材確保等支援助成金のご案内|厚生労働省)
人材確保支援助成金を申請するには以下の要件をすべて満たしていなければなりません。
つまり正社員を雇用していて、労働法の違反がなければ申請が可能です。
「雇用管理制度整備計画書」を作成し本社の所在地を管轄する都道府県労働局へ提出、認定を受けたら計画に基づいて実施します。
雇用管理制度整備計画期間の末日の翌日から起算して12か月間の離職率を「評価時離職率」として計算し、計画認定時に示した目標値を達成していれば、目標達成助成金を受けられます。
今や多くの企業にとって人材不足の解消が急務といえます。しかしながら、人材確保は今日明日でなんとかなるものではありません。
人材確保をうまく進めるためには自社の経営状態や特色、業種などを総合的に判断したうえで、できることから着実に始めることが大事です。
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