【WEBセミナー開催レポート】時代は『競争』から『共創』へ〜成長産業成功のカギを握る人材ビジネスソリューション〜
7月27日、日本GLPと日研トータルソーシングによる共催ウェビナーが行われました。施設面、人材面で物流業界の発展に貢献している両社から登壇し、それぞれの取り組みや物流業界の展望について講演。また、ウェビナー終了後には、日本GLPが運営する「GLP ALFALINK相模原」内にある日研トータルソーシングの研修施設「関東テクノセンター」の内覧会も開催されました。ここではそんなウェビナーの模様をダイジェストでお届けします。
また、同内容のダイジェスト動画もご用意いたしました。ご視聴は下記リンクよりお願いいたします。
取材・文=辻村洋子
第一部:物流施設の多様な活用法|日本GLP
物流用途にも工場用途にも応える安全・安心の設備
第一部では、「物流施設の多様な活用方法」をテーマに、日本GLPの営業開発部長である小鷲博之氏の講演が行われました。日本GLPは、物流施設やその関連テクノロジーに特化した、業界トップシェアを誇る不動産デベロッパー。開発・運営を手がけている物流施設は全国170棟、入居している物流関連企業の数は230社以上にものぼり、どの施設もほぼ100%の稼働率を維持していると言います。
「しかし、近年はウクライナ情勢や新型コロナウイルスの流行などもあり、製造業や物流業を取り巻く環境は大きく変化しています」と小鷲氏。さらに、世界的な労働コストの上昇や小ロット生産・輸送へのニーズの高まりもあり、業界に従来とは違った課題が生まれてきていると語ります。
「そうした中で、私たちは『当社が提供できる価値は何だろう』と日々考えています。物流施設というと、一般的には、物を保管したり物流業務をサポートしたりする場所だと考えられていますが、実はできることはそれだけではありません。当社の施設の中には、工場用途にもお応えできる設備を備えているところもあります」(小鷲氏)
小鷲氏は日本GLPの物流施設の魅力として、広々としたスペースがあること、天井が高いこと、壁を防火シャッターにしているため大きな空間がとれること、最低でも1.5トンから区画によっては2トン以上もの耐荷重を確保していることなどを挙げます。また、工場用途に必要な電力やガス、給排水、吸排気といったインフラをしっかり備えた区画も用意しているとのこと。
さらに、工場で働く人々の働きやすさや安全面への配慮も徹底していると言います。例えば、マイカーで通勤する人のために駐車スペースや、空調用の室外機設置スペースも豊富に用意。こうした点は、他の物流施設と比べたときに大きなアドバンテージになりそうです。
安全面でも、BCP(事業継続計画=災害などの緊急事態が発生したときに損害を最小限に抑えて事業の継続や復旧を図るための計画)対策に力を入れていると強調。災害時には、入居企業の事業を守るだけでなく地域住民の避難先としても機能するよう、全国22物件で自治体との災害時協力協定を結んでいます。
「免震構造や非常用電源はもちろん、24時間365日稼働の防災センターなども備え、災害時にも入居企業様や地域の方々を支える体制を整えています。いざというときにもライフラインを止めない、働いている方々や地域の方々の命を守る。私たちはそうしたことに力を入れながら施設の開発・運営に取り組んでいます」(小鷲氏)
物流施設の新たな活用法「レンタルファクトリー」
従来は「倉庫」としての使用がメインだった物流施設ですが、日本GLPが運営する物件では、近年、施設内に生産工場や研究開発用のラボ、技術研修所、執務スペースなどを設ける企業も増えているのだとか。
こうした使い方は、多目的に使えるだけの広いスペースと充実した設備があるからこそ実現できたものと言えるでしょう。
「倉庫を倉庫ではない形で使っていただけているのは、私たちとしても非常にうれしいところです。その意味では、物流施設はさまざまな可能性を秘めたスペースであると思っています」(小鷲氏)
こうした用途にも応える形で、日本GLPの物流施設はどんどん進化。近年では、働く人々が「働きたくなるスペース」づくりに力を入れていると言います。カフェなどのアメニティ施設のほか、託児所やアクセスを便利にしてくれるバスの運行など、より快適に働ける施設を目指し開発を続けています。
加えて、地域住民に親しんでもらえるよう広場やスポーツ用のコートを設けた施設も。例えば「GLP ALFALINK相模原」にはマルチコートがあり、週末には地元のフットサルチームやラグビーチームが地元住民向けの教室を開催しているそうです。広場では夏祭りを開催することもあり、施設で働く人やその家族も含めて多くの住民が訪れるとか。こうした取り組みは「地域共生」の好事例であり、今後の物流施設のありかたにも大きな影響を与えそうです。
「地域の方々に日頃から物流施設に親しんでいただくことで、『ずっとここで働きたい』『いつかここで働きたい』『物流ってかっこいいな』というような想いを持っていただけたら。いずれそこにつながったらうれしいなという想いで取り組んでいます」(小鷲氏)
日本GLPの物流施設は今も進化を続けています。施設の屋上に太陽光パネルを設置し、発電した電力を入居企業に還元する「環境配慮型」の施設運営にも取り組み中。さらには、工場用途に応えるだけのスペックを備えていることから、製造業界に対して「レンタルファクトリー」という新たな提案も行っています。
これは、工場を“建てるのではなく借りる”という新たな選択肢。メリットは主に2つあり、1つは自社投資に比べ時間とコストの大幅削減が可能になること。もう1つは、必要なときに必要な面積を利用できるフレキシビリティがあることです。
物流施設は「倉庫」から多様な活用法ができる「場」へ──。時代のニーズに応えて新たな価値を創出してきた日本GLP。今後の展開にも期待がかかります。
第二部:日研トータルソーシングの人材育成と取り組み~ゼロ距離メンテンスの実現~
「関東テクノセンター」だからこそできるゼロ距離メンテナンス
続いて行われた第二部では、日研トータルソーシング執行役員の増井宏二氏が登壇。同社は設計開発、製造、設備保全をはじめ、モノづくりのあらゆる分野で人財ソリューションに携わっており、近年では販売などのサービス業務やオフィスワークに加え、メディカルケア、コンストラクションなど新しい分野にも進出しています。
創業は1981年で、現在の取引先はおよそ2700社。在籍人数は2022年4月末時点で2万人を超えており、一人ひとりの資格取得支援やキャリアアップ、キャリアチェンジを支援する環境を整えています。
「特に人材育成に関しては力を入れており、全国に技術センターや技能センターをつくってスキルアップ支援に努めています。2022年2月には、日本GLP様が運営する物流施設『GLP ALFALINK相模原』に、当社の研修施設『関東テクノセンター』をつくらせていただきました。ここで研修を行い、かつ入居企業様の機材に何かあったときにはすぐ修理に向かう、そうしたゼロ距離メンテナンスの体制をつくれたのは大きな進歩だと考えています」(増井氏)
「テクノセンター」とは、日研トータルソーシングが全国11ヶ所に展開する研修施設。モノづくりに精通した大手メーカー出身者が専任講師となり、各分野の管理者やフィールドエンジニアを育成しています。いずれの施設も認定職業訓練校に指定されており、増井氏は「かなりレベルの高い教育ができていると自負しています」と語ります。
こうした研修施設が物流施設内にあると、入居企業にとっては大きなメリットが。機材トラブルが起きた場合、修理によるタイムロスで配送が遅れてしまうこともありますが、同じ施設内に修理の専門家集団がいれば、そうした損害を軽減することができます。また、研修施設には講師もいるため、かなり高度なトラブルにも対応が可能だと言います。
この「ゼロ距離メンテナンス」は、多用途に使える「GLP ALFALINK相模原」だからこそ実現できたもの。いわば日本GLPと日研トータルソーシングのコラボレーションによって生まれたものと言えるでしょう。
3社共創の「Win-Win-Winコラボレーションモデル」
「私たちは、ここにお客様も加えたWin-Win-Winのコラボレーションモデルを考えました。例えば、自社工場に装置を据え付けたいお客様がいた場合、日本GLP様の施設でその装置を組み立ててから搬出し、運搬後に現地で据え付けや立ち上げ、メンテナンスを行うと。お客様は組み立てスペースやそこからの搬出について悩まずに済みますし、日本GLP様の施設には必要なスペースや設備が整っています。さらに、必要な人材はすべて当社で揃えることができます。こうした需要は、今後高まっていくのではないかと思っています」(増井氏)
例えば半導体装置の場合、工場から工場への搬入や搬出には、やぐらやクレーンといった大がかりな設備が必要。しかし、「GLP ALFALINK相模原」には十分な天井高とスペースをとったランプウェイがあり、トラックで組み立て現場に直接入って装置を搬入・搬出できるようになっているそうです。
加えて、日本GLPの物流施設は高速道路のインターに近い場合が多く、全国各地へのアクセスも便利。こうした「地の利」は運搬時間の短縮につながると同時に、日研トータルソーシングとのコラボレーションにおいても大きな力を発揮すると言います。
「日本GLP様の物流施設は全国170ヶ所、私たちの拠点は全国およそ200ヶ所にあります。プラス、当社の研修施設であるテクノセンターも全国11ヶ所にあります。地域によっては施設同士がごく近くにありますから、そうした地域では先ほどのWin-Win-Winのコラボレーションモデルも比較的容易に実現できるのではと考えています。まずは『関東テクノセンター』で共創の実現を目指し、そこから事例を広げていけるよう取り組んでいきます」(増井氏)
製造業の企業にとって、施設、人材、装置の3つは大きなコストになるもの。これらをすべて自社で背負うのではなく、施設は日本GLPを、人材は日研トータルソーシングを、装置は2社の協業体制を活用すれば、コスト削減やリスクの分散が期待できます。
「特に製造業や物流業の皆様には、上記の3つを私たちと分業することでリスクを分散していただけます。ぜひこの仕組みを活用して、事業を大きく成長させていっていただけたらと思います」(増井氏)
第三部:関東テクノセンター内覧会
日研トータルソーシング国内最大の研修施設へ
第三部では、日本GLPの物流施設「GLP ALFALINK相模原」内にある日研トータルソーシングの研修施設「関東テクノセンター」と中継をつないで、リモート内覧会が行われました。案内役を務めたのは、同センターのセンター長、林泰孝氏。研修施設やそこで行われている教育内容について、詳しい紹介がありました。
まずは「関東テクノセンター」のエントランスから見た全体風景が映し出され、「当社のテクノセンターはすべて認定職業訓練校に指定されており、全国どこでも同じ水準の教育が展開可能になっています。なかでも『関東テクノセンター』は敷地430坪と、国内では当社最大の教育施設です」と紹介。
テクノセンターでの研修内容は、共通教育をのぞけば機械、電気など分野によってさまざま。いずれも、スタンダードコースで31日間のカリキュラムが組まれているそうで、関東テクノセンターでは原材料や製品などの移動を取り扱う「マテハン」の研修に特に力を入れていると言います。
「関東テクノセンター」は物流施設の中にあるため、その分野に精通した人材がより多く求められている場であると言えるでしょう。このニーズに応えるべく、研修ではAMR(自律走行搬送ロボット)の運用訓練や、そのメンテナンスの実践訓練なども豊富に取り入れているそうです。
続いて、画面には実際の研修風景が映し出されました。研修生たちが真剣な面持ちで、スライドテーブルの分解や組み立て、オーバーホールなどに取り組んでいます。その様子からは、日研トータルソーシングが現場で役立つ真のエンジニアをしっかり育成しようとしている姿勢が伺えました。
「スライドテーブルは、金属を削るための旋盤やフライス盤の作業台になります。こちらがきちんと稼働するように、研修では細かい調整作業やオーバーホールの手順をしっかり身につけてもらっています。このように、研修ではさまざまな装置や実機を使って、現場に即したスキルの向上を図っています。今後も、より実践的な人材の育成に力を入れてまいります」(林氏)
まとめ:物流施設の可能性を拓く「人材」の力。保管だけではない新たな使い方を提案
こうして、約1時間にわたる共催セミナーは終了。今回行われた講演や内覧会は、いずれも物流施設の「未来のカタチ」を示すものでした。物流施設は倉庫としてだけではなく、レンタルファクトリーや組み立て現場、研究や研修の場、さらには地域共生の場としても活用できる──。そうした多様な使い方を、初めて知った視聴者も多かったと思います。
また、物流施設の開発・運営企業と人材サービス企業の共創によって、入居する企業へのサポート体制も強化されつつあります。機材トラブルによる遅延を軽減する「ゼロ距離メンテナンス」、装置導入にかかるコストの削減やリスク分散につながる「Win-Win-Winコラボレーションモデル」は、サポートだけでなく事業の成長や拡大にも貢献しうると言えるでしょう。
そして、物流施設が進化を続けていくためには、人材の進化も欠かせない要素のひとつ。慢性的な人手不足が叫ばれる中、日研トータルソーシングの人材育成への取り組みは心強さを感じさせるものでした。
日本GLPと日研トータルソーシングの2社は、物流業界や製造業界の成長に貢献する、いわば「業界の応援団」的存在。今後の取り組みにも注目が集まります。
半導体・電池業界の研修実績
年間10,000名以上の派遣会社が解説! 製造業トレンド集
半導体・電池業界の研修実績年間10,000名を超える派遣会社が「今後の製造現場を左右する情報」をまとめた資料セットを作成しました。
資料内容
- 深刻化する半導体業界の⼈材不⾜、保全人材の不足による⼯場運営への影響
- リチウムイオン電池とは?普及している二次電池の種類
- 製造業でリスキリングが注目されている理由、仕組み構築に必要なもの